プロローグ
それは…一目ぼれだった。
生まれて初めての恋。
この気持ちが愛と呼ばれるものだと、そう直感が教えてくれた。
この曇天と冷たい風に誓う。必ず君の願いを叶えてみせると。
この異界の地で。
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“人間は考える葦である”
確か、昔の偉い人のセリフだったと思うけど、
思考が止まってしまった今の僕はまさしく、その葦だった。
クカァー、クカァー、
目の前には海。それも汚染も汚濁も見当たらないきれいな海だ。
あ、ハジロマチドリみたいなのが飛んでる。
「それで……どこだ…ここ…」
その鳥?の羽ばたきにより思考を取り戻した僕はとりあえず、これまでの記憶を思い返してみる。
確か今日は8時22分に起きて、バードウォッチャーの特番を見てから
家を出て、それでイヤホンを付けて、それで…それで…ゴミステーションに、いや、歩道橋まで…
「ん?、なんだこれ?」
沈みかけた思考はふと、水中に緑色に光る球を見つけたことで浮上する。
とにかく、手に取ってみることにする。
(『調査スキル:ボタニカルサーチ』についての情報を開示します)
突然頭の中で木霊する謎の声。いや音。
「く、わ、がぁ…」
そして、耐えられなくもない片頭痛がオープナーとなって、スキルの発動トリガー、効果などの情報が脳全体を駆け巡った。
「…スキル……なんかゲームみたいだ…」
こうして、この異界の地で僕の物語が始まった。