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6-4






事前の一策、事後の百策に勝る













とは誰の言葉だったかな…。







転んでもいないのに、杖を購入する。

そんな秀逸や奴は滅多にいない。



ならば、この状況で、

何百の策を講じるしかない。









「良いか!手を挙げろ!動くな!」





転移してすぐ、ぼくらは包囲された。

そして、物凄く牽制してくるのがこのチョーカーの男。



何やら、エピペンのようなスキルホルダをこちらに向けている。





「おい、お前ら!俺の連れだ!やめろ!」





「ジーグの連れだから信用できないんだろうが!!」





えっ?ジーグって信用ないの?…







「勝手なこと言ってるのは分かってる。でもね、こっちだって貴方たちが感染していないかどうか判断できないの…」





そう言うのは、カチューシャの女。

民族楽器のような物を持っている。





感染…?POP VIRUSか…?







「やっぱ!こいつら潰そ?俺っちがいれば大丈夫だって!」





手前みその男。

サイレンアンプのようなスキルホルダを持っている。







てかさっきから、こいつら…同じ人間か…?

いや、人種が違うのかもしれない。ネアンデルタール人とか…







とりあえず、この状況を打破だ。

下手に出るのはやめよう…





ジーグは…?





「いやいや、待ってくれよ!俺の勤務態度が悪いのは分かった!でも感染とか関係ないだろうが!」





大丈夫そうだ。その余裕からまだまだ算段があることが伺える。







ジッポーは…内弁慶の傾向がある。

当分は大人しくしているだろう…。







「何もごちゃごちゃ言ってる?そこを退かないとお前たちを血祭りにあげるぞ?」





なんだこれ?ポプリ…?



違う、殺気だ!!





ジッポー!やめろって!





「だいたいここはどこなんだ?ん?とっとと外にだせ!」









青葛、油瀝青、イエローサルタン、犬芥子、犬薺、犬群雀、茴香、鬱金、姥目樫、うんなんおうばい、金雀枝、エピデンドルム、黄梅、おおばうまのすずくさ、オキザリス、苧環、鬼縛り、鬼田平子、鬼野芥子、尾上柳、オンシジューム、ガザニア、酢漿草、カモミール、カラー、からたねおがたま、カルセオラリア、カロライナジャスミン、カンガルーポー、黄海老根、黄華鬘、雉筵、黄菖蒲、黄素馨、狐の牡丹、黄花片栗、黄花菫 、黄花甘菜、木五倍子、霧島水木、金花茶、金魚草、金鎖、金鶏菊、金盞花、金鳳花 、金蘭、金竜花、草の王、椚、クラスペディア、クリサンセマム・ムルチコレ、クロッカス、黒文字、月桂樹、月桃、ゴールデンクラッカー、こちゃるめるそう、こめつぶつめくさ、崑崙花、山茱萸、山椒、サンダーソニア……







の香りが充満する。







「お前ら全員……」







おい、ジッポー…言うな……やめろ…









「殺してや……」







樒、地縛、四手、支那水木、ジャーマンアイリス、蛇結茨、棕櫚、菖蒲、シンビジューム

、吸葛、水仙、睡蓮、菘、石菖、千代萩、田平子、壇香梅、蒲公英、ちゃぼとうじゅろ、チューリップ、黄楊、ツンベルギア、ツンベルギア・マイソレンシス、定家葛、天台烏薬、土佐水木、扉、夏茱萸、難波津、菜の花 、野漆、野芥子、野襤褸菊、パキスタキス、はちじょうきぶし、花簪、花菱草、バニラ、母子草、パフィオペディルム、葉牡丹、薔薇、パンジー、柊南天、日向水木、福寿草 、房アカシア、フリージア、プリムラ、ペチコート水仙、蛇苺、牡丹、マリーゴールド、満作、万年草、三葉土栗、三叉、武蔵野、群雀、目木、木香薔薇、モリシマアカシア、八重山吹山吹、山吹草、ユリオプスデージー、百合の木、ラナンキュラス、立金花 、連翹、黄金ひよくひば……





の香りが踊り狂う。













ぼくは全力で、エクストリーム土下座の態勢に入った。







ん?この文字は…?





ぼくは床に、見慣れた文字を見つける。



床に書かれたexactryの文字。

どういう意味だ!?誤植か?…



まさか、ぼくと同じ世界?…

この世界に来て日常で英語は見てないが、

スキルでは英語が使われているケースもあった。





いや、今はそんなことを考えている場合じゃ………。







「破壊スキル:ブレインクラッシュ」







えっ…?







ジーグ……。









「なぁ、これで良いだろ…?ほら、早く散れ…!」









----------------------------------------------------------------------------------






彼女が出来ない?…。





彼女が出来ないのは、

相手に求めるハードルを上げてるからでしょ?









違う…。





じゃあ、何?









自分が大事だからだ、自分が楽したいんだ…。



結局、自分が大事で苦労したくない。

辛いことをしたくない。



だから、その何かを許容できないんだ…。





だから、諦めて妥協する。

新たな恋愛すらしなくなる。



乗り込んだ船が沈むと分かっていても、

乗り換えない。



その方が楽だからだ。







でも、忘れないでほしい。





いつだって幸せは前にあるということを。





横にも後ろにもない。、

前にしかないんだ。





だから、何度泣こうが、何度別れようが、ふられようが、前に進むしかないんだ。



落ち込んでる暇なんかない。



出会いはこの時、この一瞬で過ぎて行く。





本当の幸せを手にしたいなら、

乗り越えなくちゃいけない。







もし、良心の呵責が邪魔をするなら、

相手を想う気持ちが邪魔をするなら、







そんな心、気持ちなんて破壊してしまえ





そんな、本心、恋心なんて破壊してしまえ







だって結果だろ?





自分の想いがどうなろうと、

自らを殺すことになろうが、





幸せになれればそれで良くないか?

それで好きな人と一緒にいられるんならいいんじゃないか?









だから、俺は俺自身を破壊する!







「破壊スキル:破壊の創造」




ネア……愛してる……






----------------------------------------------------------------------------------













善食のジーグ。





それは、悪食と対になるものではない。





彼は善い物しか食べない。







もっと言えば、自分にとって〝都合の善い物しか食べない。〟





彼はそれ以外を破壊する。



これまでも、これからも、









「……その話は…本当ですか…?」







ここはこの村唯一のギルド。



その…屋上にぼくはいる。





転移先はここの地下一階。

どうやらジーグはここの職員だったようだ。





白とブラウンを基調とした、落ち着いた雰囲気のある建物。築浅を感じさせ、なかなかの容積率を誇るギルドだ。







そんな建物の屋上で、

かつてのジーグの相棒だったという、ネアさんと話している。





「ええ、本当よ。彼は強さを手に入れる為に、自分の倫理観さえ破壊したの。邪魔だからって……。





いやいや、気持ちは分からんでもないけどね………汗





まぁ、何にせよ、倫理観の破壊なんてやめといた方が良い。



よいこは真似しないでねというより、悪い子こそ真似しないでって感じだ。









「じゃあ、そろそろ補給部隊が帰って来る頃だから私は戻るね!」





そう言ってネアさんは去っていった。





ぼくは、白いため息を吐く。



原因はもちろん、この騒動だが、

もっと厄介な事がある。





「1、2、3……4、5……。」





村を囲む8本の柱。



どうやら?結界みたいなものが張られているらしく、ここから脱出できないらしい。



そこで今、ギルドのメンバーたちが補給部隊と撃滅部隊に分かれて仕事を行なっている。



まだ一本の柱も落とせてないというが…もしかしてやばいんじゃないだろうか……。





ちなみに戦えないぼくはお留守番だ。







「デリャャャャャ」



「はぁぁぁ!」







「くっ、こいつら!防御スキル:エンゼルフィルム」



「兄貴、いくぞ!棍スキル:赤鬼」



「おうよ、棍スキル:黒鬼」







絶えず迫り来る感染者たち。

ギルドを囲む防壁では今も瀬戸際の攻防が続いている。











ギルドフロアに戻ると、何やら酒盛りが行われていた。



なんだ…?内輪ノリか?





メスカルに、テキーラ、ウイスキー、白酒……。





こんな状況で酒盛り…?…。







感染?についても、村を囲む柱状の光についても、結界についても何一つ分かっていないこの状況で……?





ぼくたちは、いつ終わりが訪れるかも分からない一方通行をひたすら進んでいるものだ。何故、平気なんだ?







絶え間なく落ちる水滴が硬い石に穴を開けるように、今この瞬間でさえ、自体は刻々と進んでいるんだ。…。





こいつら正気じゃない。













「おう、新入り!攻略部隊が、何やら柱を一本破壊したらしいんだ。一杯くらい付き合えや!」





仕方ない。なら、一杯だけ…。





「まずっ!」





まずっ!これ、微酸性電解水じゃないのか?





「はは、さては新入り、アルコール分解のスキル持ってないのか?不憫だな!」





アルコール分解のスキル?

それ、肝臓の働きだろ…?



ほんとにこの世界は何でもスキルなんだな…







「新入り!職業は?」





精神干渉スキルやギルドカードがない今、尋問にかけられるは避けたい。



「ぼくは…旅人です…」





「なんだ?旅人だ?」





なんだよ?旅人だって立派な職業だろ?

職業に貴賎なしだろ?…



旅人も職…いや、住所不定無職か……











ん?







「…神の祟りだ…」







ふと、空間の隅でブツブツ言ってる人を見つける。







なんだ?躁鬱病か?振戦症状も見られる。





ん?何かを塗っている?剥離剤?

いや、描いてるのか?パラチオンの構造式?





ここからじゃ良くみえ……。









「大変だ!みんな!!補給部隊が戻らない!!」

















静かに水を湛える池に石を投げると広がる波紋。





この人相豊かな村に一石を投じたのは何故か?



石を投げた者は誰か?









そんな些細な疑問は、まだこの先の未来へ向けた序曲に過ぎなかった。









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