イキリ主人公レペゼン路地裏
「くそむかつくわ。なんやねんあのたこやき屋の男。」
ぶつくさと言いながら、自慢の金髪を鶏のように逆立たせて男は街を闊歩していた。
「それ俺のことか?」
俺は鶏頭の肩に手を置いてあえてぶっきらぼうに言った。
突然のことに驚いた鶏頭は数秒間フリーズ。
「ポケットに手なんか突っ込んでるから反応が遅れるんだ。」
俺はからかうように言った。
これを聞いて、さっきまで固まっていた鶏頭が顔を赤くして怒声を上げた。
「ええ加減にせえよおまえ!ノコノコ着いてきたこと後悔させたるわ!」
「望むところだ。」
俺たちは人気のない路地裏に場所を変えた。
自分の思い通りに事が運ぶと気持ちが良い。こいつを痛い目に合わせるにしても人の目というものは邪魔だからな。
まわりに人がいないのを確認して、鶏頭は大袈裟に指をボキボキと鳴らし始めた。そしてフゥーっと息を吐き、こう言った。
「おまえ、どえらいやつに喧嘩売ったで。俺がここらの高校一帯でなんて呼ばれてるか知っとるか。マグナムよしきや。」
だから何だ。
「俺の唯にも手出しよって。おまえは俺の怒りを買いすぎた。どこ高のどいつか知らんけど覚悟はできてるんやろな。」
「少なくとも唯はおまえのもんじゃねえよ。」
「うるさいわボケ!」
そう言うと鶏頭はとうとう殴りかかってきた。
こんなものを避けるのは造作もない。一目見てそれはわかったので、あえて直撃する寸前で躱すことにした。一発、一発打ち込まれるたびにギリギリで躱すことの繰り返し。それでもあまりにも容易で、きっとじいさんみたいに美味いたこやきを作るほうが難しい。
鶏頭の顔からは、はじめは持っていた自信のようなものがだんだん薄れていった。そう、俺は意味もなく相手の猛攻に対して受け身になっているわけではない。俺から攻めるまでもなく、相手に戦意を喪失させる。そしてそのタイミングでーー。
ガシッ。
鶏頭の拳を受け止めた。どう足掻いても離せないほど、しっかりと。
鶏頭もそれを理解したのか、怯えるような表情に変わった。
そうだ。これが見たかったのだ。この恐怖に塗れた顔。この馬鹿に圧倒的な格の差を見せつけたあとで、存分に痛めつける。それくらいしないと俺の怒りは治まらない。
そう、思っていたーー。




