3-1 昭和ード
今日は君とのチェキ会。
しかも、今日は君の誕生日イベント。
僕は電車に揺られながら君のことを考える。
今日はグリーンクリスマスだ。
きっと君の大好きなミニスカサンタコスで迎えてくれるはず。
思わず笑みが零れる。
君の誕生石のうちの一つ、トルコ石は他の月と比べてなんとか手が届きそうな値段だった。
ペニーオークション様様だ。
そうこうしているうちに、君の会場に着いた。
「え~まじヤバいんですけど~」
「それでさ、卒研でイベントアトリビューションをしててさ~」
ピンクのネオンが眩しいそのお店はどこか異世界じみていた。
「お、いたいた!」
僕はお店の一角に君を見つけた。
たくさんの男に囲まれている。
僕はそんな君に誕プレを渡そうとして、
首にぶら下げた会員証を引っ張られる。
「っ!?」
「ねぇ、ピンキーくん、この前私言ったよね?もう来るの辞めなって!!」
振り返るとそこには般若のような形相をした、イブニングドレスのお姉さんがいた。
「何なの?蛍光灯なの?もう私、毎度毎度見てらんないよ!!」
「でも…好きだから…」
「好きだから…?好きだから何?君騙されてるんだよ」
「でも…好きだから」
「好きだから?」
「好きだから少しでも傍に居たいんだ、たとえ騙されてようとATMだろうが別に良いよ!」
「それは違うでしょ?、初めはそれで満足していたのかもしれない。けどさ、もう満足できなくなっているんでしょ!もっと近づきたい、もっととなりに居たい…」
「いや、そんなことは…」
「いや、あるね!寝ても覚めても、大好きな漫画を読んでても、その人へも想いが溢れてくる、集中なんてできない!それが恋だよ。」
彼女はそう言うと、僕からプレゼントをひったくった。
「良い?恋は魔性を帯びてるの!だから、人は騙される。私も君も。」
その顔は、なんだか寂しそうにみえた…
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思考をコントロールできなければ、行いをコントロールすることはできない。
これは、アンドリュー・カーネギーの名言として知られる言葉だ。
そして、思考がフリーズした僕の行いは今、その言葉が示すようにフリーズしている。
「え!三日間?」
ここはそば村。目的地のインカ街への中間地点に位置する村だ。
何でも、あの一戦から運び込まれた僕は三日間眠り続けたらしい。
ちなみに、しずえさんも助けを求めたあの男も無事だ。
しかし、僕が庇った女性の行方は分からないとのこと。死体がなかったことから生きている可能性が高いと思うが…
「…なるほど…」
深呼吸のおかげで思考が解凍した僕は、多めに取れて余ってるという白霊草を煎じて飲む。いつか飲んだ桜湯を思い出す。
これが…白霊草…なんだか、ムーンダストみたいだな…
この村は、別名、漁師の村と呼ばれ、海鮮が有名とのこと。
とりあえず、下の食堂に向かうよう二人を誘導する。
「もー、なんで無茶ばっかりするんですか!!」
「ねぇ、ほんとにスキルもないの?」
「わー、もう二人ともさっきから落ち着いてくださいよ。さっきから何度同じ話を繰り返せば気が済むんですか?とりあえず、ご飯行きましょ?ね?」
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ここは、そば村の宿:鬼艇。
ホールが5名、キッチンが3名となかなかの食堂だ。
壁はアスベスト?に近いものか?椅子はウォールナット材な感じがする。
そして、食器がすごく良い!!ポーセラーツか?
この世界にセーブルのブルー、オークラのホワイト的なものはあるのだろうか…
「すごいですよね、この宿!どんな種族にも受ける料理というのを掲げてるらしいですよ!!」
そう自慢げに話すのはシーナ。
なるほど、ハラール料理的なあれか…
「う、美味い!!」
この、桃花酒みたいな味も好きだし、オーバーイージーに焼けたメガホークの卵もおいしい。
連子鯛に似たムニエル?もまた良き!!
「明日出発するから、今日は一日ゆっくりしてて」
「じゃあ、私はこれでさよならです」
そうだった。シーナとはこの村までだった。
何でも、僕が目覚めるまではここにいると言い張って残ってくれていたようだ。
名残惜しそうに出ていく彼女に手を振りながら、今日の予定に思考を巡らす。
うん、とりあえずあれだな……
「エリザさん、この村を一緒に回りませんか?」