ラブレター、充の推理
ガコン
自動販売機から心地よい音を響かせ、暖かいコーヒーがでてきた。
2つ買い、1つを明に渡し、俺はもうひとつを開けて口につける
やけに甘いコーヒーが口に広がり内から体を暖める
「充、俺を連れ出したのはこれを飲むためかい?」
ニヤついた顔で明は言う
俺は鼻で笑う
「そんな事なら部室のポットで足りる。あれの方が好みだしな
それに真っ白な中庭を見ながら暖かいコーヒーを飲むなんてマッチポンプ。実に芸術家らしいじゃないか?」
「なるほど、俺は似非芸術家の素晴らしい心遣いでコーヒーを飲んでいると
わざわざ部室の2人に分かりやすい嘘をついてまでこの景色を見せたかったと」
「なんだ?怒ってるのか?」
「まさか。コーヒーを奢ってもらえたんだ。
それにやっとお前とあの話を推理できる」
明はニヤつきながらコーヒーを1口飲む。なんだ、こいつも違和感を持っていたのか
俺も1口コーヒーを飲み、話を始める
「なぁ明、あの話、違和感を覚えないか?」
そう言うとコーヒーのプルタブを弄りながら明は話す
「違和感ねぇ…まぁ沢山あるよね
なんでラブレターを隠したのか。会長の話じゃ彼女さんってのは随分内気な人みたいだしな。そんな人が会長以外の赤の他人に愛をつづった手紙なんて見せられないと思うしな」
明もそこに違和感を覚えたということは…あれは全て演技だったのか…
「たとえ2か月後に見てもらわないとって話だったとしても、例えば親とか親友とかに遺言で頼んだ方が確実だろうに
どこかに隠すなんて捨てられるリスクがデカすぎるだろ」
「…そう言えばそうだ。なんでそんなリスクを冒したんだ?
その通りなんだ。会長以外に見られる確率の方が高くなる
…会長以外に…?」
明は顎に手を当て考え出した
明の言うとうり、ラブレターなんて隠す物じゃない
もしかしたら…
明はふと思い出したように話し出した
「…そう言えばそうだ。なんで会長は彼女さんの肉親や友達にこの件を相談しなかったんだろう?
近くで見ていた人ほど最後の行動だって分かるだろうに」
「たしかに…死人に口なし。別に付き合ってた事なんて恥ずかしい事でもないし、…まぁ親じゃないからなんとも言えないが、死んだ娘の彼氏ってそんなに悪い印象か?」
違和感が形になって姿を現す
隠されたラブレター…
見つかるリスク…
肉親、親友には話せない…
頭の中がスッキリとした。
俺は缶に残ったコーヒーを飲み干し、明に話した
「…なぁ明、この話全て逆なんじゃないか?
俺の推理だと…」
「言いたいことはわかってるさ。」
「会長はラブレターなんか探していない」
10分ほど話したか
部室に戻ると2人は楽しく話をしていた
…いや、雪は会長とは対照的に困ったような笑顔だった
会長は豪快な笑顔を雪に振る舞いていた
本当に人のいい笑顔だ。きっと彼女さんもここに惹かれたか?
その顔はラブレターの事なんて忘れたようだった。
部屋に入った俺達に
「おぉ、遅かったな」
と会長は言った。
雪はというとほっとした表情で俺たちを見ていた。
悪い事をした、すまない雪。と心の中で謝った。
俺達の第一声は会長への謝罪だった。
「すいません会長。どうしても手紙の在処が分かりませんでした」
なるべく申し訳なさそうに、そして険しい顔をして
会長は豆鉄砲を食らったような驚いた顔をした
「わ、分からなかったって…
もう少しよく考えてくれないか」
雪も会長の援護射撃をすようとするが、
「何かあったんですか?」
と俺達の不自然さに気づいたらしい。こいつもかなり成長した。
明は話を続ける
「謎が解けなかったわけじゃないんです。
在り処を絞り込め無かっただけで…」
すると会長の顔はパァっと顔が明るくなった
「じゃあラブレターの場所がわかったのか!」
うるさいくらいの元気な声。
「まぁ、外れてる方が確率が高いんですけど」
「教えてくれ!少しでも可能性があるのなら!」
と急かした
会長は血なまこになって詰め寄る
俺は少し引きながらも話した
「教えますとも、まず座ってください」
そう言うと会長は少し落ち着き、腰を下ろした
それを見計らって俺は話し始めた
「まず1つ目、可能性は市営図書館です。
調べたところ今の時期、夜の7時までやっているらしいので6時に会長に会ってからも間に合います。図書館で2ヶ月後のイベントに使いそうな本をラブレターを隠したと考えていました。
イベントで使う本なら誰かが見ますし、おそらく彼女さんは内容が分かるようにしておいて、必ず会長に届くようにしたんだと思います」
推理を聞いて雪には違和感を与えたらしい。キョトンとした顔をしている
対して会長は少し青ざめた顔をした
まさに予想通りの顔だった
「次に2つ目、2ヶ月後剥がされるであろうポスターです。
これはちょっと自信ないんですがね。ポスターの裏にでも手紙を隠しておけばポスターの管理人がそれを見つけると思うんです。さっきと同じよう、見つかれば会長に届くでしょう。
この2つだと思うのですが…」
そこまで聞いた会長はまるで何かを恐れるように顔を青ざめ、
「す、直ぐに探しに行く!
美術部、本当にありがとう!」
と言って急いで部室から出ていった
急に静かになる部室
雪はゆっくりと動きだし、開けっ放しになった扉を閉めた
「なんだか変でしたね会長」
雪も何かを察したのだろう
腑に落ちないようにいった
「まぁ、それだけラブレターを見つけたいってことだよ
しかし謎が解けなかったしなんかウヤムヤするねぇ」
明はいつも通りソファーに寝っ転がりながら言う
これも計画通り
俺は2人にこう言った
「じゃあ図書室に行こう、資料を探しに」




