表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/23

プロローグ

「よくぞここまで辿り着いたものだ勇者よ。しかし悲しいかな。貴様が今倒した奴は四天王の中でも最弱……我らの力を侮るでないぞ!」


辛うじて意識はあるために、ぼんやりと聞こえる。俺の奥の部屋にいるーーつまりは四天王二人目の男の台詞だ。


勇者に絶望を与え、四天王一人目の男ーー俺の心の傷を抉る台詞。聞き飽きた。聞き飽きたけど胸が痛い。


魔王軍の四天王が一人に選ばれるほどであるからして、自分で言うのもなんだが俺はそこそこの実力の持ち主である。しかし一方で、四天王の一人目とはお客様にとっては前菜のようなもので、中途半端な実力の俺は中途半端なプライドを持ち、この中途半端な立ち位置に中途半端に葛藤しているのである。


ゆえに突き刺さる。「奴は四天王の中でも最弱ーー」


ああ、今日も胸が痛い。


……それにしても、今日はとりわけいつもより胸が痛むな。体がうまく動かせないし、奥の部屋での戦闘の様子もよくわからない。目もかすんできた。なんだこれ。胸に手を当てると異常に激しい鼓動とイヤな感触があった。べたり。それが付着した手のひらをよく見えない目でよく見た。よくわかる。色ですぐにそれと判断できた。血だ。これもまた異常な量の。


やばいなーー声にならない声が出る。


どうやら今回の勇者に、文字通りの致命傷を与えられたようだ。


この物理的な胸の痛みは、根性ではどうにもならない。奥の部屋では激しい戦いが行われているため、助けも来ない。終わりだ。


ああ、なんでもいいから、同じ舞台じゃなくてもいいから、せめて死ぬ前に一番になりたかった……。


そんなことを考えながら意識が遠のいた。


次の瞬間、俺は目が覚めた。


胸の痛みはない。意識もはっきりとしているし、体も動く。しかし理解は追いつかない。


さっきまでと違う場所に俺は立っている。

知らない土地、雑踏の中ーー。


人々は俺の知らない言葉を話している。しかしなぜか、俺はそれを理解できている。


自分の置かれている状況がまったくわからない。


藁にもすがる思いで周りを見渡した。まずはここがどこかを見極めねばならない。何かの看板に視線を奪われた。俺の知らない文字で、聞いたこともない言葉だが、なぜかそれがここの場所を指すものであるとわかった。


大阪ーー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ