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2-4 ゴブリン



10月7日、青葉の滝にて。




「私ね、大丈夫ってことばが好きなんだ」



「なんで?」



「だってね、人って文字が三つも入っているでしょ?なんか安心しない?」



「人が好きなの?」



「ううん、好きじゃない。私は神様じゃないから、どうしてもすべてを愛せない。でも、だからこそ、好きになろうとしているの」




君は青いカーネーションのカチューシャを外しながら言う。





「だからね、君も好きになってみたら?人間を。案外、悪いものじゃないよ…」














人外の僕は、ただ頷くことしか出来なかった。















----------------------------------------------------------------------------------





「おりゃ、おりゃ」


僕は目の前のゴブリンソルジャーに殺気でフェイントをかけ、足の甲に剣を突き刺す。



Gyaaaa



そしてそのまま肘で顎を殴り飛ばす。


そもまま、横から来るゴブリンにミドルキック。


血流が体を巡る。やる気スイッチはとっくに押されている。もう、連打状態だ。






僕は、パワームーブのウィンドミルでこかしたゴブリンの頭にサッカーキックをぶち込む。


もう僕のスタートボタンは押しっぱなしだ。


左手のジャブで牽制し、右足で水流蹴りを放つ。





ゴブリンがぞろぞろと出てくる。僕は、ボタンを押しまくり、奮い立たせる。






どうして、ゴブリンの群れと闘っているのか?


どうして、一人なのか?


どうして、洞窟の前にいるのか?






それらの答えは、二時間前に遡る。










----------------------------------------------------------------------------------






森には、リンゴのような木もあれば、杉のような木もある。


あ、アリストロキア・サルバドレンシスみたいな実もあるや。






「あ、甘い!甘すぎる!!」


美味いのは美味い。でも、そんなには要らない。グリセミック指数が上がりそうだ。


どこなく甘酒に似た味だから、生姜とのベストマッチが期待できる。








「う~ん、もう少し奥みたいですね…」


なるほど、もう少し奥か…その、白霊草というのが少し楽しみだったりする。




なんでも、ウイルス系に効く薬の材料のようだ。

こっちにもあるのだろうか…梅毒トレポネーマとかその辺のウイルス。




















ん?これは血の匂い?自然と体に力が入る。




「エリザさん…」


「ええ…」



エリザさんの視線の先には、大きな木がある。


僕は、リンパを刺激して、少しでも視力を矯正する。





すると、幹の裏から男が飛び出してきた。






「た、助けてくれ。しずえが、しずえが…」












僕は静かに、ギアを戦闘用にシフトさせた。


















----------------------------------------------------------------------------------



しずえを助けてくれ。


しずえは僕を庇ってゴブリンに連れ去られたんだ。




血まみれの彼はそれだけ言い残して、意識を手放した。



「………」



僕は、男の血が続く先を、住みかと予想される洞窟を見据えた。





「私が行く。二人は彼を!!」


「いや、僕も行きます」




僕は、洞窟から視線を逸らさずに言う。








「いや、でも!!」




僕は引き下がらない。




「一人より二人でしょ?」




僕は視線を動かさない。




「わかった。じゃ、行こっか」







僕はシフトレバーをさらに深く押し込んだ。








----------------------------------------------------------------------------------







僕たちは血の跡を辿って、洞窟付近に着いた。


見張りのゴブリンが何匹か伺える。


緑の小鬼という印象だ。一匹一匹は大したことがなさそうだ。









「なっ!」


入口が多数ある。普通洞窟って一つじゃないのか…







「時間がない…私が一人で入って一掃するから、ティーくんは、外に出てきたゴブリンをお願い。群れの規模からして、そう多くはいないはず…」







確実に、僕が入るよりもエリザさんが入った方が良い。


僕には、広範囲技がないのだから。








「なら、こっちは頼むね。火炎スキル:スーパーバーニング」














荒ぶる業火を纏ったエリザさんは、瞬く間に見張りのゴブリンを全滅させ、中へ入っていった。
















----------------------------------------------------------------------------------








ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン










爆発音が鳴り止まない。アルペッジョみたいだ。




ぞろぞろと至る入口からゴブリンが煙とともに出てくる。


僕は、ギアをチェンジする。ん?財や食料を持ち出してるやつもいる。











「な!あれは?!」





女性の髪を引きずりながら強そうなゴブリンが出てきた。


もう少し様子をみるつもりだったが、僕は飛び出す。












gちゃふぁあいいあ





目の前のゴブリン二匹を、膝を使った回し蹴りで吹っ飛ばし、僕は駆ける。


脳と体がより強くシンクロする。


エッジの効いた蹴りを放ち、ゴブリンを転がす。


ベリーダンスの要領で腰をくねらせ、顔狙いの斬撃を躱す。


















「…追いついた!」


僕は女性を引きずるゴブリンの背後に忍び寄り、あすなろ抱きを繰り出す。







「せりゃ!」


そのまま、膝カックンと体重移動で、ゴブリンを転がす。






Guheee


そのまま、顔面を踏みつける。何度も何度も。














ふと、音が止んだ。まさか…エリザさん……












先ほどまでのリズミカルな爆音がなくなったせいか、

ゴブリンたちは、一斉に落ち着きを取り戻しはじめた。












僕は、近くのゴブリンを飛び膝蹴りで倒し、八相構えで、女性を庇うように対峙する。


大丈夫、息はある。あとは逃げるだけだ。








Gyaaaa






入口から出てきた、剣士のようなゴブリンの合図で、じわじわと周りのゴブリンが僕ににじり寄る。









「ちゃんと、ボトムアップしてるじゃないか…」






シンクロ率が上がる。僕はハンドル操作で、怒りの感情を引き出す。









僕は、一番近くのゴブリンにシャイニングウィザードを放つ。




Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa




乱戦が始まった。心のブレーカーが上がる。


僕は、目の前のゴブリンにクイックパンチを撃ち込み、迫るゴブリンの頭を鷲掴みにする。




お、一回り大きいゴブリンが前に出てきた。


僕はマインドフルネス瞑想で、感情の脱馴化を図る。




Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa




大ぶりの攻撃を回避し、脇に鉄拳を三発おみまいする。


若干ふら付いたところで、右足、左足と断続的に蹴りまくる。


そのまま、ヤンキー蹴りを入れ、背後のゴブリンに後ろ蹴りを放つ。




うん?背後?しまった!!










僕は、急いで女性の姿を探す。





「くそっ!!」


何匹かのゴブリンが群がっている。


僕は、迫りくる大柄なゴブリンの眉間にドロップキックを極め、

周りのゴブリンの顔を爪でひっかき、駆け出す。




右から飛んでくるゴブリンをクイックキックで撃退し、

左から来るゴブリンにはライダーキックを。


正面のゴブリンは、猫パンチと体重移動によるフェイントで躱す。





目の前にみえた。もうすぐだ。

頭上から来るゴブリンにヘッドロックを入れた僕は…………











突如、迫りくる鋭い剣技を視界が捉えた。








ガキン、ガキン









正直、危なかった……


咄嗟の居合切りが間に合ってよかった。




僕は、錆びてるせいか、貝だか、羽根だかが付いた剣を構える。


この時期はきっと換毛期なのだろう。




心体が連動する。全身から湯気が沸き上がる。




僕は、感情の歯車を噛み合わせて叫ぶ。









「さぁ、俺の趣味は通用するか」




















----------------------------------------------------------------------------------







ガキン、ガキン、ガキン、ガキン








剣と剣が火花を散らせる。







やはり、素人剣術じゃこんなものか…


僕は、フラダンスの腰の動きで、剣撃を回避し、鍔迫り合いに持っていく。









「うあああああああ」



なんという力だ。このままでは……





僕はインレーを吐き出し、ゴブリンの視線を逸らせ、

空いた手で五月雨にボディブローを放つ。





ぎゃtdf





僕は、剣を奪い、二刀流で周りのゴブリンたちを蹴散らす。







「いか、せるか!!」







僕は、サルコウジャンプで接近し、女性を救出する。











ガキン、ガキン


どうやら、ゴブリンの剣士 ゴブリンソルジャーの数が増えてきたみたいだ。


ゴブリンソルジャーの猛攻に、剣をクロスさせるも、錆びた剣が折れてしまった。





僕は、左右での重心の違いを利用し、ゴブリンたちの攻撃を回るように回避する。




「出りゃ!」




僕は、ジャイブの要領でターンを決め、ベビースワイプスの要領で足払いをしかける。


さらに、前掃腿、そして後掃腿へとつなげるが、すべて躱されてしまう。





「っ!!」






やはり、このゴブリンソルジャーには、素人格闘術じゃ通用しない。




僕は、鍔迫り合いに持ち込み、耳元で大声を出す。




ぎゃtdf




そのまま脛を蹴り、ヘッドバッド。


振り向きざまに、フォロースルーを意識した振り抜きで、ゴブリンの首を飛ばす。




すかさず、剣を奪い取り二刀流の構え。


そのまま、トリプルアクセルの要領で、周りもゴブリンを片付けるも……




ガキン、ガキン




僕の回転斬りは、ゴブリンソルジャーに止められてしまう。



「そうだよな!!」




僕は、耳元で高い音を出す。


そして、グリップエンドを握り、脱力。


怯んだゴブリンソルジャー目掛けて、遠心力を加えた一撃を放つ。






Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa

Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa

Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa、Gyaaaa







「…きりがない……」







僕は、左八双の構えを取り、叫ぶ。















「うたあああああああああああああ」


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