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雨の音

作者: 瓶覗

ジャンルが合ってるか分かりません。

間違ってたらごめんなさい。

その日は、雨だった。

都会ではないこの場所は、人通りが多くない。

だから、駅の階段に座っても誰に咎められることは無く、それをいい事に片耳にイヤホンを付けて座り込んでいた。

特に誰かを待っていたわけでもなく、何か用事があったわけでもなく、ただ、ぼんやりと。

ああ、雨が降ってきたな、傘、持ってきてないな、と。

タオルがあるから、被って帰ろうかな、でも、少しは濡れちゃうかな、と。


別に濡れるとこは構わなかった。

でも、何となく。何となくここに座ってぼんやりとしている事にした。

それが晴れるまでなのか、ほかの何かを待っていたのかは自分でも分からないが、今は座っていようと思った。

他に人は誰も居なくて、ただ、雨の音だけが響いている。

雨の音が他の音を消して、雨以外の音は全く入ってこなくて、この世に一人きりになったような感じがした。

でも、嫌いじゃない。静かなのは、嫌いじゃない。一人で居るのは、嫌いじゃない。


でも、少しだけ。

ほんの少しだけ寂しい気がした。

その、欠片くらいの寂しさを感じながら、ああ、このまま、雨に溶けてしまってもいいな、と。

そんなことを思って、静かに目を閉じて。

雨の世界に、意識を沈めて。

イヤホンからの音は、いつの間にか途切れていて。

それをどうするでもなく、音の流れていないイヤホンをそのままにして。


雨の音だけの世界に、どれくらいいただろうか。

時間は分からなかった。

時計は見ていなかったし、持ってもいなかった。

でも、だいぶ、溶けた気がした。

そろそろ、完全に雨に溶けただろうか、と。

そっと、溶けだした部分が揺れないように、零れてしまわないように、そっと、そっと目を開けてみて。

そうしたら、そこには君が立っていて。


迎えに来たのだ、と。

傘がなくて、困っているだろうから、と。

一緒に帰ろう、と。


そう言って、微笑んで。

そう言って、手を差し出して。

伸ばされたその手に、溶けてしまったこの手を乗せて。

そうしたら、驚くほど暖かくて。

驚いて、その暖かさで、君の温度で、溶けていた部分まで、元の形に戻っていくようで。

溶けてしまった手は、君の手の上で元の形に戻っていって、そのまま、君の手を握った。


君に手を引かれて、雨の中を、濡れることなく歩いて。

雨の中にいて、音の中心にいて、それでも、もう溶け出す事はなくて。

ああ、良かった、と。

君が居てくれて、来てくれて良かった、と。

君が、知ってくれていて良かった、と。

ただ、心からそう思った。

下書きの短いのを読んでもらった友人達に、迎えに来た人、視点主の性別を聞いてみたら見事にバラバラになりました。

どちらに見えたでしょうか。

少し気になるので、教えていただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 若いうちに亡くなった男性の幽霊で、迎えに来たのは寿命まっとうした奥さんの幽霊 幽霊は生前の常識で姿決めるとして、イヤホンで音楽聴いてたけど数十年経過して意識も少しずつ薄れて音楽が途切れた、と…
[一言] 視点は女性、迎えに来た人の性別は何でもいいと思いました。 今後の執筆活動を応援しております。
[良い点] 作品の雰囲気は出ているかと思います。 情緒的な部分に重きを置いていると思うので、流れるように読むことができました。 [気になる点] 特に気になるというわけではないですが、 ここからどう動か…
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