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2-3 白霊草を求めて




「もう、遅いですよ。もう!!」




怒っていても、どこか言葉にホスピタリティを感じさせるのは、シーナだ。









「なるほど、実は剣士だったわけね」




そう言うのはエリザさん。大量の荷物を背負ってる。













「では、行きましょうか!!」





僕たちはエル村を出発する。


このインカ街に向かうのだが、どうも、シーナが採取クエストを受けてきたみたいだ。












「…白霊草?」


霊といえば、鈴木大拙のイメージだが……


白い、霊の、草。名は体を表すというが、果たして……









「そう、この先の森の奥に生えています!!」



なるほど、若干遠回りして向かうみたいだ…
















「っ!!ティーさん、モンスターです」







岩や貝を身につけたヤマセミ、クラッグバードが二匹。


背中に神籬みたいなのを乗せた牛、キャピタルカウが向かってくる。



この近くに、海でもあるのだろうか…










「やりますよ!ティーさん!!」




杖を構え、息を荒くしたシーナがそう言った。


よし、ここは三人で……いや、エリザさんが観察するような目を向けてくる。これはおそらく………






「よし、僕が盾をやるから、シーナが決めてくれ」



ここは、僕が前にでて、シーナが止めを刺すスタイルで。


僕は持ってないし、シーナの広範囲技に期待しよう。












「いや、私、攻撃技持ってないです」


「は!?」






訂正。僕が一人でやらないといけないらしい。


僕は、戦闘モードに思考を塗り替える。体が武者震いする。











まずは、手前の鳥だ。


僕は、軽くステップを踏み、大股で大地を蹴る。








「てりゃ!」


まず、鳥二匹を回し蹴りで牽制し、牛にタックルをかますも……









「っ何!?」


圧倒的な力の差で、僕は2メートルほど吹き飛ぶ。


しかもそこに、羽根が群れをなして飛んできた。












「あれは、フェザーショットです」


スキルマニアを自称するシーナがそう解説する。














僕は転がるように回避し、迫りくる牛の頭に膝蹴りを入れる。







「くは、痛い!」





あまりにも強い衝撃におもわずたたらを踏む。


しかし、僕は負けない。


想いに心臓が呼応し、心を燃やす。










「たりゃああああ」


僕は、素早いビンタで牛の脳を揺さぶり、そのまま首をロックする。








「うりゃあああああ」


そのままの状態で、開いた右手を乱打する。打ちつける。打ちつける。


心が燃え上がる。手が血まみれになる。それでも殴る。殴り続ける。









「ぐっふ…」


痛い。背中に羽根が刺さる。それでも殴る。殴り続ける。










「ぐっ……」


「ティーさん、もうやめて……」






シーナが叫ぶ。
















「っ!?ティーさん、震脚が来ます!!」




牛の足が振動する。



僕は、飛ばされそうになるも、剣を地面に刺すという力技で突破する。






「く、うら…」


負けない…熱が体中に広がる。









それぞれからしばらくタコ殴りにしていると、牛の背中が発光し始める。







「っ、まずい!!」


僕はすかさず、背中の神籬を蹴りつけ、ビームの軌道を変える。






Ziriiiiiiiii、ziriiiiiiiii、ziriiiiiiiii、





間一髪。冷気が頬を掠めていった。






「あれは、アイスキャノンです」


とんでもない冷気だ。ビームの軌道上がすべて凍り付いている。







「っち…」


距離が空いたのはまずいが、剣を手放さなくて良かった。








僕は、間近に迫ってきた鳥たちにハイキックを放つが、硬い羽で止められてしまう。


ああ、シーナが何か言ってる。どうやら、シールドウイングというらしい。






ならばと僕は、剣を振り下げる。もちろん、フラット面での叩き付けだ。


さらに、羽の隙間に狙いをつけ、剣を突き上げる。





ギャああ、gyaaaa








よし、あとは牛だけ。




「おわっと!」













僕はヤンキー座りで冷気のビームを躱す。






「これで決める…」









僕は、ギアをもうい一段階入れ、熱意のペダルを踏む。それはもう、ベタ踏みだ。









「うおおおおおおりゃあああ」


感情のマフラーが火を噴く。体中の血管が唸りを上げる。


牛も吠えながら突進してくる。


僕は、歩幅を細かく刻み、タイミングを合わせる。





3、2、1





「ここだ!!」


グリップを短く持ち、力任せに柄の部分で頭部を殴った。








「………」
















そして、僕だけがそこに佇んでいた。







































「…まさか、本当にスキルも魔法も使えないなんて…」





「私は、私は助けようとしたんですよ!!でもエリザさんがこれは必要なことだからって……」





「いやいや二人とも、そのセリフはさっから何度も聞きましたよ。だから気にしてないって言ってるでしょ」






僕としても、水準を知りたかったから別に構わない。


でも、かなりボロボロだ。あの鳥みたいなのがE級で、牛がD級。


とりあえずスキルだ。スキルが欲しい。


しかし、自称スキルマニアのシーナでさえ、取得の原理を知らないらしい。





ちなみに魔法だが、ちょっと厳しそうだ。


シーナに回復魔法をかけてもらった際に、詠唱を聞いたが、全く理解できなかった。


一応、シャドーイングしてみたものの、耳に入らなかった。


やはり、スキルの詠唱ほど簡単ではないらしい。











「ん?こっちが森ですね」


僕たちは、道を外れ、森の方へ向かった。












「それにしても、よくスキルも魔法もなしに勇者と渡り合えたわね」




「遊ばれてただけじゃないですか?ほら、僕が弱すぎて…」




「なるほどね…ちなみに、勇者の武装は本気を意味するって知ってた?」







げっ!なんか怪しい目を向けてくる。


さっきから、こんな問答の繰り返しだ。


あれはレイサのおかげで、偶然、上手にマウントを取れたからだ。


次はさすがに対策をしてくるだろう…







「まぁ、丸い卵も切りようで四角と言いますし……」


「…?それってどういう…」


「もー、ほらほら二人とも!着きましたよ!ここが入口です」








エリザさんと付き合いが長く仲の良い?シーナはなんとも思わないかもしれないが、僕はずっと果ていない気まずさを感じている。







ここまで、何度かモンスターと遭遇し、僕が一人で戦わされた。


その度に、何かを探る目を向けてくるのだ。たまったもんじゃない。









「ん?他にも誰かいるようね…」





エリザさんの視線の先にはまだ新しい足跡が続いていた。





















まだ、温かい!というやつかな……




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