1-4 義侠心の呵責
「おおお!北、南、東は探した。残るは西だ。」
僕たちはA級モンスターマッドウルフを探すため、島の西側へ向かった。
まぁ、レイサは強いし大丈夫でしょ。
“私のヒーロースキル:義侠心の呵責は、誰かを守るときに真価を発揮する“
僕が、あまり強くなく戦えるか分からないと話すと、彼はそう答えてくれた。
なかなかパワーワードなスキル名だが、その力は本物らしい。
「ん?、あれは?」
そんな過去の回想シーンに浸っていると、沼がみえてきた。
なんか、譲り受けた当初のトワゾンドール号みたいな色をしている。
「おおお!この沼は、マッドウルフの巣だ。この沼のどこかにやつはいる…」
どこかにいるって…辺り一面は沼一色なんだけどな…
僕は、やる気スイッチをonにする。一応長押ししておく。
ザザザ、ザザザ
しばらく進むと、沼に変化が生じた。
い、色が変わった?これは赤?いや、臙脂色か。
「おおお!やつだ、来るぞ!!」
僕はさっき拾った、ヤシの木もとい、トレントの木片を構える。
ギャオオーススス
マッドウルフ?らしき灰色の狼が突如としてレイサの背後に出現。そのまま噛み付こうとする。
「樹脂スキル:油引き」
レイサの身体を油のようなものが覆う。
ぎゃう?
歯が、牙が刺さらないというか滑ってる。
「樹脂スキル:油圧」
そこにレイサの攻撃。マッドウルフは、血を吐きながら吹き飛んだ。
強い、レイサ強すぎる。勝てる、きたこれ。
「ぐっ…」
あれ?、体が動かない。動かん。ふと、レイサの視線と僕の視線が交わる。
どうやら、レイサも同じ状態らしい…あれ?
「レイサ、沼が黄色だ。」
なんとか口は動く。目も!!
なんとなく身体がスーパー銭湯の電気風呂に浸かっている感覚だ。
「おおお!これは麻痺沼だ。問題ない。」
レイサの声色からはどことなく余裕が感じられる。
「さぁ、俺の趣味は通用するか?」
レイサの言うと、拳を握った。
え、この状況で身体が動いている、かっこいい!!
「ステータス上昇スキル:パワーチャージ、拳スキル:拳飛」
レイサはそう唱えると、スキルで若干肥大化した右手を振るう。
ギャ…ギャ…
早い。見えない。エアフォースワン並みに凄い。
当たったのか分からないけど、マッドウルフは虫の息だ。
いけ、止めだ、レイサ。
「なぜ、同じ世界の者同士で争う?」
不意に、誰もいないはずの背後から声がした。
振り返るとそこには、長髪で黒と黄色。それがその男の第一印象。
ふと、クチナシの香りがした。
「ヒーロースキル:義侠心の呵責!!!」
世界は白く、うっとりしてしまうほどキレイな光に包まれた。




