幽霊部員を目指して11
奴とはもう長い仲だ。出会いなんてとうの昔に記憶から消された。
かけっこは僕の方が早かった。勉強と図工はやつに軍配が上がったけど運動だけは負けたことがない。
お互い長所短所があり、どちらが優れているなんて考えは愚の骨頂だって頭では理解しているけど
僕は目の前の状況を目にして、奴の到着を必死に待つ後輩の姿を見てふと思ってしまった
奴に負けたくない。この状況は僕が解決する。
雪ちゃん曰く、奴が来るまで15分ある
その時間があればやつを出し抜くことも出来るだろう
窓際で放心している一葉ちゃん
怒り狂い、僕と雪ちゃんに文句を言う楓
そしてそれらをバツが悪そうに見ている園花
ぼくは自分に言い聞かせる
大丈夫、目の前の問題を丁寧に解決していけばきっと解決出来る
静かに深呼吸をして、予想と手順を考えた
それが纏まると、まずは楓ちゃんに話しかけた
「楓ちゃん、確認なんだけどそのお金はいつ下ろしたの?」
そう聞くと楓はムスッとした顔で嫌そうに答えた
「朝下ろしたに決まってるじゃないですか
私電車通学なんで駅前の銀行寄るなんて簡単ですし」
楓ちゃんは自信満々に答えたが、その答えは完全に墓穴を掘っていた
「朝?今日は遅刻してないよね?」
「何言ってるんですか?普通に来ましたよ」
「何時着の電車だった?」
「えっ?7時30ですけど?」
なんでそんなことを?楓の頭はそう考えていたが
「さすがにその時間に銀行はやってないよね?
ATMもやってないでしょ?」
ゆっくりと確認するように僕は
そう聞くと楓ちゃんはハッとした顔になったが
「いや、間違えました…昨日…いや、一昨日です
ATMならやってたんで下ろしたんですよ」
焦る楓に僕は畳み掛ける
「一昨日…そんな大金を封筒に入れたまま3日も放置するなんて変じゃないか?
それに休みの日に学生バックで買い物に行くのかい?」
僕の意見は正しいだろう。いつもならこれで終わっていた
しかし今日は違かった
楓ちゃんははぁとひとつため息をついたあと、一葉を指さしながら決めゼリフのように言った
「大体アイツが自分が犯人ですって自白してるんですから私たちは無罪でしょ?
そんなの聞いても意味ないじゃないですか?」
と、やけに自信満々に言ってきた
まぁ想定はしていた
僕の中でこの流れは彼女を諦めさせる事が目的だからだ
「園花ちゃん、君はそれを見ていたのかい?」
僕は鋭い目付きで彼女に問いかけた
そういうと園花は罰が悪そうな顔をした
斜め下を見ながら、明らかに何かを隠している
「いえ…その…」
もごついた声で話す園花
「どうなんだい?」
僕は畳み掛ける
あとすこし、あと少しで
しかし、楓は僕の予想を上回る図太さだった
「そ~の~か!あんたも見たたでしょ?
きのうATMでお金を下ろすところ!
…そう!ショッピングモールの中でさ!」
と、大きな声で楓は言った
まるでそう思い込めとでも言うように
園花はその楓の意見に
「…そうね、私もいた
しっかり5万円おろしてた」
と、ぽつりと呟くだけだった
僕の予想は外れた
横を見ると楓が胸を張って反論ありますか?と言わんばかりだった
その笑顔は憎たらしい
楓1人の意見なら、正直いって論破はできる
しかし園花というもう1人の意見が加わることで、その壁は分厚いものとなっていた
せめて一葉が楓は間違っていると一言いえば
しかし今の彼女には何もといただせる状態じゃなかった
どうにかして彼女を奮い立たせられないか…
円満に、そして快刀乱麻に…
どうする…
チラリと後ろを見る。
スマホを握りしめ、僕を見ている雪ちゃん
その目を見て何となく察してしまう
僕がこの事件を解決する事を望んでいない事を
あくまで僕は…
その時だった
僕のポケットでスマホが小刻みに震えた
画面を見ると今見たくないような、アイツの名前が表示されていた
僕は一息溜息をつき
「雪ちゃん、済まないが少し席を外すよ」
そう言って美術準備室に入った
「どうしたんだい充?てっきり家に帰ったと思ったよ」
僕はわざとらしく聞いてみた
『あぁ帰ったさ。いつものジャージに着替えたら急に雪から電話が来て、今久々に自転車に股がってる
電話はスピーカーでしてるよ』
やつの声は少し息を切らしているのか、荒かった
僕は少し笑って、いつも通りに返した
「まぁ大体は察してるさ
…で、なぜ僕に電話を?」
わざとらしく、そして今まで通りに
『決まってる、お前の意見が聞きたい
何故こんなことになったと思ってる?』
「決まってる、最初は楓ちゃんと園花ちゃんがなんの理由があってかは知らないが、一葉を陥れるために一芝居打った
だが、その芝居中に本当に見つかってはいけない物が出てきた」
『それが5万円…言い換えれば一葉のバイト代か』
「だな、それが見つかれば一葉は生徒指導。
彼女が1番嫌がっている事が大事になってしまう」
『一葉も一葉なりに苦渋の決断だったんだろうな
んで、一葉が渋々楓の芝居に乗ったせいで事件がこじれたと
…そういえば園花はどうなんだ?』
「園花ちゃん?さすがに居ずらそうだよ
彼女は楓の協力者みたいだが、あそこまで一葉が憔悴するとは思わなかったのだろうね
狼狽えてるよ」
『…なるほど、それは好都合だ』
「好都合?」
『まぁな、じゃあ学校に着いた
あと5分で着くからそれまで時間稼ぎを頼むな』
「…わかったよ、お手並み拝見とさせて頂くよ」
『お手並み拝見?おい、どういう事だ?』
その声を聞いて、僕は通話を切った
「なんなんだ?アイツは」
校門の前で俺はその電話の切り方にヤキモキしていた
「まぁいいか、とりあえず美術室に急がな…」
その時ちょうど、ある男子生徒が校門から出ていくときだった
男子生徒は俺に気づく
「あっ…」
何だか驚いているのかやばいと思っているのか変な返事だったが、俺には好都合だった
「成弥、ちょうど良かった
お前にも話が聞きたい」




