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炎の街

作者: 秋助

過去の作品です

至らない点は多々ありますが、どうかご容赦下さい

 あなたは元気ですか? そちらは晴れていますか?

 私は元気です。空からは今日も火の粉が降り注ぎます。

大切な記念写真も、交換日記も、渡せなかった手紙も、思い出の図書館も、全部燃えて消えてしまいました。

 私の住む街には、ガーネットで作られた避炎針があります。

 今日もこの街は、炎に包まれています。


     ※            ※


『本日は午後から広い範囲で、曇りのち火の粉でしょう』

 天気予報がこれからの未来を告げる。

 私達の住む街に火の粉が降り注ぐようになってから、どれくらいが経つだろう。わからなくなるくらいには時が経っている。

 住めば都。とまではいかないものの、さすがに何年も経てばこの光景も日常になりつつある。というより、そう思わなければ精神的に生きていけないのだ。少なくとも、私は。

 亡くなった彼と私を繋ぐもの。星がよく見える海岸で撮影した写真。彼からもらった恥ずかしい手紙。私達が通っていた木造建ての小学校。その何もかもが文字通り、炎によって焼き尽くされた。

 もちろん、早急に避難勧告が出された。でも、それでは本当に何もかもを失ってしまうではないか。それは私の意地だった。

 どうして私の住むこの街だけが。

 研究者達の調査により、ある一つの仮説が立てられた。

 この街は国内で唯一、ガーネットの原石が採れる鉱山がある。そのガーネットの成分が火の粉を引き寄せているのではないかと。事実、鉱山の周辺が特に酷い被害を受けている。

 鉱山のおかげで国内全土への被害は免れたのに、当時は街への罵詈雑言で溢れ返っていた。金に目が眩んだ亡者共への罰。山を喰い散らかした冒涜。財政源を持たない他県からの僻みである。

「……さて、と」

 今日もこの街を保存するために、仕事の準備をして出掛ける。

 街に残った人達が集まって立ち上げた事業だ。街の景観を残しつつ、炎に耐えられる改築をしたり、かろうじて残った書物をデジタル化したりする。あなたの街を、私が守り抜こうと決めた。


     ※            ※


 あなたは元気ですか? そちらは晴れていますか?

 私は元気です。空からは今日も火の粉が降り注ぎます。

 大切な記念写真も、交換日記も、渡せなかった手紙も、思い出の図書館も、全部燃えて消えてしまいました。

 私の住む街には、ガーネットで作られた避炎針があります。

 今日もこの街は、炎に包まれています。

 でも、それでも、私はこの街で生きていこうと決めました。

最後までお読みいただきありがとうございます

感想やご指摘などがありましたら宜しくお願い致します

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