絵は私が描きます
「すいませんでした!」
風邪が治った木曜日の昼休み。俺と明は中庭で雪と会っていた
雪は俺の顔を見るや大きな声で誤り、頭を下げた
「話は聞いているから謝らなくていい、悪いのは顧問だ。」
「そうそう。顧問は今年変わったばっかりだったんだけど、あんな人だとは思わなかった。まさか雪ちゃんに勝手に書いた発表文を読ませるなんて…これは問題だよ、今日あたり教頭あたりに話に行くよ」
俺と明は雪をフォローする
頭を上げた雪はまだ申し訳なさそうだった。
「でも言ってしまったのは私です…
絵は私が描きます」
それを聞いて俺は呆れた
「絵を描くのは構わない。だが十中八九佳賞すら取れないと思うぞ。県内コンクールはクオリティも高いしな」
俺はすこし説教のような口調で言ってしまった
また落ち込む雪をフォローするように明は俺に紙を手渡した
紙の1番上には新人部門と書いてあった。
「調べてみたんだけど今度のコンクールには1年生が出展できる展覧会があるんだ。まぁ規約上学校につき1つしか提出できないから本選には出せないんだけどね」
なるほど、同じ1年生どうしならもしかしたら…ということか
「しかし雪、お前絵を描いたことないんだろ?
提出まであと3ヶ月…お前どうやって色々覚えるんだ?」
そういうと明はニヤニヤしてこっちを見た
「それに関しては問題ないだろ。わが芸術部には素晴らしい画家がいるじゃないか」
…ん?
なんでこっちを見るんだ?
なんだ…?いや…それは嫌だぞ…
冷や汗が垂れる
雪を見ると、真剣な眼差しでこっちを見ていた
おいまて、まさか
そのまさかだった
「先輩、どうか私に絵を教えてください!」
「いやだ」
そんな1言は部長権力で無効化され、
俺はその日から雪専属コーチとなった。
それから2か月が経ち、俺は一通りの技術を叩き込んだ。
彼女はヒーヒー言いながらもマスターし、しっかりと上達をしていた。俺も最初は嫌々だったが、雪の成長は面白く、結局は俺も楽しみながら出来た。
今日も授業中終わりに明と共に部室に行くと、いつも通り既に雪が部室を開けていた。
「先輩。お疲れ様です」
雪はいつもの席に座りながらこっちを向き、挨拶をする
「よぉ」
「やぁ、雪ちゃん。毎日職員室に行かせてゴメンね」
「いやいや、半年間の辛抱ですよ」
俺は雪の隣、窓際の特等席に座る
雪の絵を見る。提出用の絵も下書きが進み、今日にも色つけに入ってもいいだろう。
俺の視線に気づいたのか
「先輩、どうですかね」
と雪が聞いてきた
「そうだな。もう色つけに入ってもいいんじゃないか?」
「そうですね、今日は少し描きたしたいとこがあるんで、明日から入ります」
この調子だと提出日には余裕で間に合うだろう。
初めはどうなる事かと思ったが。
ここまでくればもう教えることは無いだろう。俺もゆっくり絵を描きたい
雪を見習い、充はキャンバスに集中した。