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プロローグ

連載中の別小説と一緒に書いていくつもりなので投稿速度は早くないです。ご了承ください。


 大昔、私が生まれたその時からこの体には私自身で考え学び、行動する為の意思と、大義をなす大いなる力が備わっていた。


 騎士としての在り方と神の使いと同等な光の力。


 私は魔法で召喚され、使役される者として、そして存在するだけで光の魔力を世界に供給し続ける存在としてこの世に生まれた。隔絶された空間では生まれた世界に触れる事すら出来ない。


「君はちょっと強すぎるから、滅多な事では呼ばれないよ」

「ええ、承知しております」

「そっか。じゃあ、任せたよ」


 それが私にとっての最後の会話。


 私は召喚獣、神聖霊。その召喚には複雑かつ強大な魔法を操るだけの力がいる。100年経っても、500年経っても私を召喚できる者は現れなかった。


(別にいい。私は存在しているだけでも構わない)


 800年経った。この時は最初の魔王が生まれ、それを打ち倒す為に勇者が別の世界から呼び出されたと言う。ならば、私が召喚される日も近いだろう。聞けば魔王は闇を操る王だと言う。光の神剣そのものと言っても過言ではない私の力ならその者を倒すのも容易だろう。


 しかし、805年に魔王は勇者に倒され封じられた。私は結局召喚されなかった。


(……良いんだ。魔王は世界の負が姿を得た打倒されるべき存在だ。これできっと世界に平和が戻った)


 私の孤独は続いた。1000年にはまた魔王が現れた。勇者の子孫達が力を合わせて封印をして、私は召喚されなかった。


 1600年に魔王が再び蘇った。現れた異世界の勇者の活躍で魔王は完全に滅され、私は召喚されなかった。

 2000年に今までで一番強大な力を持った魔王が現れた。異世界の勇者が複数召喚され、私は召喚されなかった。


 2050年、私は気付いてしまった。世界が十分成長し、豊かになった事で私の足元にも及ばない位の光の力を持つ聖霊がその数を増やしていた。聖霊達も私同様光の魔力を生み出す。隔絶された空間にいる私が供給しなくても、幾分か劣りながらも世界で暮らす聖霊が魔力を生み出し続けるだけで事足りる。

 私がその事に気付いた時には、既に世界との繋がりが10年も前から塞がっていた。

 供給の必要もなく、召喚されない私にはもう存在理由すらなかったのだった。


 2200年、供給しなくなった魔力が貯まっていくが私は此処を出る事は出来ない。

 2300年、今回の魔王は私の力なら消し飛ばせるだろう。召喚されなかった。

 2500年、また魔王が召喚された。召喚されなかった。

 2600年、魔王は倒され、召喚されなかった。

 2650……


「…………」


 ……召喚()して。


「誰か……」


 ……出して…………私を。


「外に、世界に……」


「出して、お願い……!」



***



「――で、此処は何処なんですか?」


 俺は体を起こしながらも目の前の存在を睨みつけ、質問をする。


「やだなぁ、そんな怖い顔しないでよー」


 目の前の彼女? は楽しそうに笑いながら俺と会話をするが、俺は一切信用できない。


 何故なら雲の上の様な白と青空だけが存在するこの空間まで俺を呼んだのは間違いなくこの美しい部分だけで体を作ったかのような奇跡の美女だ。


 ふわふわと先端が浮いている羽の様な軽さを持つ金髪を腰まで伸ばし、汚れが一切ない白のワンピース1枚だけでその体を全て隠し、金色の瞳と薄ピンクの唇が俺へと向いているのに俺を見ていない。


 いや、俺を中心に置きながらこの世全てを見ている様な感じだろうか。


「ふふふ、いいね。すごく良い。魅了されてるのに嫌いになろうとしているのが特にいい……」


 何か呟いた様だがちゃんと聞こえない。それに若干イライラしながらも俺は急かした。


「そろそろ質問に答えて貰っても良いですか?」

「此処は私の部屋、だよ」


 その答えに俺は眉を顰めた。

 俺の知っている部屋とはまるで違う。もちろん、目の前の存在が俺の知っている部屋を使わないと言われればそこまでだが。


「神様でも人間と似た様なモノだよ。恥ずかしい物は隠しておくに限るって事」

「神様だって……!?」

「そう。もっとのんびりしていたいけど、あんまり時間も無いから君のこれからの予定に付いて話そうか」


 ゆっくりと、立ち上がった俺の周りを歩きながら話を始めた。


「まず君を私の部屋に呼んだ理由はね、世界を救ってもらうためだよ」


 いきなり壮大なワードが飛んできた。驚きはするが俺は黙って話を聞く事にした。


「私はこの世界の神様だけど、同時にもう一つ別の世界を創造し、見守っているんだ。君の暮らす世界をベースにして、人間とそれに似た種族が科学ではなく魔法で発展し、魔物と言う脅威との戦いを続けている」

「……それで?」


 今の説明では俺が世界を救わなくてはならない理由には不十分すぎる。世界単位で魔物を脅威と認識しているのであれば、俺個人で如何こうなる話ではないだろう。


「君のいた場所ってさ、君とは関係なかったかもしれないけど戦争とか紛争、争いが絶えない世界だったでしょう? 私はそこから学んだの。ある程度の知能と感情を持った生命体にとって争いは避けられない。しかも、同じ大陸に住んでいても少し離れた場所で暮らしている相手と自分達を分別する」


 なんとなく分かる。平和な日本の高校生だった俺にとってはニュースで見る程度ではあったが地球は争いだらけだ。人種差別も、他の国では大きな問題になっていた。


「だからね、私は考えた。同じくらいの知能と感情を備えた命を種族で分けてしまおうって。

 人間、エルフ、ドワーフ、ドラグーン……君達の世界は本当に良い資料館だね」


 資料館と言われて思わず顔をしかめた。本当に世界を創造したのが目の前のこいつだとしても、そこまで軽んじるものなのか?


「ああ、ごめんごめん。君達と私とでは世界の見方が違うからさ、そこは勘弁してよ、ね?」


 人の心を読んで謝罪までしてくるか。


「でも種族を分けたって争わないなんて事はない。だから、共通の敵を作ることにした。それが魔物。君達の世界の動物と同じ様に広く色んな地域に生息しているんだけど、種類も豊富で大半は普通の人間では太刀打ちできない程の力を持っている。

 そして宗教の単一化。私が時々唯一神としてその世界に姿を見せる事で実在する神様は私だけって教えているの。まあ、現れているのは私の分身なんだけどね」


「随分献身的なんだな。俺達の世界にはそこまでしなかったのに」


「あ、妬いてるの?」


 違う。不自然なまでに肩入れしている事に対して指摘しただけだ。


「あー、でも君なら理解できるでしょ?」

「何?」

「例えば、RPGゲームをやるでしょ? レベル54位まで毎日プレイして、ふとした拍子に暫くやらない日が続いて、久しぶりにやるのが2ヶ月後。で、放置してた方のセーブデータで遊ぶ選択肢と、ちょっと忘れたストーリーを思い出したり、苦戦したボス戦の前にもっとレベル上げして簡単に倒そうって思って初めからやり直すって選択肢も勿論あるでしょう?」


 まあ言いたい事は分かる。それがゲームの話なら、な。


「だから君達の世界は一旦置いておいて、今度は新しい世界を上手く創ろうって事でこうして頭を悩ませているの」

「……で、そろそろ俺の目的を教えてくれないか?」


 納得は一切出来ないが、神様にとって世界とはその程度(ゲーム)(データ)なんだろう。


「うん。魔物の脅威は年々薄まってきてね、世界共通の敵にしては統率も出来てないし、約1800年前には別種族の進行を防ぐ為の防壁代わりとして住処を利用されてた位なんだ。

 このままじゃ駄目だと思った私は新たに絶対的な脅威として認識させる敵を作った。それが魔王。

 ……だけど、世界全体の負の感情が溜まると現れる魔王が私の予想以上の速度と力で復活を繰り返してしまっていてね。本来なら君達の世界の人間を勇者として召喚なんてしなくても倒せるはずだったんだけど、そうもいかなくなったんだ」


「じゃあ、俺が呼び出された理由は勇者として魔王を倒す事か……?」


 漸く話が見えてきた。本当なら断りたいしそうするべきなのだろうが、正直この神様が素直に帰してくれるとは思えない。


「そりゃそうだよ。神様としてこうして時間を割いて君に説明をしているんだから、何を言っても君はあっちの世界に行くんだよ。まあ……魔王を倒すのは君の使命じゃないんだけど」


「どういう事だ?」


「もう既に私の世界の住人が君の世界の人間を勇者として召喚しているんだよ。だから、君は勇者じゃなくて召喚魔法使いとして異世界“テハボーラ”に行って貰うよ」


 召喚魔法使い? なんでそんな微妙な職業を?


「特に深い意味は無いよ……おっと、そろそろ時間みたいだね。ゆっくりしすぎたみたいだ」


 神様の言葉の通りに俺の体は足元から輝く七色の光に包まれて、その場から消えそうだ。


「兎に角、君の目的は世界を回って魔王の復活を沈静化する事! それが終わったら元の世界に帰してあげる」

「……分かった。やってやる。だけど、その言葉絶対に忘れるなよ――!」


 一瞬、輝きが最高潮に達した光がこの空間から俺の体を持ち去った。




「――多分君が元の世界に戻るのは、無理だろうけどね」



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