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祖竜霊との入国

1ヵ月以上経ってしまいました。最近は忙しいですが小説にもなるべく時間を割いていくつもりです。これからもよろしくお願いします。

 ドラクラムから隣国に向かいながら情報を集める旅。その先々で立ち寄った村はどこも大きな建物もなくお世辞にも裕福とは言えない住人達が暮らしていた。


 残念ながら精霊達に聞いても理由は分からないそうで、俺はこの国の治安が悪いのかもしれないと考えた。


「思えば、ドラクラムやサグラッドの人達よりも此処の村の人達は暗かったな」

「サグラッドは分かりませんが、ドラクラムは種族を差別しない場所でしたので交易も盛んでしたし、大きな街であっても住民同士の結束力が強いですからね。しかし、隣国が此処までとは……」


 俺は今一度手に持っていた地図を眺めながら、数日前に通ったドラクラムの関所を思い出した。


「地図を見ても、そこまで大きな国では無いみたいだしな……国境にこっち側の関所も無かったし、やっぱり貧しい国なのか?」


 だとしたら、あまり見る物も無いかもしれない。魔王の話を聞いても村人達はあまり知らないのか話したくない様子だし、長居すべきではないか。


「地図によると次は町らしいけど、恐らく村みたいな有様だろうな」

「結構大きいみたいですけど」

「まあ、期待しないでおこう」


 そんな会話をしていたが、その2時間後、遠目でも分かるほどに大きな町……いや、外壁が見えて来た。


「え、アレ?」

「ええ……みたいですね」


 予想外に立派な壁に囲まれていたので面食らった。随分と厚く、頑丈そうだ。


「これは……」


 だけど、同時に嫌な予感がした。

 城塞の様に強固な外壁、俺達は門へと向かった。町ヘの入り口だと言うのに、やたら物々しい兵士達が見張りをしているそこは余り人がいなかった。


「止まれ!」

「ここは剣源国“エスダム”。行商人か? 出身国と名を言え。それと、馬車の中身は我々が確認させてもらう」


 随分と強引だが、俺達は大人しく従った。積荷は軽量化の為に予めレイカーナの闇の魔力で収納していたので精々水や保存食と衣類くらいだろう。因みに、隣国の精霊だと知られていると面倒なのでレイにはフードを被ってもらっている。


「俺の名前はコウジ、こちらはレイ。旅人だ」

「旅人? こんな馬車で旅とは、随分な道楽だな」

「盗品ではないのか?」


 こいつら、イチャモンつけて押収するつもりか?

 俺が不快感に眉を顰めると、レイカーナが前へ出た。


「私達は神聖国“サグラッド”の王からの命令で魔王の調査をしている。手紙を」

「ああ、これだ」


 正直国が違うし、そもそも末端の兵士にこんな物を見せても通用するかどうか……


「ふーん、確かにこの印は神聖国の物だな……なら、通行税を納めて貰おうか」

「幾らだ?」


「銀貨50枚だ」


 銀貨50枚……ドラクラムだったら宿に10日間銀貨30枚で滞在出来たと考えると、どう考えても多いだろ。そう思ってレイカーナへ視線を向けると、彼女は黙って頷いた。


「高すぎるな……」


「あんたらは調査なんてまどろっこしい事をしてるかもしれないが、エスダムは総力を上げて魔王を倒すつもりだ。我が国は今、戦時中と大して変わらん。それ故にこの通行料だ。さあ、払うか? それとも出てくか?」


 なるほど……今まで通ってきた村も恐らく、税等の納める物が増えたせいで貧しくそして暗くなったのか。今はエスダム中がこんな感じだろう。


(町の中に入らなければ、物資の調達も出来ない。だが、この調子だと恐らく商品全般の物価も高いだろうな……そりゃあ、誰もこんな場所に入りたがらないよな……)


 考えた末、俺達は50枚の銀貨を払って町に入る事になった。


 備えはあるが補給はするべきだし、何処に行っても値段が高いなら何処で買っても同じだろうという判断だ。


(とは言え、そろそろ厳しいし何とかして路銀を稼がないといけないな)


 だけどそれは今じゃなくてもいいか。せめてこの町を出てから考えよう。


***


「高いな……」


 一泊18銀貨の宿の部屋で、俺はそう漏らした。町の人々に聞いて確認したが一番安全な宿だそうだ。


「まあ、ドラクラムだと私のおかげで安くなってたのもあるけどね」

「いっその事此処で緊急召喚でもして――いや、やめておこう」


 もう召喚獣はこりごりだ、うん。


「でもどうするの? 結構ピリピリしているみたいだし、私以外の2人を呼んだら警戒されるんじゃない?」

「確かにな……」


 本当に、物価も安くて安全だったドラクラムと大違いだ。宿のお婆ちゃん、ファーレイとマァタナを見ても「祖竜霊様の召喚士様はモテモテですねぇ」で納得してくれていたし。


「まあ魔王の情報を集めるには冒険者ギルドが良いって聞いたし、明日には足を運んでさっさとこの町を出よう」

「それがいいよ」


 ベッドの上で横になる……と同時に悪寒が背中を走った。


「……2人に、事前に説明しておこうか」


 そう言って俺はドラグラムドラピヨと言う魔物を召喚した。ややこしいが、大切な指輪を長旅で無くさない為のテクニックだ。契約の指輪を適当な魔物に付けて送還し、必要な時に召喚して指輪を返してもらう。


「ピヨヨヨヨ」

「はいはーい、ごめんね。ちょっと返してもらうだけだから」


 嘴に牙、足には鋭い鉤爪、そして羽には鱗を持つ黄色の毛に覆われた30㎝程度のヒヨコの魔物だ。首にペンダントの様に鎖を通した指輪をかけている。


「来い、ファーレイ! マァタナ!」


 俺の呼び声に2人は最初の時の様な巨大な物でない魔法陣と共に現れた。


「参りました」

「大体知ってる」


 一応、2人にも事情は伝わっている様だ。


「話が早くて助かるよ。町の様子もおかしいし、出来れば門を通ったレイカーナと行動して起きたいんだ。構わないかな?」


「私はコウジ様の決定に異を唱えるつもりはありません」

「構わない。けど、不安」


 マァタナの視線はレイカーナに向かい、レイカーナもそれに気付いた。


「何がですか?」

「貴女、守れるの?」


 その挑発とも取れる台詞にレイカーナの顔が少し強張った。


「マァタナ!」

「コウジの身を案じただけ。必要なら呼んで」


「……」


 そう言ってマァタナが黙るとレイカーナは何も言わずに睨み続けていた。


「取り敢えず、この町で手に入れられるだけの情報を集めたら直ぐに出て行くから」

「では、夜間は私達が警備します」


「え」


「賛成。夜なら私も十分力を発揮できる」

「必要ないです!」


 レイカーナは反対するが、他の2人も約束を破る形だし此処は……


「そもそも、この部屋そんなに広くないから1人で良いし、2人の存在を隠す為のレイカーナ維持なんだから警備もレイカーナに任せるのが一番だよ。いいね?」


「はい!」


「……了解しました」

「ん」


 その後、2人を送還し、指輪をドラピヨに預けて俺はベッドの上で休む事にした。

 村の物よりも柔らかいベッドだがそれでも日本の家と比べればその良さを思い出してしまう程度の質だ。


「ん?」

「コウジ」


 急に手を握られた。レイカーナにはベッドに入るなと命令してあるので来れないだろうが、これ位は出来るらしい。


「私、何が来ても守るから」

「信じてるさ」


 だから腕が壊れる前に力を抜いて欲しい。


「あ、ごめんなさい……お休み」

「ああ、お休み」


***


「あの、起きれないんだけど……」

「私が、守るから……!」

「おーい、レイカーナさん?」


 目が覚めると、レイカーナの両腕が斜め左右に、顔は目の前にあった。覆いかぶさっている状態と言っていいだろう。


(ベッドに入らない命令に従いながら破ろうとしてこの体勢か……?)

「うん、ごめんね? 今、退くから……」


 腕震えてるけど何時間こうしていたんだ? そんな疑問が頭を過ぎるとイタズラに腕を触りたくなった。


「ほい」

「ひゃぁ!?」


 両手首を掴んでやると吃驚してか、力の入っていない軽い腕に俺も驚いた。


「て言うか、痺れてる?」

「ちょ、ちょっと待って……! 今腕を放したら落ちちゃうから……!」

「ご、ごめん。まさかそんなやばい状態だとは思わなかった……!」


 痺れに震えるレイカーナと顔を見合う謎の時間は数分続いた。


「は、離さないでよ! 今、力が入らないから!」


 そして宿での準備を終えると不機嫌になったレイカーナと共に、町へと出掛けた。


「……もう、コウジが変な事するから」

「ごめんごめんって!」


 謝りつつもチラリと売店に横目をやれば、やはり物価が高い。


(ドラクラムの物と比べても2倍くらい値段が違うな)


 なんだが、鎧を着た警備兵も多くて物々しい。

 戦時中だとか言っていたけど、本当にそれらしいな。


「なんだが、村と同じだな」

「魔王退治なんて此処の人間じゃ幾ら集まっても不可能だよ」

「そうなのか?」

「うん、小国程度の勢力で討伐できる魔王ならもうとっくの昔に私が倒してたよ」


 余り大声で言うと彼らに要らぬ敵意を持たれてしまうからこの話は此処までにしよう。


「市場の商品はドラクラムと同じ位だな」

「まあ、日持ちしない魚とかはそうだね」

「闇魔法で保存すればいいし、取り敢えずこれで良いか?」


 値段を気にしながら買い物を済ませていたが、そこである建物に気が付いた。


「……冒険者ギルド」

「ドラクラムにはそういえば無いね。まあ、人間の考えた施設だからね」

「そうなのか?」

「うん。そもそも、他の種族は昔から村の問題は村人全員で対処するのが当たり前だったから、態々何でも屋みたいな冒険者ギルドは要らなかったんだ」

「へー、そうなのか……ん?」


 その横には掲示板らしきものが立っていた。


「あれ……」

「どうしたのコウジ?」


 俺はその中の1枚の紙を見ると、近づいて次々に他の紙にも目を通した。


「……! ……これは!」

「コウジ?」

「かなり儲かるんじゃないか、これ!?」


 湧きあがるテンションに、ギルドのクエストと言う男子の憧れがないと言えば嘘になるがその紙の中には『平均銀貨800枚以上』、『通行税免除』、『宿屋割引』等の魅力的な情報が並べられていた。

感想、誤字報告等お待ちしております。

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