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敗刻霊の報酬

レビューを書いて頂けたのにまた1ヵ月以上更新しなかった駄目作者です。

こんなペースで申し訳ありませんが、楽しんでいただける様に努力させて頂きます。

「凄いな……」


 小人達に歓迎され、豪華で、それでいて繊細な料理を振る舞われた翌日。

 俺達5人と勇者である綾田さんは館の屋根裏へと案内され、そこから続く大樹の先を見上げていた。


「確かに幹も相当大きかったけど……中層はもっと大きいのね」

「でもこんなデカい木、昨日歩いている時は見えなかったけど……結界で隠してたのか?」


「料理、建築、魔法……小人はどれをとっても凄まじいですね」


 だが、魔法による直接的な攻撃は苦手らしく、集落にやって来る魔物も基本的には撃退のみらしい。


「更に上方には、鳥型の魔物が絶えず襲ってくるらしいけど」

「まあ、大丈夫ですよ! さあ、行きましょう!」


 流石勇者というべきか、綾田さんは元気そうに先陣を切って歩み出した。

 その後ろをファーレイ、マァタナ、俺、レイカーナ、ペルケの順番で進んでいく。


「皆さ~ん! お気を付けてぇ~!」


 執事服の小人に手を振り返しつつ、木登りを始めた。と言ってもこの大樹もまた小人の手が行き届いており、ある程度の高さまでは階段で迎える様になっている。


「一応確認しておくけど、今回は派手な攻撃や魔法は無しだ。この集落が無闇に目に付くのは駄目らしい」

「はい、承知しています」

「まかせて」

「心配性ですね? 大丈夫ですよ!」


 間違いなくこの世界最強戦力が集結してるんだからそりゃ心配にもなる。なんだったら俺の召喚獣達は喧嘩が絶えないし……


「目的の枝は1人3本だっけ」

「安心して下さい! どんな大きさでもアイテムボックスに入れれば――」

「――闇魔法で持ち運べる」


 まあ、普段からそれで運んでるし問題ないか。


「……」

「マァタナ、言い方……綾田さん、自分達の分はこちらで運ぶから問題ないですよ」


 俺達と綾田さんは他愛のない会話をしつつ、上方へと向かった。


 進めば進む程枝の密度が増していき、最初の頃はうっかり下を見て恐怖を感じていたが螺旋状に伸び続ける幹を登っているといつの間にか隠れて見えなくなっていた。


「結構高いな……」

「大丈夫ですよ、コウジ様。万が一の時は私が受け止めますので」


「平気だよ。確か、小人さん達がある程度の高さにクッションの魔法を用意してるから」


『……』


 綾田さんの言葉に多少安心したけれど、後ろから別の不安に睨まれている気がする。

 それと目を合わせない様に歩いていると、突然皆の動きが止まった。


「コウジ様、後ろへ」

「え?」


 ファーレイの忠告を聞いて彼女と同じ方へと視線を合わせると、こちらに嘴を向けてやって来る魔物の群れが見えた。


「あれか!?」

「迎撃しましょう」


「ホーリーブラスト!」


 誰よりも早く光の魔法を放った綾田さん。

 恐らく規模も威力も抑えているんだろうけど、その攻撃だけでこちらに向かっていた鳥は全てその姿を消した。


「うん、撃ち落とせたかな」

「……強い」


 少なくとも、一緒にいる間は綾田さんに任せておけば問題なさそうだ。だけど油断は禁物だ。


「枝の先までもう少しだ。気を引き締めて行こう」


 それから鳥の魔物に一度襲われて以降、全然魔物がやってこなかった。

 漸く上層に到達した俺達の足元には既に小人製の階段は無く、後は適当な枝を切るだけだった。


 なので俺は枝の分かれ目で待とうと提案したのだが――


「――コウジ様!?」


 突然やって来た魔物の群れ。

 どうやら弱い俺が孤立したのを待って突撃してきた様だ。


 同じ様に真っ先に反応した綾田さん、そしてファーレイが撃ち落とそうとしたがその内の1発同士が相殺してしまい、俺の近くまで迫っていた魔物をマァタナが倒したのだがその衝撃でうっかり枝を踏み外してしまった。


「だ、大丈夫……助かったよ、レイカーナ」

 

 間一髪、レイカーナが俺を掴んで支えてくれた。


「よかった……っ!?」


 しかし、徐々に高度が下がっていく。

 そう言えば、小人達が木の上には飛んで行くのが難しいとか言ってたけどこれが原因か。


「レイカーナ、近くの枝に!」

「うん!」


 辛うじて少し下がる程度で木に戻って来れたので、すぐに上に向いて皆に声を掛ける。


「おーい、俺達は大丈夫! 直ぐに戻るから先に枝を切っててくれ」

「ですが……」

「また落ちたりしたら日が暮れるから! レイカーナもいるし問題ないよ」


 返事を待たずに俺とレイカーナは歩き始めた。

 これ以上精霊達と離れたら召喚者の俺の元に戻ってしまう。


「レイカーナ、ありがとう」

「これくらい、当然だよ」


 返事を返しながらレイカーナは俺の前を歩いてくれた。


 最近の彼女に元気がない事、実は俺も知っていたのだが……彼女との接し方をイマイチ理解できてないから放置していた。


「そうだよね……急いで助けなくても、遠くに行けば直ぐにコウジの元に戻れるもんね」

「いやいや、あのまま落下し続けてたら俺気絶してたから……本当にありがとう」


 俺の礼に彼女は笑みを浮かべてはくれたが、やはり何処か浮かない顔をしている。

 他の精霊達に聞かれたらまた面倒な事になりそうなので、励ますなら今しかない。


「レイカーナ、その――」

「――私って、必要なの?」


 顔は見えなかったがその声色を聞いて彼女が如何に思い詰めているのかは、察してしまった。


「……も、勿論必要だ! 必要に決まってる!」


 だから慌てながら、今にも消えてしまいそうな彼女に俺は何とか言葉を返した。


「ファーレイがいても?」

「ああ!」

「マァタナがいても?」

「勿論!」

「ペルケがいても?」

「絶対必要だって!」


 彼女がどうして必要なのか。俺はそれを言葉にしようと口を開こうとしたがその前に彼女の指が止めた。


「そうなんだ。なら、良かった」


 必死に話そうとしていた俺とは対照的なまでに落ち着いた様子のレイカーナに戸惑ってしまったが、彼女に手を掴まれると同時に上へと跳んで先落ちた場所までやってきた。


「よーし。じゃあ切っちゃおうか!」




 大樹の枝を切る私の頭の中には先のコウジの言葉が何度も何度も響いていた。


『勿論必要だ』


 彼は私が必要なんだ。


『絶対必要だって!』


 誰がいても。


 私が――私だけが。


 なら、私も自分に出来る事をしないと。


 何時まで馬で移動する旅なんてしないで、ドラゴンになった私の背中に彼を乗せてあげればいい。

 それをしなかったのは、コウジがそんな目立つ移動手段を使いたくなかったからだ。


 でも、この枝の対価に――


「――嬉しそう」

「うん、そう見える?」


 マァタナに声を掛けられた。

 けれど、今はちょっとだけ可哀想に思えてしまう。コウジに必要なのは私だけなのに。


「枝、何に使う気?」

「秘密」


「……」


 確かに溜め込まれている魔力の量も闇の扱いも彼女の方が上だけど、私は暗黒霊じゃない。祖竜霊だ。

 もう彼女なんか、怖くもない。


「……コウジは魔王になる」

「そうなんだ。ならきっと、凄い竜王なんだろうね?」


『……』


 可愛い挑発。あんなに優しい彼が魔王になんてなる筈がない。それは暗黒霊である彼女自身が一番理解している筈なのに。


 コウジは闇の魔力を溜め込みにくい体質を、いや在り方をしている。

 例え怒りや憎しみの様な負の感情を抱いてもそれが長続きしたりしない。


「私がこの世界のどんな場所にもコウジを連れて行ける翼になる。貴方達には決して出来ないでしょう?」

「――」

 

 暗黒霊は黙って私を睨んだけれど、全然怖くない。


「おーい、レイカーナ、マァタナ! もう終わったか?」

「うん、今行く!」

「……行く」


 コウジに呼ばれてそちらを見ると、神聖霊と刻敗霊が既に隣に立っていたけれど私を見てくれているのが嬉しくてあまり気にならなかった。




「おかえりなさーい!」

「おかえりなさーい!」


 帰ってきた俺達を小人達が出迎えてくれ……くれたのだが――


「――ちょ、ちょっと休憩させてぇ……」


 疲弊し切っていた俺は館の入り口に置かれていたベンチに寝転んだ。


「どうしたのー?」


「レイカーナ! 貴方のせいですよ!」

「えぇ? でも、これが一番早かったんだからいいでしょ?」


「ふぁ、ファーレイ……大丈夫、うん。俺は、大丈夫だから……ちょっとだけ、寝かせて……」


 皆が枝を切った後、突然レイカーナが楽に帰る方法があると言い出した。

 

 どんな方法かと俺が聞くと、彼女は突然俺に飛び掛かって抱き着いて――2度目の自由落下、しかも今回は屋敷のある高さまで一直線だったから俺の精神は擦り切れそうだった。


 や、レイカーナが抱き着いているので絶対に助けてくれると言う安心感はあったが、それでも身動きが取れない程に密着されたまま、地面が刻一刻と迫って来るのは心臓に悪すぎる。


「だらしないなぁ。勇者や他の皆も周りにいたのに」

「……俺、今更だけど一般男性だったなぁ」


「と、兎に角交冶さんはちゃんと部屋で休んで下さい!」


 確かに、こんな所で寝ていたら小人達にも迷惑がられるだろう。俺は立ち上がろうとしたが、同時におつかいの件を思い出した。


「そうする……あ、そういえば枝を持ってきたから、なんでも用意してくれるって話だったよね?」

「そうです!」

「ペルケの分は俺が頼んで良いって言われたんだけど、良いかな?」


 執事服の小人がペルケの方を見ると、彼女は黙って頷いた。


「はい、勿論!」

「じゃあ、ペルケに服を作ってやってくれないかな?」


 本当はサプライズにするつもりだったんだけど……あの落下で気力がなくなった上にこのまま寝てしまったら完成が遅れてしまう。


「……こ、コウジ様……?」

「精霊様にお召し物を、ですか?」


「うん。きっと彼女なら俺が断っても俺の為に願いを使いそうだったから。

 それに、1人だけずっとボロボロな格好なのは流石に……あ! もしかして、ペルケは嫌だったり……?」


 よくよく考えたら本人に先に要るかどうか聞いておくべきだったな。


「い、いえ……で、ですが……良いのですか?」

「これから町を歩いたりするだろうし、しっかりとした服は必要だ」


 馬車の中にある服をあげても良かったが、その……胸が流石に目立ちそうなので、此処で仕立ててもらった方がいいだろう。


「精霊様の御召し物! 勇者様の物と合わせて、全力で仕上げさせて頂きます!」

「もっちろーん!」

「やってやりますよー!」


 小人達も盛り上がってしまった様だ。


「……っ! そ、そろそろ倒れそうだし……部屋に戻ってるから。それじゃあ……」


 逆にベッドに倒れたい程に疲れてしまった俺は、小人に連れられながら部屋に戻った。


 玄関の方から執事服の小人の元気そうな声が聞こえてくる。


「それじゃあ、精霊様のお願いを聞いていきまーす!」


 距離が離れて、それも段々聞こえなくなる。


「え……個別――ですか? 分か――――」


 ――ドアが閉じられ、俺はベッドに倒れ込むのであった。

気に入って頂けたら感想や誤字報告、レビュー等をお待ちしております。


なんかこの最後に色々頼む感じ、Youtubeのエンディングっぽいなぁ。

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