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13-6 結婚活動


拝啓、マッサンカー様

秋麗の候、そちらは元気に過ごしていますか?私は今、富士の聳える地で仕事をしています。早咲きの桜に貴女を重ねて…







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














恋愛はただ性慾の詩的表現を受けたものである。少なくとも詩的表現を受けない性慾は恋愛と呼ぶに値しない。


芥川龍之介






ああ、うまくいかない。

今日もうまくいかない。

明日もうまくいかない。






今日もこの後、婚活が待っている。

だから、仕事はできるだけ巻くのが俺の信条だ。




「老後のための結婚は失礼だと!?何なんだよ!あのクソアマはよ!!!」




くそくそくそくそ!手元の絶縁状を見て溜息が鼻から漏れる。トークが四角四面?知るか!?なんだよ…エンパシーとかシンパシーって…全く意味がわからん!恋愛の具体的行動がセックスなのでは?結婚コンサルの人には、樹木婚を勧められる始末。。。。。、。




ほんとはこんな人工的な恋なんてしたくない!!!わざわざ人を好きになりに行くなんて終わってる!!!好きってそういうものじゃないだろ!!!眼高手低?好きになれるレベルの女性からは好かれなくて、好きになってくれるレベルの女性を好きになれない?



否!!!!!!

結婚相手の条件をできる限り合わせた二組を作るのが相談所の仕事だろ?だから、こちらも妥協をしていない!それだけだ!!!





そういえば、同じB級のアドナに、Are you going steady with anyone ?とか言われたけど、言葉の意味がわからん!どこの言葉だよ!






小洒落た商店街を通って、空オーケストラ店を右に曲がる。会社更生法で畳んだ工場をさらに曲がる。


見慣れた毎日。見慣れた帰路。愛を奏で合う小鳥に、死体蹴りしてる輩。酒場浴に興じる武人肌な男達を見下げて、世を儚む。相談所から帰るいつものルーティンだ。





「ああ…早く婚活辞めて、結婚してぇな…」



神は自分で叶えられる以外のことしか叶えてくれないらしい。なら、己の力で叶えて見せろというのか?今日も相談所のお姉さんから頂いた、反省点を反芻しながら足を動かす。





「脱皮できない蛇は死ぬだけ…か…蛇だって、何度も脱皮が訪れるんだ…婚活を乗り越えなければ、俺は…」




煙草が切れてるのを確認した俺は、空箱を握りつぶして溝に捨てる。ああ…何でうまくいかないのだろうか。大人になるのも枯れるのも、女の方が早いのはわかる。だが、男だって焦るんだ。きっと、できると思うから悩んでいるんだ。過信しすぎ?いやいや。人はしなくないことで悩まない!欲しいという気持ちが少しでもあるから悩むんだろ?




「だったら、俺はいやいや婚活をしてるのではなく、願望に従ってるに過ぎない。」





〝不倫は恋愛じゃないでしょ?何勝手に本気になってんの?〟



これでも、一瞬だけ恋愛をしたことはある。

向こうからノーカンにしてくれと言われたから、カウントしていない。ただわかったことは、浮気する理由はどんなに聞いても理解できないってことだけだ。そういえば、事後ラーって何だ?





「バーってのはな、口説くところじゃねぇ!

口説いた女を連れてくる場所だ!!!」


「っ!?すいません!退いてください!」




ハプニングバーから、若い男が逃げるように出てくる。どうも、男というのは美人の危険性を見抜くのが下手らしい。てか、どエロいな!キャッチの娘、!!!あのバーには、母娘丼婚?をする人がいると噂で聞いたことがある。



「あ、落としましたよ?」


「す、すいません!では!!」





拾ったギルドカードを渡してあげると、男はそそくさに逃げていった。ギルドカードが何年も更新されてないなんて、訳ありすぎる。犯罪者と関わる気はない。男のことは、すぐに忘れよう!今は職員じゃないから!




今日、相談所で学んだことをまとめると…


好きな人の好きなものを知るというのが恋愛の醍醐味らしい。思わずスクショした。

13歳以上であれば性行為自体に違法性はないとのこと。もちろん、ちゃんと交際してる二人であればこそ。

2人の、最大公約数を見つけていくことが求められるそうで…




「ふむふむ!豊作だな…勉強になるな」


「相変わらず、湿気た顔してるわね!ジャック・ジャコビマン!!!そうやって下を向いて歩いてると、私の可愛い顔が見えないぞ?」




げっ!!!性悪女!!!!カワノ・ミサキ!

何でこんなとこに!?





「あ、ジャックさん!!こんばんは!」



「げっ!!!性悪女!!!!ミサキ・カワダ!!何でこんなとこに!?」


それに、不気味な〝娼年も〟!!!!!

アラプトダス・クモリン!!

プレイボーイという噂は聞いている!







「心の声、漏れてるわよ…どうせ、今日も婚活失敗したんでしょ?まぁ、男ってのは可愛い女の子に注がれた酒は飲み干す物だからね〜」



げっ!?飲み過ぎてゲロってドン引かれたことに気づかれた、?なんで?この一瞬で…こいつ、マジで〝冒険者に向いてない〟な…



「振られてからが勝負でしょ?帰ってママに、ディープ・スロートでもしてもらいな?」


「性豪な女め!!」



こいつら、プライベートに踏み込んでくるくせに、〝アドバイスは的確〟だからムカつくんだよな〜。恋愛慣れし過ぎだ!!優せてるな〜。冒険者なんかより、よっぽど相談所に向いてるぞ!





「どう?想像してたよりもずっと重かったでしょ?」


「え?」



重い?なにが?



「いや〜、なんでもな〜い!」



いやいや!なんだよ!?教えろよ!!尻軽め!






「女は男よりも言葉のテクニックに弱い生き物なのよ!!今日も教えてあげるから、ご飯奢りなさいよ?」


「げ、また奢りかよ…お前さ、俺の裁量でB級になれるか決まるのわかってる?」



「あ、僕も行きま〜す!!」





いや!お前も来るんかい!!!!!












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜パームレストラン・七対子〜







オレンジフィンレオパードトリムプレコ、オウギバト、薩摩翼竜、みかん鯛、ウバザメ、アクティオンゾウカブト、タブンガガ、アンハングエラ、ニセハナマオウカマキリ、小田巻蒸し、ゴールドラッシュ、紅葉汁、水芭蕉、マウンテンフェルドランス、ボリビアンブラックスネーク、リリパットフロッグ、ブラックマンバ、ハンドウイルカ、パーティーバーレル、アサギマダラ、キャロライナリーパー、ピットブル、トラバーチン、蔵六、ビルカ、チチャ、アカメカブトトカゲ、モトイカブトトカゲ、ハシビロコウ、タチヨタカ、インカアジサシ、セイロンガマクチヨタカ、エトピリカ、ニジイロコバシハチドリ、オオグンカンドリ、アカサカオウム、トキイロコンドル、フクロウオウム、ホオダレオウカンチョウ、キンケイ、ヒゲガラ、ハイイロペリカン、くちなわ、うわばみ、ヨーロッパウナギ、アルゼンチンテグー、フトアゴヒゲトカゲ、ニイニイゼミ、ウデムシ、アマミサソリモドキ、ヒヨケムシ、ガストロディアアグニセルズ、ミツクリザメ、シュクメルリ、コモリザメ、マンチニール、




「満漢全席かよ…」



まるで絶景だな!

というか、食べ物じゃない物も混じってないかい?




「初デートに適してるのは映画よりも旅行の話で…ねぇ?聞いてる?」


「あ、すまん!なんだった?男は結婚しても女を求めるものだってやつか?」


「…………………」



カワダの目が怖い。

クモリンはずっと黙食しるし…




「というかさ、恋愛って倫理観を無視してするものじゃないのか?」



「はぁ…あんたね……」



カワダは肩を落としながらも、パームワインを豪快に呷る。A専の俺からしても綺麗な顔立ちしてるし、今すぐ個握に移りたい所だ…




「そもそも私は、恋愛をコスパで見てないから、ジャックの気持ちはわからないわ!コスパだ倫理観だと何の、そんなの、いちいち気にしてたら恋愛なんてできるわけがない…恋愛なんて、抱いて抱かれてなんぼでしょ?」




ダージリンティーを飲み干しながらも、カワダの口数は全く減らない。




「というかさ、ほかのチームの進捗具合どうなってんの?私たち、結婚詐欺師捕まえるクエストで何日も苦戦してるんだけど…?」



「クエストなんて脳をギルドにチューンナップされた者が生きる屍のようにやるものだ!そこまでして、B級になりたいか?」




冒険者なんて、そうそう、組織に属するという点では会社員と変わらん。会社員はな、日々解けない問題と直面し、戦い続けなければならないんだ!!会社が密集している異世界があるらしいが、行きたくもないわ!!!




「あんたさ、夢ないこと言うわね!!!!!リスロマンティックなの?




「死恐れず断じて行えば鬼神もこれを避く!!」




「カワダは恋愛精通者だし、クモリンは難しい言葉使うし、お前ら何なの?淫靡な関係なんですか?赤い糸なのか?てか、赤い糸って、目に見えないんだって…見えないのに着色してる意味あんの?」


「赤い糸っていうのはね、花は赤いうちに…」


「ねぇ?そこのお兄さん?」





ん?巻き髪ハーフツインの少女?

一人か?ん?氷嚢?こいつ、怪我してるのか?…なんとも厭世的な身なりだな…



「どうしたんだい?お嬢ちゃん?」


「マッサンカー知らない?」



マッサンカー?アイドルか何かか?



「そう…知らないのね…お姉さん達も知らない?」


「ごめんね!ここじゃ、ググれないし、タグれないし…」


「ペットか物の名前か?朋党ってとこか…ごめんね!ちょっと僕もわかんないや」






「すまんな!というか、お嬢ちゃんは誰だ?」



こいつ…武骨だな



「名乗っても無駄…こんな辺境だと、新王の名だろうが、すぐに忘れ去られる…」


「お、おう…そうか…力になれずにすまんな!その…マッサンカーだっけ?見つかると!??ん?マッサンカー?」



ん?マッサンカー?



ん?



確か、さっき拾ったギルドカードに記載された名前!?



「あ、そうそう!さっき拾った…」


「義を欠いたな?人間!」


「委細承知した!空間スキル:バイオスフィア!!」




なっ!??













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