1-3 トレンドなトレント
「you deserve better!!」
中2の秋、もっと良い人がいると君は言った。
日本に来て一番最初に話した日本人が僕だと君は言ってくれたね。
僕もこんなに人を好きだと思えたのは君が初めてだったのかも知れない。
「you made my day!!!」
あなたのおかげで今日は良い日になった。
その言葉は、社交辞令?営業トーク?リップサービス?
それは当時の僕にはわからなかった。
誰にでも愛想を振りまいて影を見せず、男女ともに好かれ、
食べたガムを机の裏につけまくる、そんな君が好きだったんだ。
「why?」
僕は涙を堪えながら尋ねた。
「beacause you matter to me!!」
あなたは私にとって重要だからね。
そう言って、君はチャンバを出て行った。
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朝だ。あれ、涙?怖い夢でも見ていたのかな?覚えてないけど…
「おおお!やっと起きたか!朝食にするぞ!」
このタンクトップおじさんはいつの笑顔を絶やさない。そしてザ:良い人だ。
「調査スキル:ボタニカルサーチ!!!」
レイサは懐から何かを取り出し、そう唱えた。
あ、その球、僕が前に拾ったのと同じ奴だ。
ちなみにこの人、魔力がゼロらしい。
だから、複数のスキルホルダを持ち歩ていると言ってた。そんなに器用そうな人には見えないんだけどな…
ギャー7、ギャー7、ギャー7
な、なんかヤシの木が動き出した。
僕も拾った際に情報が流れてきたから知ってるけど、
確かこのスキルって、植物由来のものかどうかを判断する、というスキルのはずだが…
そうこう考えているうちに、三体のヤシの木たちがレイサに迫っていた。
レイサが静かに拳を構える。
「さぁ、俺の趣味は通用するか?」
何そのセリフ!かっこいい!!
「永続スキル:成長する拳、拳スキル:熱血ブロウ」
レイサはそう唱えると拳を小さく振りかぶる。
なんか、右手が赤くなった。というか、煙が出てる。まさか湯気か!?
ギャー7、ギャー7、ギャー7
ヤシの木たちは動きが遅く、一匹ずつ順番に向かってくる。
そして、レイサの拳で面白いくらいにはじけ飛ぶ。
あれ、こいつら実は弱いんじゃないか…
ギャー…
呆気なく戦闘は終わり、僕はレイサの右手が元に戻ったタイミングで話しかけた。
「こいつらは一体?」
「おおお!こいつらはトレント、G級モンスターだ。トレントの島に来たのだから、トレントくらい知っておかないとだめだぞ!」
トレント?トレントってあのトレント?
トレントって、枯れ木的なあれじゃないのか?こんなヤシの木だとは初耳だ。
というか、まったく怪しむそぶりをみせないこの人はやっぱり良い人だ。
「それでは、食べるとするか!」
え、どこを?実とかなってないけど?
「調理スキル:キャンプファイア」
あ、なるほどね。
どうやら、木の屑や欠片を焼いて食べるようだ。
というか、調理スキルがあるということは、
洗濯スキルや掃除スキルとかも存在するのか?ビートウォッシュのスキルとか欲しいな…
とりあえず僕は、アメリカンエキスプレスカードほどの大きさの木片を口に入れてみる。
「う、美味い!!」
衝撃が走った。カリフラワー米を焼き飯にしたような味がした。
その後僕は、3杯おかわりした。