6-21
色も形も言葉。
言語や文字だけじゃない。
鳥のさえずり、カエルの鳴き声、全てが言葉なんだ。全てが私に教えてくれる。
でも、どうしてだろう……
言葉で表せるのが嘆く、で、
呻きは言葉にならない。
ああ、なんで、こんなにも心が空っぽになってくんだ…
ああ、マリア……
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過去は常に、今から見れば実際の過去より美しく思える。過去が楽しいのは、過去が今ここにないからに過ぎない
フィンリー・ダン
ぼくは…死んだのか…、?
それとも、コタール症候群なのか…
ぼくの真下では、
今も、武装勇者とジーグが死闘を繰り広げている。
「超級音魔法:旋音一音」
「がっ、くっ、……破壊…スキル:破壊の系譜…」
「音スキル:メテオストームサウンド」
「がっ………」
ジーグの顔なんて、複合性集合型歯牙腫のようになってる。
「これまでの恨み!!」
ネアさんが、ペディキュアに仕込んだ魔法陣が煌めく。
「干渉スキル:愛別離苦」
あれか?内助の功ってやつか…
「がっ…ね…あ…」
占い師の装いは、多分、神父をコンセプトにしてると思われる。神父。真っ白い神父だ。
それに、生地も良い。ロシアンゴールデンセーブルなのか?
わらしべ長者のように交換していったら、ぼくもいつか手に入るかな…
「上級音魔法:サウンドパニッシャー」
「がっ………」
ジーグが瓦礫の山まで飛ばされる。、
「音スキル:メテオサウンド」
そこに、追い討ちをかけるように、音の嵐が突っ込む。
「ジーグ……」
ぼくは何もできないのか…
もう、前の世界の〝記憶〟なんで全く残ってない。もちろん、この世界での記憶だって細かいことなら、ほとんど残ってない………
脳に負担をかけ過ぎたみたいだ……
体は魔法で再生しても、記憶までは再生しない。海馬を治したところで、時を巻き戻すわけじゃないからな……
「ジーグ……」
占い師に喉を掴まれている、
ジーグにはもう、反撃する力も残ってないみたいだ。
波動擾乱上にいるぼくは、
そっとジーグに手を伸ばす。
「ぼくは…何を……」
まさか、助けようとしたんじゃないのか…?
何故?
前の世界では、善人だったのか?
それとも、〝人を助けないといけない使命〟でも背負っていたのか?…
伸ばした手に、雪が降ってくる。
〝ねぇ、どこにいるの?逢いたい…〟
この声とともに、あるビジョンが見えた。
どこかの墓場?…
墓地が果てしなく並んでる場所。
これは…何かのトルソーの側で、女性が泣いている。
「なんだ…今の風景……」
見覚えのない場所だ。はっきり言ってわからない。ただ、意思のようなものははっきりと伝わった。
ぼくには過去がない。
だけど、体が、心が人を助けようとしている。
なら、助ける!それだけだ!!!!
頼む!力を貸してくれ!!!
「偽れ!Exスキル:虚飾」
ぼくは、周囲の雪と融合する。
「うおおおおおおおお!!」
鳴り響く、機械音。
ぼくは、ジャンボドリルを出現させ、
鉛直に占い師目掛けて、突撃する。
「っ!?…音スキル:サウンドルーム」
音の空間と衝突し、激しくスパークする。
「ぐっ………」
「おりやりやりやりやりや!」
ガキン、という破裂音とともに、
ぼくらは、距離を空ける。
「…その姿は…?武装?」
ファビュラス・ホットスタッフ。
ダウンサイジング至上主義な弟と違い、大型な武器を愛用する〝イービルヒーロー〟。
マーベラス・ホットスタッフのプロトタイプであり、銀色の双眼を持つ。
まぁ、あれだ!MarkIIみたいなやつだ。
ちなみに、絶縁性の弟と違い、新機軸として、耐食性に極振りしている。
モールス信号が体を伝う。
「音スキル:マキシマムボイス」
ぼくは、ネイルガンとレールガンを総動員させ、占い師の攻撃を迎え撃つ。
「ならば、音スキル…」
「させねぇ……破壊スキル:破壊の支配」
ジーグが決死の力を振り絞り、
占い師の気をそらす。
「もらった!、」
ぼくは、大型の電動ノコギリを見舞う。
が、
「ふふ、何人たりとも勇者を傷付けられない!」
衝撃はたしかに伝わった。
だが、ダメージが通らない。
ぼくはそのまま、ゼロ距離プラズマ粒子砲で占い師を吹き飛ばす。
「上級音魔法:音の監獄」
後ろから声がした。…
「なっ、?!…」
ぼくは、巨大なスタンガンを取り出すも、
音の空間に削り取られてしまう。
ぼくは、右手にチェーンソー、左手に電磁剣を出現させるも、そのまま、消しとばされる。
「がっは……」
やばい、スクラップにされる。
足元に魔法陣が出現する。
カルダモンの香りが広がる。
「超級音魔法:サンクチュアリィレクイエム」
賛美歌のような音が響く。
「おおおおおお!」
ぼくは、とっさに電磁力盾を構えるも、
盾ごと、貫かれてしまう……
「が…」
虚飾が…解除される…
「くっ…虚飾でも歯が立たないのか……」
これが勇者…
そして、ループインループの揺り返しがぼくを襲う…………
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
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“the dual nature of the HERO“
それは、偶然発見された遺稿。
その巻頭言では、こう綴られている。
ヒーローのイービル化は踏み車のようなものだ。一度踏むと、加速し、やめたらどうなるか分からず、怖くてやめれなくなる。
そして、彼はこう綴る。
ヒーローの力の練達に代償はない。
ヒーローとイービルヒーロー。
それらは、
車の前輪と後輪のようなもの。
どちらも必要である。
そして、ヒーローの力、イービルヒーローの力を以ってして初めて、〝反転〟できる。
その名は、リバース。
ある意味、1つの事象の裏表とも言える。
それは、お盆型ではなく、コイン型。
つまり、幾度も反転は可能。
一瞬で表と裏は入れ替わり、
反転により戦局は大きく変化する。
そして、彼はその力のことをこう表現している。
〝彼の国より送られし、白髪の手紙〟だと
だが、この記事を読む人は誰もおらず、
語り草とはならなかった…




