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12-7 ブレイズマテリアル

人とはなんだろうか?



今日もスーツを着たゾンビ達が電車に揺られている。いつからか、目の前で情緒をひけらかす彼らを人とは思えなくなった。



なら、彼らはなんだ?目の前に鉄の板を触る彼らはなんなんだ?魂が天国へ行けない不幸な死者?満員になった地獄から現世へと彷徨い歩いてきた亡者?神の最高傑作?大昔に行われたある実験によると、神はもう人間に興味はないと言ったらしい。



なら、なんだ?この人型のやつらは?


私はなんなんだ?人間?人外?


正直、人もゾンビもロボットも変わらない!


見た目も行動も違う彼らはなんなんだ?


善人?悪人?



いや、善も悪もない!脳機能というプログラムに沿って動いているだけ。


まぁ、ロボットと人との違いは、電気信号の細かさ、脳機能のキャパ、多様性グラデーションの幅ぐらいなものだ。


性悪説ではなく、性弱説だという話はあるが、人と弱さや自分本位さはフォールズコンセンサスによるものだ。



つまり、人間機械論はまさに言い得て妙なわけだ。人は神に作られ、愛された機械、神にデザインされ、プログラミングされたロボットなわけ。


だってそうだろ?だから全身を回る血から鉄の味がするんだろ!それがロボットである証拠だ!


なら、プログラミングと教育は一緒。

生まれてすぐの初期状態に何をインストールするかによって動きが異なる。


よく赤ん坊の心理を、乾く前のセメントと表現するが、コアや脳機能でも同様だ。







人は、「今、この瞬間の行動に関係のある事柄」だけを選び、その他の要素を意図的に無視する(つまり、必要なことだけを枠=フレームで囲んで、その範囲内で判断する)けど、有限の処理能力しか持たないAIやロボットは、現実世界の無限の選択肢を人間のように捌けないから、ロボット工学の三原則を守るためにあらゆる可能性を検討しようとすると、実在するコンピュータでは計算能力が追いつかず、フリーズのような状況に陥ってしまう。つまり人は……え?




まぁ、あれだ……私はそれでも人で在ることを強く推奨する。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





インフルエンザでなきゃ恋さ…症状は同じだ…



スヌーピー












「炎魔法:ブレイズアロー・レイン!炎魔法:ブレイズアロー・ドライブ!炎魔法:ブレイズアロー・スライス!」



「拳魔法:猛毒拳・連打!」




天上より降り注ぐ大炎の大雨。

そんな炎天下に対し、魔法を拳に纏う漢は白い牙を見せて大きく笑う。震えるな!震えるな!そう念じるも、拳は笑笑と言うことを聞かない。だが握り続ける。挙げ続ける。進み続ける。






「漢ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



燦々と降り注ぐ、夥しい炎矢に拳を繰り出す。数が多い!だが負けない!!

背中に〝漢〟を掲げた拳は、怒涛の如く全てを穿つ。しかしこのブレイズアローは何て威力なんだ?普通じゃない。身体中の魔力が遡行しそうだ。


あまりの熱さに腰の鉄亜鈴は溶け、噛み締めた煙管は爛れ、錫杖なんて先の部分しかない。汗が汗腺から出る前に蒸発する。





「漢ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!拳魔法:怨恨の拳」


「炎魔法:ブレイズアロー・サザンクロス!炎魔法:ブレイズアロー・スネーク!炎魔法:ブレイズアロー・ダークネス!」




左拳を十字に焼き裂かれる。

まるで蛇のように歪曲する炎が右拳に絡み付く。闇を纏った炎に感覚を破壊される。





「漢ぉぉぉぉぉぉぉ!!拳魔法:ジャスティスフィスト!!」


「炎魔法:ブレイズアロー・スムース!炎魔法:ブレイズアロー・フラット!炎魔法:ブレイズアロー・ラフ!」





全てを、全てをこの魔法の拳で撃ち返す。

楽な戦いなどない!そんなことはわかっている。いや、わかっていた。理想と現実に狭間から逃げ出そうと只管に拳を魔法で動かす。

凛烈な悪寒に襲われながらも漢は決意を込めて全てに振り抜く。こんなにも追い詰められたのは丁年以来だ。決して膨大な魔力があるわけではない。ただただ〝上手い〟のだ。魔法使いに求められる技量、そして複数のスキルホルダが掛け合わさって未知なる魔法を発現させている。ほんとに、幹才な父親そっくりだとしみじみ破顔一笑してしまう。







「炎魔法:ブレイズアロー・マッセ!炎魔法:ブレイズアロー・エアー!炎魔法:ブレイズアロー・クロス!」



複雑な軌道炎を握り潰し、炎風を纏った矢を弾き、十字の炎を叩き飛ばす。





「水魔法:ウォーターアロー・オーシャン!炎魔法:ブレイズアロー・ローリング!炎魔法:ブレイズアロー・ウイング!」





だが、次第にそんなことも出来なくなってくる。




「くそぉぉぉぉ!移動魔法:ガラスの靴!」





移動する先を見据えていたかのように、ギロリと眼球が動く。その晴天を思わせる蒼い瞳。間違いない、〝神が宿っている〟。

魔法に選ばれた才能、そして神に選ばれた才能。正確性、選択、生成、まるで機械。いや、まさしく神だな。






「炎魔法:ブレイズアロー・スラッシュ!」


「筋肉魔法:メタルバイセップス!」




まずい!そう感じるよりも先に、火花と共に体勢が崩れる。






「トドメだ!!!炎魔法:ブレイズアロー・サンダー!炎魔法:ブレイズアロー・フリーズ!炎魔法:ブレイズアロー・ブレイズ!炎魔法:ブレイズアロー・ブラスト!炎魔法:ブレイズアロー・インビジブル!」





「拳魔法:鳳凰拳・殴打!」




無理な体勢だろうが、殺意の荒波に反応して身体が動く。拳を繰り出していく。魔法で間に合わない分は…



「拳スキル:碇拳!蹴りスキル:流星脚!!闇スキル:暗斬!!」





漢には魔法使いという矜持を捨ててでも掴みたい未来がある。だから負けられない。そのために普く矢を撃ち落とす必要があるのならならそうしよう。獄炎に身を焦がす必要があるならそうしよう。何があっても零さない。




「炎魔法:ブレイズアロー・ヒート!炎魔法:ブレイズアロー・ボックス!炎魔法:ブレイズアロー・スクエア!炎魔法:ブレイズアロー・アロー!」


「光魔法:エンジェルドライブ!」





漢は火の魔法矢を瞥見し、

必殺の拳を添えて、屈託な笑みを浮かべる。

ここまで才能を見せつけられると忸怩たる思いを感じる。隔靴掻痒な感情が残っていた自分に驚嘆を隠せない。





「ソロソロこの魔力二もナれテキタところだ。炎魔法:ブレイズアロー・フレイムウィング!」




ああ、ドラグニア・マタイ…お前の息子は間違いなく、お前の息子だ。アンニュイでニヒルで、エフォートレスな雰囲気で、どこか遠くを見ている。俺のことなんて見ちゃいないだろ?何自分の魔力に酔ってるんだ?目を覚ましてやる!




「炎魔法:ブレイズアロー・テンペスト!」

「拳魔法:ビックナックル!」




〝追うのではなく待つのが魔法戦闘の基本だ〟




「炎魔法:ブレイズアロー・サイクロン!炎魔法:ブレイズアロー・サークル!」


「拳魔法:コブシガード」






〝楽しみはとっておくのがコツだ!〟





ほんと、お前の息子だな






「exスキル:アパルトヘイト!」


「炎魔法:ブレイズアロー・フェンリル」






〝俺に息子が生まれたら?う?そうだな…ああ、撓んでほしくないな…もっと自由に誰よりも自由に生きてほしい…その手段は魔法じゃなくて良いと思っている…〟







「炎魔法:ブレイズアロー・ドラグーン」

「拳魔法:炎の拳・龍撃」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





人とは何か?

人と人型に違いはあるのか?


ゾンビを死体と捉えるのならば、

人との違いは温度ということになる。


もちろん、人と機械の違いも温度だ。


それは、肉体的及び精神的な温もりを指す。



人は常に老いている。

体が老いるということは、五感が鈍っていき、やがて感覚がない=死んでいる状態となる。つまり、五感がないというのは死んでいるということだ。五感が薄れていくのと死に近づくのは同じ。


心が老いるということは、精神が成熟するということ。感情が薄れ、やがて何も感じなくなる。感情を感じられず、感情が生まれず、直情的になれない。心と体がリンクすることもない。何も感じないということは心の死だ。



ん?感情がなくなり、感覚がなくなるということは、ロボットになるということ?


つまり、

機械は死んでる存在で、人は生きてる存在?



老いるイコール腐ると考えるなら、ゾンビも機械も同義。人はゾンビに近づいていくんだ。ならば、ゾンビとは人が死に近づいた存在。逆説的にも正しい。





人生100年時代だけど、

100生きられたら十分?一体、どれぐらい生きられたら十分だと言えるのか?



人の命の価値はその長さではないが、

人はいずれ死ぬと思うと、嘲けてしまう。



人は死んだらどうなるか?

それは自分で決めて良いそうだ。

自分の信じる通りになるらしい。死へのストレスを緩和する一つの手だと思う。


天国はあると信じるのもよし、輪廻転生を提唱するのもよし、酸いも甘いも必死に生きてきた先が無で在るなんて可笑しいと思うのもよし、私は決して死なないと決めるのもよし、生き様によって死後が変わると自慢するもよし、



人には生きたい、死にたくない!という本能が備わっている。だが、人には必ず死ぬという定めがある。






そんなことを考えながら僕は今日も、

鉄の蛇から、鉄の箱を運転するロボット達を眺めている。

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