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三精霊の痴情

2ヶ月ぶりの更新になる所でした……

お待たせして申し訳ありません。

今回は3精霊の仲の悪さが伺える話です。いや、ヤンデレ同士が仲良くは無理ですけど。

「何故こちらを見るんですか? 浄化させましょうか?」


「こっちの台詞。貴女に凝視されても気持ち悪いだけ」


「うるさいですよ、早く寝てください」


 宿屋に帰ってきた俺は召喚獣の3人を同じ部屋に詰め込んだ。全員が嫌がっていた(と言うより俺との同室を望んでいた)ので、命令して強制したのだが風呂から出てもこの調子だ。


「コウジ様! やはり、1人の夜は寂しいですか!? 私がお供します! ふふふ、そしたら直ぐに3人になれますね?」

「コウジ。暗黒霊である私は夜こそ本領が発揮できる。私と出掛けましょう。建設の準備とか、忙しい」

「ダメです! コウジは私と一緒のベッドで寝よう?」


 全員が全員、それぞれの目的の為に俺を誘ってくる。いや、乗る訳が無いけど。


「命令。騒がず寝る事」


「以前もお伝えしましたが、神聖霊に睡眠は必要ありません」


 と言いながら命令に逆らえず立ち上がりかけてた体をベッドに戻すファーレイ。


「夜景が素敵な場所とか、案内するよ?」


 マァタナとレイカーナも同じく、体の方は命令を聞いてくれている。


「じゃあ、明日。喧嘩するなら起こしには来ない事」


 念を入れて命令をしつつ、俺は改めて3人を見た。

 これで多分暴れないだろう。出来ればこれを機に3人が仲良く……


(いや、無理だろ)


 内心そう思ってしまった。とはいえ、今日だけで彼女達の仲が致命的に悪い事は解ったのでこれから少しでも直して欲しいとは思っている。


(が、誰も彼もが俺に執着している以上は難しいか……とはいえ、これ以上の召喚はもうこりたし、この3人には連携を取って頂きたい。せめて、緊急時くらいは)


「コウジ様……? お疲れの様ですので、どうぞ私の隣に」

「闇の魔力を注入すれば元気になる」

「やっぱり一緒に寝たいんでしょ?」


 俺がいると悪化しかしない事に気付いたので、気が利く三精霊の誘いを無視して自分の部屋へと帰った。

 先が思いやられる。出来れば、起きた時はもう少し大人しくしていて欲しいな……


***


 起きて早々に嫌な事を察した。


「……喧嘩、してんだろうなぁ」


 誰も起こしに来ないとはそう言う事だろう。まだ3人部屋が無事である事を祈りながら身支度をして廊下に出た。よかった。少なくともドアと壁は無事だ。


「……入るの、怖いな」


 ドアを叩くか叩かないか悩んでいると、中からファーレイが開けた。


「こ、コウジ様! 申し訳ありません! 今日は起こしにいけませんでした」

「いや、別に良いけど……喧嘩してない、よな?」


 部屋の中からおかしな声が聞こえてくる。


『フーゥ! ンー!!』


 まるで口を塞がれているみたいな……まて、これ前にもあった気が……?


「ええ。今終わった所です」

「あ、マァタナ! レイカーナ!」


 光の魔力で拘束させ口まで塞がれている2人はベッドの上で必死にもがいていた。


「“喧嘩するなら起こしに来てはいけない”。

 なら、一度争いを終わらせてから行けばいいのですよね?」

「そんな都合の良い命令があるか!」


「殺してしまっても送還されてしまうだけですし、拘束に留めておいたのですが……やはり息の根を止めておくべきでしたか?」

「俺の話聞いてた!? えぇ!? こんな自分勝手に解釈されるの!?」


「聞いていましたよ? 今日は街に出掛けるんですよね?」

「マァタナとレイカーナも一緒だ! 兎に角2人を解いてくれ」


「………………はい」


 随分と苦々しい返事に俺は頭を抱えた。開放された2人とファーレイは忌々しいと言わんばかりにお互いを睨みつけている。


「……お、おはよう」


 俺から挨拶を切り出すと、2人は隠せていない不機嫌と共に挨拶を返した。


「おはよう」

「おはよう、コウジ」


 この調子で3人仲良く観光しよう……とはならないだろう。お腹が減っているせいか、思わず腹部を手で抑えた。


「……取り敢えず、朝食に行こう」

「お供します」

『……』


 ファーレイの後ろの2人が無言なのが怖い。一旦、バランスを取ろう。


「命令、ファーレイはこの部屋で待っている事」

「なっ!?」


「ふん、いい気味」

「そうなるよね?」

「な、何故ですか!?」

「精霊は食事もいらないんだろ? いや、必要なら持ってくるけど……それにファーレイが2人を縛ったせいでまだベッドが片付いてないからそれをお願いしていいかな?」

「……分かりました」


 理解してくれた様だ。

 これ以上ファーレイを不機嫌にさせない為にも他の2人を連れて食堂へと急いだ。

 


 ――しかし、彼女達の不和は俺の想像以上に根深い問題だった。



 宿屋を出れば魔法で牽制し合い、町までの道中に倒した木々は数知れず。

 町に着けば俺の手や体を掴んでそれぞれが別の方向に歩き出すし、席に座るのでさえ、誰が俺の隣かで揉める始末だった。

 観光どころじゃないと気付くのにそう時間は掛からなかった。


「――で、どうすれば仲良くしてくれるのか教えて欲しいんだが」

「無理ですね」

「不可能」

「無理だよ、うん」


 単刀直入に聞いてみたが、3人共そんな気は微塵もない様だ。

 そりゃあそうだ。全員が俺に対して個々の望みがある以上、俺が分裂でもしない限り彼女達はいがみ合うだろう。恋愛経験のない俺には、魔王対峙より難しい状況に立たされたと言ってもいい。


「コウジ様、まずは深く考えずに私と愛し合いましょう。あちらにホテルがあるそうですよ」

「コウジは魔王になるべき。余計な魔力の流れの少ないあのホテルに行く」

「私は普通に2人っきりのデートを楽しみたいですから、あの裏路地とかどうですか?」


 其処まで来たらホテルで揃えろ、なんてツッコミをしている場合じゃない。


「あのさぁ、俺の目的は魔王の調査なんだぞ? 子供はいらないし、魔王になるとか訳分からないしな」

「そうそう」

「あと路地裏にもいかない」

「えー」


 今日を乗り切って明日からは1人ずつ相手にする。そう考えよう。じゃないとやっていられない。


「次は、アイスを食べに行く」

「はい、行きましょう」

「しょうがない」


 そう言って人数分のアイスクリームを買ったが、マァタナが見た目相応に一番美味しそうに食べていた。


「……食べてない」

「いや、なんで嘘吐くんだよ?」


「食べてない」

「いや、本当にこの中の誰よりも――あ、やめて!? 俺のアイスに闇を向けないで! て言うか、やっぱり気に入っただろ!?」

「気に入ってない」


 俺は闇の魔力と共に襲ってくるマァタナから逃げる。


「てっきり、貴女はコウジとのあんなじゃれないも許さない感じだと思ったんだけど」

「いえ。微笑ましいと思っています。きっと、子供が出来たらあんな風に過ごすのでしょうね」


「……子供子供って言うけど、コウジと結婚したい訳じゃないの?」

「コウジ様は自分の世界に帰りたいと思っています。なら、私はコウジ様がいなくなってもこの手に残る絆として、子供が欲しいんです」


「ならもしこの世界に残るなら、私がコウジと結婚してもいいよね?」

「それがコウジ様のお望みなら――貴女ではなく、私を選ぶように説得いたします」

「ははは! まるでコウジの事を第一に考えているみたいで、やっぱり私欲? 神聖霊がそんなに欲深いだなんて」


「私は、一度死んで精霊として蘇ってなお、1人の人間を求める貴女の方が浅ましいと思いますけど?」

「へぇ……口に出さないだけで胸の中に留めて置くだけなのに随分と傲慢な物言いね?」


 ……なんで俺がちょっと目を離した隙に険悪な雰囲気になってんのこの2人!?


「がうっ!?」


 と、2人の方を見て止まった俺の背中に突っ込んできたマァタナに押し倒された。


「捕まえた……なんで私の下に?」

「お前が押し倒したんだろうが!」


「丁度いい。このまま闇の魔力を流してあげる」

「御二人さーん! 喧嘩はやめて助けてくれぇ!!」


 その後、俺はなんとか魔王と化す前に救出された。


***


「風呂には俺1人で入る!」

「洗濯は俺がやる!」

「ご飯くらい俺が取ってくる!」


 宿に帰って来てから、私、ファーレイはコウジ様の警戒に少々されている様です。


 折角、互いに裸になれる機会だった風呂場への立ち入りを祖竜霊であるレイカーナと共に禁じられ、安眠の為の使用済みの衣類も手に入らず、深く眠っていただこうと折角準備していた魔法も邪な考えで手伝いを申し出たマァタナと共に無用だと言われた。


「それじゃあ、昨日と同じく3人はこの部屋! 俺は1人部屋だ。で、明日の朝になったら1人を残して送還させるから……取り敢えずレイカーナ以外のどっちを残すか考えて置く。頼むから、暴れて部屋を壊したりするなよ?」


 そう言ってコウジ様は自分の部屋に戻ってしまいました。

 注意喚起をして、命令もせず。


「では、私はもう寝ます」

「私も……ふぁー、疲れちゃった」

「寝る」


 ……2人が嘘を吐いて居るのは直ぐに理解出来ました。


「コウジ様の願いを無視しては、送還の帰還も早まるかもしれませんね?」


 取り敢えず釘を刺しておきましょう。これでゆっくりと――


「――なんで注意しておきながらすぐに部屋を出ようとしているのかな神聖霊さん?」


「当然です。コウジ様からこの部屋で過ごせとの御命令はありませんでした。ならば、生産性のある私が同衾するのは当然です」

「バカじゃないの? 昨日と同じくって言ってたんだから騒がず喧嘩せずに寝るのが当たり前でしょう? そもそも、私達2人もいるんだから貴女が出てけば一緒に行くわよ?」


「……はぁ、わかりました。どうせ、私は送還されないのですから急ぐ必要はありませんね」

「好きに言っていればいい」


 私は渋々ではありましたがベッドに戻りました。

 しかし、直ぐに暗黒霊が立ち上がりました。


「ちょっと、何処に行く気ですか?」


「……トイレ」


「精霊は必要ないですよね!?」

「アイスを食べ過ぎてお腹いたい」

「なら、私が浄化して差し上げますね?」


 私が手に出した光の魔力を見て、彼女は自分のベッドに戻った。

 ああ、何故でしょう?


「コウジ様には、私だけがいればいいのに……」


感想、誤字報告等お待ちしております。

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