表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芸術部の事件簿  作者: ハルコ
前を向くのが怖くって
41/62

1話

我らが桜岡高校の文化祭は2年に1度行われる

なぜ2年に1度かは分からないが、おそらく費用や色々や理由があるのだろう。

俺たちは運良く2回文化祭が開催される世代だったが、あいにくあの事件の影響で1年生の頃は参加できなかった

なので今回の文化祭は高校生活最初で最後。

出店こそしないものの楽しみではあった。

そして桜岡文化祭は、他校と比べて異質な点がある

それはハロウィンと被るよう、日程を合わせていることだ。

10年ほど前のらしい。当日新参者だった仮装研が中心となり、「仮装をして文化祭を楽しもう」という運動が起こした。それは文化部を巻き込んで大きくなり、今や桜岡文化祭の代名詞とも言えるものになった。

初めのうちは生徒がジャック・オ・ランタンやゾンビ、お化けのコスプレをするだけに留まっていたが、今や生徒だけでなく来校者のコスプレしており、知名度ともに年々クオリティも上がっていた

その熱量は凄まじく、毎回ローカルテレビの取材が来るほど人気のあるものになっていた。

それをライバル視してか、運動部も出し物も強化したのだが、それはお昼のお楽しみ。

兎にも角にも俺たち3年生は、この3日間だけは受験就職はひとまず忘れ、一時の休みを取る。

「しかしすごい活気だね」

朝8時、俺たちは開会式に参加するために校門をくぐった。

開始一時間前始だと言うのにコスプレをした人で校門前は溢れていた。

その人たちは一人一人、校門前に作られたブースで先生からの荷物検査を受けている

この3日間はスマホを自由に使っていいが、その代わり荷物検査を受ける決まりだ。

つまりゲームは持ち込めない。

明はすれ違う人達を見てワクワクしていた

「ジャック・オ・ランタンにお化けのコスプレ

フランケンシュタインに…あれはMARVELのキャラクター?

見た事のあるアニメのコスプレもいるし、もうなんでもいいって感じだね」

「まぁそんなもんなんじゃないか?そもそもハロウィンなんて小さい子供が主体のイベントだろ?

俺たちが騒ぐのはどうかと思うがな」

とは言ったものの、やはりこういうお祭りは気分が上がるものだ。

開催してしまえば気にならないだろう

俺達は並んでいる人たちを横目に校門をくぐった

学校に入ると下級生たちが忙しなく準備をしているのか、いつもとは違う賑わいがあった

その声を聞きながら校舎の吹き抜けを通る

その先に昇降口があるが、そこで明は指を指した

「いっその事俺達も参戦してみるか?」

明が指さす方には例の「仮装研究部」のブースがあり、コスプレグッツが多く売り出されていた

カボチャの被り物からフランケンシュタインまで、それはそれはたくさんの被り物が置いてある

俺は苦笑いで

「勘弁してくれ」

と言った


校長の長い長い話も終わり、ついに文化祭がスタートした

校内には手荷物検査を終えた一般の人が多く入場し、平日の金曜日にもかかわらず活気に溢れていた

「すごいね、1体何人くらいのお客さんが来ているんだろう」

「どうだろうな?全校生徒くらいの人は来てそうだ」

すれ違う人たちを見ても生徒の父母さん以外にもOB、そしてコスプレイヤーの人達が多く、あとはチラホラと同級生とすれ違った。

後輩たちは各教室で模擬店営業に勤しんでいた

「コスプレ喫茶にお化け屋敷、へぇ、音楽室じゃ音楽系の部活合同のライブハウスなんてやってるんだ」

パンフレットを見ながら明はワクワクしながら話す

「文化系の部活はやっぱり模擬店が強いな

茶道部の和風スウィーツ喫茶は気になる」

「女子かよ」

「うるせぇな」

そんな話をしながらのんびりと文化祭を見て回る

少し歩いていると気になるブースがあった

「造形研究部って言えば成弥君が作った部活か」

1-1組の教室。パンフレットを見ると生徒の作った小物細工を売っているそう

中を見るとまだ混んではいないので、少し先輩風を吹かせることにした

中に入ると成弥が部屋を見回りながら仲間3人と和気あいあいとしていた

入ってきた俺たちに気づいたのかこっちを見て

「先輩、来てくれたんですか」

と爽やかに言った

神原成弥。以前芸術部に在籍していたが、色々悶着があり部活を辞めた。

しかしタフネスはある方で、自分で部活を起こし、今では立派に模擬店ができるほどの部活に成長させた。

ちょうど芸術部に出禁になった俺達は成弥の部活にも顔を出し、明は部活の運営について、俺は芸術的な事についてを指導していたので仲は良好だった。

春には目にかかるほど髪を伸ばしていたが、短めになっており、それも合わさってか随分頼りがいのある青年という印象になった。

「よう、冷やかしに来た」

少し意地悪をする俺に対し

「中々いい部活じゃないか」

明は優しく接した

くそっ、悪者みたいじゃないか

成弥の方を見るが気にしていないようなのでよかった

「芸術部を辞めた時はもう部活はやらないと思ってたんですけどなんとかここまで来て良かったです」

後ろの3人もそれを聞いて少し照れているような顔をした。

「まったくいい部活にしたもんだよ」

俺は先輩風をふかしてそう言った。

「じゃあちょっと見させてもらうよ」

と、明がいい、教室内を見る

中には「造形研究部」の名にふさわしく、フィギュアや模型、人形などが手頃な価格で売られていた

ふと入口付近の机を見ると小さな干支のフェルト細工があっり、それが目に止まった。

「このフェルト細工、すごいよくできているな」

犬のフェルト細工を手に取る

それは大きさ5cm程の小さな物だった。他11種のどれもが程よくデフォルメされた可愛いもので、どれも個性がよく出ていた

「それ、馬場さんが一つ一つ作ったんです

1ヶ月くらい時間をかけて作ってて、本当にいい出来なんですよ」

奥を見るとショートボブの小柄な女の子が恥ずかしそうに小さくお辞儀した

成弥の心からのべた褒めが嬉しかったのか、成弥がこっちを向いた瞬間に小さくガッツポーズをしていた

「成弥、この犬のフェルト細工買ってもいいか?気に入った

と言うと困ったように

「あぁ、すいません、こちら非売品なんです」

と答えた。まぁこんなに出来が良ければそうなるか

そうこうしているとチラホラとお客さんが増えてきた

「また来るよ、模擬店頑張れよ」

「ありがとうございます!文化祭楽しんでくださいね」

成弥は俺たちを暖かく見送った。



それから1時間ほど。時間は10時を回った頃、ちょうど校内のブースを1周した頃だった。

「茶道部の抹茶ワッフルめちゃくちゃ美味かったな」

「あぁ、模擬店のレベルは明らかに超えてたな

明日も来よう」

俺たち2人は茶道部の抹茶スウィーツに舌鼓を打ち、お笑い研究部のライブで涙が出るほど笑い、そしてeスポーツ部でコテンパンにやられて。

とにかく文化祭をとことん楽しんでいた

「次は外に出てテニス部のサーターアンダギー食べに行こうぜ

テニスボールの大きらしい」

明は意気揚々と話す。

今のテンションなら被り物もいいのかもしれないと思うほどだった。

「いいなそれ、俺は剣道部のしないチェロスが食べたい」

「それも捨て難い。あぁお小遣いが3倍は欲しいよ」

そんな話をしていると造形研究部の部室の前まで来た

その後どうだろうと中を見てみると、その中はこの文化祭から空気が切り離されたように重かった

俺たちのテンションは一気に下がり、その空気に飲まれる。

真ん中には先程お辞儀した馬場がうずくまって泣いているようだった

その肩を持って励ましている成弥

声をかけるか迷っていると成弥が気づいて、馬場をもう1人の部員に任せてこちらに駆け寄ってきた

「何かあったのか?」

充がそう聞くと成弥は悲しそうな顔をして一言こういった

「さっきのフェルト細工が全部盗まれたんです」

「なに?盗まれた?」

そう言うと成弥は首を縦に振る

「先輩たちが帰ってから少し忙しい時間が来て、少し目を離したら全部持ってかれたんです

今生徒会に連絡をしたのでそろそろ…」

そう言った成弥は俺たちの後ろを見る

そこには新生徒会長がこちらを驚きの目で見ていた

「赤坂先輩、松原先輩、なんでここに」

その新生徒会長は以前雪の絵を汚した犯人だった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ