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芸術部の事件簿  作者: ハルコ
幽霊部員を目指して
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幽霊部員を目指して5

たまたま風邪をひいたか気分転換だろう。

元々隔日できていた。こんなこともある。

初めはそう思っていたが、一日経つ事に不安は大きくなり、週末になっても来ない事に俺達は少し不安だった。

新入部員の中で最も真面目に取り組む一葉。画力の点でも今後の美術部を引っ張っていく存在。

彼女は芸術部にとって重要な立ち位置にいた。

木曜日、痺れを切らした雪は、新入部員に一葉のことを聞いたが

「かずっち?いやークラス違うしあの子友達少ないから会わないですよー

部活サボるやつなんて気にしちゃダメですよー」

なんて適当に返された。まぁ元々一葉に煙たがれるくらいの仲だ。園花に聞いても答えは同じだった。

話は平行線、このままではいけない。1年生2人が帰った後、俺達3人は、今ではもう懐かしい美術準備室室で話し合った。

「どうしましょう。先輩」

描きかけの絵を見ながら雪は不安そうに話す

俺の答えは固まっていた

「直接会って話を聞くしかないんじゃないか?

ここで待ってても埒が明かない」

その答えに明は苦笑いだった

「随分ストレートな作戦だね。

そんな力技で大丈夫なのかい?」

「そうですよ、もし部活が嫌になったとか、友好関係なんて問題だったらどうするんですか」

不安を感じる2人に対して、俺は酷く冷静だった。

「友好関係はともかく部活が嫌になったはないだろ

あの絵を見ればわかるだろ」

俺は準備室しまった一葉の絵を指さす

「どういう事だい?」

「あの絵はやっと下書きが終わる手前だ。

それに来なくなる前日までしっかり絵を書いていたんだぞ?急に部活が嫌になるわけが無い。」

「まぁ、たしかに」

「それにいくらここで頭を悩ませても埒が明かない。

聞いた方が早いしな

明日の放課後行ってみよう」

「…そうだね、でも雪ちゃん、君はする番をしていてくれ」

明がそう言うと、雪は首を傾げた

「どうしてですか?」

「い、いやぁ…」

明は唾が悪そうだった。

代わりに言ってやるか

「雪は芸術部で唯一、一葉と仲良くしていただろ?

俺らが説得に失敗してもお前なら何とかできるかもしれない…

それに…」

「それに?」

「俺達はもうすぐ居なくなる。

失敗して一葉を怒らせても俺たちを敵にして何とか関係を取り持ってくれ」

その一言は雪に俺たちがいなくなる現実を真正面突きつけたのか、少し悲しい表情をした。




次の日の放課後、俺と明は部室には向かわず、直接1年c組の教室に向かった。

下校時間から少し時間が空いただけあって廊下に人はおらず、たった数十分で学校の賑やかさは消えていた。

3年の教室から1年生の教室までは階段を上がらなければならない。めんどくさかった。

「しかし充、教室に行くのは賛成なんだが、彼女がいなかったらどうするんだい?」

隣を歩く明はそう聞いてきた。

俺はスマホの画面を見せた

「明日少し話したい。教室で待っててくれないか?

そうLINEしたさ。すぐに返信が来た。答えはYESさ」

「なんだかその文面だと告白みたいだね

勢いに任せて言ってみなよ」

明は適当に茶化す

「馬鹿言うな。俺はそこまで女に飢えていない。」

俺は笑いながら言う

明は初めからその答えが来るのを知っていたのか、笑っていた

「まぁそうだとは思うけどさ。

ちなみに充は一葉ちゃんが来なくなった理由はなんだと思う?」

「そうだな…1番思い当たるのは楓の事、それ以外には…そうだな、学業との両立なんて所か?」

3階まで上がり終え、廊下を右に曲がる。

1-C教室は突き当たりだ。

明は話を続けた

「だろうね、まぁ僕らの最後の仕事さ」

「だな、俺達がどんなに悪い立場になろうとも…最後まであの場所を守ろうぜ

…おっ、着いたな」

教室の前につくと、扉は空いており、教室の真ん中に本を読んでいる生徒が1人だけいた。

背の低いショートボブ、その生徒は一葉だった。

明は教室の扉をノックする

その音に気づき、一葉はこっちを向いた。

その顔はいつも通りの無表情だった。

「ごめんね、待たせちゃって」

明は一言そう言った。

明の同行に、一葉も少し驚いた顔をしたが、直ぐにいつもの無表情に近い顔になった

「松原先輩…赤坂先輩だけだと思いました。」

と言った。

「まぁな、コイツもいた方がいいと思ってな」

俺達は教室に入り、一葉に向かい合う形で隣の席に腰掛ける。明は誰のかも分からないのに机に座った。

座ると直ぐに一葉が話し出した。

「来た理由は分かります。私が部活に来なくなった理由ですよね?」

分かりきっていたような口調で話す

こういう時の明は強い。いつもの飄々とした口調で話を続けた

「別に責めてるわけじゃないんだ。でもあんなにいい絵を描く人がいなくなるのは惜しくてね。なにか事情があるなら話してくれないか?」

そう言う明に

「部活の雰囲気が嫌。それだけです」

一葉はキッパリと言い切った

「雰囲気…楓と折り合いがつかないのか」

俺は直球に言い放つ。正直これしか理由は見つからない。

しかし

「いえ、そういう訳ではありません」

と、一蹴された。

俺は少し驚いた。楓でなければ園花か?それとも成弥か?

明を見ても同じような表情だった。

そんな俺達を裏腹に、一葉は少し顔を曇らせ、言うか言わないか迷っているようだった。

俺は彼女のつっかえを取るつもりで言った。

「迷っているなら話してくれ、これも俺たち上級生の仕事だし、もう居なくなる俺達だ。心に閉まっておく」

実に先輩らしい。そう自分でも思う。


しかしその後、後悔することになるとは


一葉は俺の一言を聞いて、顔が少し凛としたように思えた。

そして思い口を開き、

「先輩、単刀直入に言います。私が部活を去る理由はお聞きにならない方がいいと思います。あなた方は不幸になりますよ?」

そう言った。不幸になる、そこまであの部活には問題があるのか

「もう僕らは部活を去る身だ。なんだって聞くよ」

明がそう答える。俺も首を縦に振り、肯定する。

「そうだな。正直お前を引き戻すのが最後の仕事くらいに考えている」

俺もそう言う。すると一葉な大きくため息をついた。

少しの間静寂に包まれる教室。外から聞こえる部活の声も気にはならなかった。

顔を上げた。一葉はなんとも言えない、感情の篭ってないような顔だった。そして重く閉じていたその口から出た言葉に、俺と明は酷く驚き、後悔をするのだった。

まさか俺達が原因だとは、あの事件はまだ俺達に付きまとうのか、そう思った





「私は去年苗字が変わりまして、旧姓は大原といいます。

2年前、美術部の部長をしていた大原知世の妹です。ご存知ですよね?」

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