3-3 サーベイランス
ここが、マジックファクトリー…
かなりの老朽化が進んでる。
中から漂ってくるこの香り、どこかで嗅いだことがある。
確か…香水の…………ライトブルーだ!!!
「着いたよ、私が魔術書買ってくるから、ティーくんはその辺のもの見てて!」
その辺の物を見ててと言われてもな~、分らんしな~
ん?瓶の中に徒然草的な奴が入ってる。魔法薬的なあれかな…
というか、この世界にジェネリックなどの薬はあるのだろうか。
一応、僕の世界にも、ゾフルーザーやエバミール、セパゾン、オプジーボ、ザナックスなど、毒物から劇薬まで様々な種類の薬が存在した。
このマドラーみたいな棒が10ワイ。
この、テアニンの構造式に近いものが描かれている紙が30ワイ。
…何故だ、魚の方が高いのか…こんな海沿いの村なのに…
「買えたわ、じゃあ広い場所に行きましょうか?」
「あ、ちょっと待って!スキル関連のお店はないの?」
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「うわ!!!高!!!!!!!!!」
うわ、高いのか!こんなにも…102000もすんのこれ?検査スキル:ボタニカルスキャンって、ボタニカルサーチの劣化版だよね?ギッフェン財だろこれ。
状況把握スキル:岡目八目、腕変換スキル:ヒートアーム、詠唱スキル:ダークスペル、注意喚起スキル:マインドザギャップ、数としては結構あるんだな…
氷スキル:ガトリングフリーズなんて、桁おかしいもん。ほんとに
「なんで、こんなに数があるのに高いの?」
「それはね、1種類につき、1個しか存在しないから」
そんだけ希少価値があるなら、独り占めしてもおかしくないはず。それに、街はともかく村のお店に揃っているのが疑問だ。…もしかして……
「スキルホルダって、何種類あるんですか?」
「え、何?興味あるの?、そういうのはシーナに聞いて」
多分、マジックファクトリーはフランチャイズ系かチェーン店かしらないけど、たくさんお店があって、膨大な数のスキルホルダの中から、使えない、または下位互換のスキルを地方の店に回していると僕は名推理する。
「じゃあ、いこっか!!」
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フレディマーキュリーの偉大な名言の1つ、
お金で幸せは買えないが、
それを与えることは十分にできる。
あの記憶は今でも色褪せない。
グレイトフルデッドにハマっているという君から教えてもらった言葉。
「私ね、幸せを届ける人になりたいんだ~」
そう眩しく笑うのは君。
「私?、私はね、笑顔にさせてくれる人が良い」
僕は君を笑わせる為なら、どんな事でもやった。どんな趣味でも身に付けた。
そして、君との別れの時。
「ふふ、そんな顔しないでよ。
今は泣くときじゃなくて、笑うときだよ?」
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ここは宿、“魚艇”。結論から言うと、魔法の線はダメそうだ。魔力がないのと、文字が頭に入らないことだ。一応、ルーン文字や魔力媒体などの道具を試したが…。ちゃんと覚えようとすると、脳にノイズが入る。まるで、この世界に拒まれているみたいに………
他にも収穫があった。
まず、この世界に属性相性という概念は存在しないらしく、ゲームでお馴染みの三竦みの関係といったものはないらしい。
そして、大都市に行けば行くほど、魔法やスキルを多く持つ者が存在するらしい。マキャベリ的知性仮説に沿ってるし、その通りなんだろう…
最後に迷信について。魔法は人類の叡智とされているのに、その起源や根本的なところが分かっていないらしい。飛行機みたいだ…
一応僕の世界にも、丙午や三隣亡など、迷信か真実かどうか解明されてないものは多く存在する!そういうものがこちらの世界にもあるということか!
以上が、今日半日の魔法の修練で費やして得た成果だ。
明日はいよいよ、インカ街に着く予定だ。そして、ギルド。
インカ街についての情報はあまりない。この地域で唯一のギルド。そして、インバウンド消費がえぐい。それくらいしか話の中に出てこなかった。
それにしても、今日の晩飯は絶品だった。今でもよだれが止まらない。
あの、桜鯛?に、レンセープ。海洋深層水に近い味の水も良かった。クラブソーダ?に、ハイネケン?に近い飲み物も好みだった。
ほんと、あの料亭?トラットリア?は最高だった。また行きたい。
僕は、手持ちの10ワイで譲ってもらった。錆びた鉄の棒を眺める。
金か…やっぱり金だな……金があればスキルだって装備だって良くなる。それは、強さの近道だと僕は考える。
「げほ、げぼ、」
それにしてもこの宿、ほこりっぽいな…僕はダニアレルギーだ。
マスト細胞が刺激されるのを感じながらも、効くかわからないワセリンもどきを鼻に塗って横になる。
エルザさんとも、明日が最後か………
(出会いがあれば、別れがある)
誰から聞いた言葉だろう……
薄れていく意識に中で、僕はそんなことを考えていた。