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教えて天使先生

 天使にいろいろ聞きたいことがある。

 とりあえず呼び出してみよう。本当に繋がるのだろうか。


 俺は脳内で【天使コール】と唱える。

 すぐに『ピィーーー プッ ヒョロロロロロ トゥットゥットゥットゥッ……』みたいな電子音が脳内で再生され出した。

 この音ってあれだわ、昔インターネットに接続するときに流れてたダイヤルアップの接続音だわ。

 若い世代にはこんなネタ通じねーよ!


『あーもう、なによー。今日は徹夜になるから昼寝してたのにー』


 脳内でツッコミを入れていたら天使の声が聞こえてきた。

 ちゃんと繋がって一安心だ。


「徹夜してまで何かすることがあるのか?」

『そんなの麻雀に決まってるじゃない』


 なるほど、麻雀なら仕方ない。


「まぁそれは置いておいて。いくつか聞きたいことがあるんだけどいいか?」

『よくない。寝る』

「この世界の人達に、俺が異世界から来たってことは言わない方が良いのか?」

『ダメって言ってるんだから聞きなさいよ。えーっと、別に言うのは構わないわよ。まだ言わない方が良いとは思うけど』


 文句を言いつつも質問には答えてくれるらしい。


「んん? 結局は言っちゃダメってことか?」

()()ね。例えばアンタが地球にいた頃に初めて会った人に「自分は異世界から来た」なんていきなり言われたら、アンタはどうしてた?』

「よくわかった」


 天使に会って実際に異世界転移した今ならいざ知らず、日本で暮らしててそんなことを言っている人がいたら頭の心配をした後に関わらないようにしていただろう。


『そんなことが聞きたくてわざわざアタシを起こしたの?』

「いくつか聞きたいって言っただろ。それで、この世界って人間は珍しいのか?」

『人間? アンタと同じ種族なら、その世界で珍しいんじゃなくて、その大陸では珍しいだけよ』


 地球で例えると日本に野生のコアラやカンガルーはいないけど、オーストラリアにはいる感じか。


『そうね。ヒュースレッド大陸っていうところに行けば人間は沢山いるわよ。むしろ人間はその大陸からあまり出たがらないのよ』

「そうなのか。だからここでは珍しがられたのか」

『しかもアンタは男だしね。いくら条約があるとはいえね』


 男だと何か不都合があるのか?

 それに条約というのは果樹園で話してたときにも聞いた気がする。


「そういえば人魚についても教えてくれないか?」

『え、アンタ人魚も知らないの? 人魚っていうのは上半身が人間で下半身が魚の亜人のことよ』


 うん、俺の記憶にある人魚と同じだ。どうやら魔物ではなく亜人らしい。


「そうじゃなくて、なんか村の西の湖には人魚が住んでて危険だから近付くなって言われたんだけど」

『ああ、人魚は人間の男が大好物だからね。1人で住処の近くをうろついてたら襲ってくださいって言ってるのと同義よ』

「マジか。人魚って肉食なのか。いや、肉ぐらい食べればいいけど人間を食うのかよ」

『違うわよ。襲うって殺して食べるほうじゃなくて、性的によ』


 性的に襲うって、『レ』で始まって真ん中に『イ』が付いて最後は『プ』で終わる3文字の行為のことか。


「それって正直言って危険どころかご褒美じゃね?」

『はぁ~……。面倒臭いけどちゃんと説明してあげるわよ。人魚は当然として、その世界ってアルラウネやハーピーもいるんだけど……。アルラウネとハーピーはわかるわよね?』

「もちろん。アルラウネは人魚の植物版みたいなので、ハーピーは鳥版だろ」


 どちらもゲームではザコ敵モンスターとしてよく出てくる。


「というか人魚といいアルラウネといい、地球と名称が同じなのか」

『それは自動翻訳がアンタのもっともわかりやすい単語に合わせて変換してくれているだけで、人魚もアルラウネも本来は別の名称で呼ばれているわよ。もちろんエルフや妖精なんかもね』


 そうだったのか。自動翻訳さん超優秀。

 ということはルーティにコーヒーが飲みたいって言ったら、今飲んでるこれが出てくるのだろうか?


『それはいいとして、人魚やアルラウネといった種族は女性しか生まれてこないのよ。女性しか生まれない種族が子孫を残すにはどうすると思う?』

「別の種族から男を連れて来る……」

『惜しいわね。正解は攫ってくるよ。それで更に言うと、別の種族と言っても男ならどの種族でもいいわけじゃなくて、相性があるのよ』


 相性。ドワーフとエルフは仲が悪いとか言われているやつだろうか。

 もしくは身体の相性?


『どっちも不正解だけど、身体の相性の方が近いわね。子供がデキるかデキないかの相性があるのよ』

「命中率のことじゃなくて?」

『アンタね、アタシも一応女の子なんだけど。もっと言い方ってもんがあるでしょ。別にいいけど』


 こんな話をしておいて、それくらいのことでセクハラ発言と取るのか。

 天使の感性もよくわからない。


『例えばそうね、人魚とドワーフが交わっても子供ってデキないのよ。血が混ざらないと言えばいいのかしら。それともう一つの問題として、男しか生まれてこない種族のオークと人魚なら子供はデキるんだけど、生まれてくる子供はオークになるのか人魚になるのかわからないのよ』

「なるほど」

『で、そんな中でどの種族とでも子供が作れて、さらに生まれてくる子供はほぼ確実に相手の種族になるっていう血の強さが最弱の種族がいるんだけど、ここまで言えばわかるわね?』

「人間か」

『正解。人間の男はどの種族からも狙われやすいけど、人魚やアルラウネみたいな女性しか生まれない種族からは特に狙われやすいのよ』


 ああ、だから人間はヒュースレッド大陸の外に出たがらないのか。

 その大陸には人魚みたいな種族はいないのかな?


『それで最初の話に戻るけど、何が危険なのかと言うと人魚の住処ってことは数百人、下手すると数千人ぐらいの人魚がいるかもしれないのよ。捕まったらアンタ1人で全員の相手をさせられるかもしれないけど、できるの? 向こうは子孫を残すのに必死だからアンタの都合なんて考えてくれないわよ』

「すまん、よくわかった」


 数人なら大歓迎だが、3桁を超える相手とか無理だ。ある意味、拷問に等しいだろう。


「でも条約があるから大丈夫とも言ってたけど、その条約っていうのは?」

『簡単に説明すると「合意の無い相手を攫うのは止めましょう。特に数が激減している人間を無理やり攫ったら他の全種族から報復されても文句は言いません」っていう世界的な取り決めね。ま、バレないように条約を破ってる連中なんて当然いるけどね』


 つまり村長と一緒に人魚達に顔を見せに行くのは、俺はこの村の住人だから攫ったらすぐにわかりますよという警告だろうか。


「そういえば妖精も女の子しか見てないけど、女性しか生まれてこない種族なのか?」

『妖精も女だけね。でも妖精は精霊に近い存在だから、魔力と精気溜まるとそこから自然に生まれてくるのよ。だから親から産まれてくる場合の方が少なくいわよ』

「へー、そうなんだ」

『親から生まれた妖精は父親の遺伝も引き継ぐから、通常よりも大きく成長することが多いわね。って、この辺り説明はその村の村長にでも聞きなさいよ』

「あー、それもそうか」


 なにせ妖精本人だしな。しかも自然に生まれた妖精ではなく、両親から産まれた妖精のようだし。


『んで、質問はもうないの? そろそろ昼寝の続きをしたいんだけど』

「あ、最後に一つだけ。この世界も24時間で1日なのか? 地球と同じような時計を村の所々で見掛けたんだけど」

『そうよ。どの世界も1日は24時間で1年は365日。1秒も地球と同じ時間よ。そうやって合わせてた方が神様達も管理しやすいからね』


 そんな理由なのか。


『ついでにその世界は地球と共通点が多い世界よ。まぁその方がアンタも馴染みやすいだろうし』

「え、なにお前、もしかして俺を転移させるためにわざわざ地球に似た世界を探してくてれたの?」

『べ、別にそんなことしてないわよ! その世界のことは元から知ってたし! あー、もう。今日はもうこれで十分でしょ! 切るわよ!』


 また一方的に交信を切られた。なんで急にツンデレっぽくなるの。

 まぁ聞きたかったことは概ね聞けたから良いけど。




 まったりしているとルーティ達がお風呂から出てきた。

 1時間ぐらい入っていたけど、のぼせないのだろうか。


「すみません、久しぶりだったので長湯してしまいました。あの、お湯が半分ぐらいまで減っちゃいましたけど、大丈夫ですか?」

「うん、水を足してもう一度お湯にするから大丈夫。じゃあ俺も入らせてもらおうかな」

「はい、タオルは置いておきましたので自由に使ってください」

「あっ、しまった。着替えがないんだった」


 着ている服も昨日、汗をかいてそのまま野宿したから結構汚れている。

 皆は何も言わなかったけど俺って汗臭くなってるんじゃ……。


「着替えでしたらお父さん服を着てください。サイズも大丈夫だと思います」

「ありがたいけど、良いの?」

「はい、ウチの両親は滅多に帰ってこないのでタンスの肥やしになってますし」

「それならお言葉に甘えて」


 ルーティ達の両親はいないのかと思ってたけど、遠くに出かけてるだけなのか。



 お湯は半分どころか7割は減っていた。別に問題ないけど。

 蛇口のレバーを捻ると水が出てくる。日本と同じシステムなのはやかりやすくて良い。水を足している間に服を脱いだ。

 水が十分に溜まってから【水の領域】を発動する。昨日は微妙なスキルだと思っていたけど、実際に使ってみると凄く便利だ。

 湯船に浸かる前に身体を洗おうとしてちょっと困った。石鹸が10種類も置いてある。

 年に数回しかお風呂に入らないみたいなことを言っていたのに、なんでこんなに種類があるんだろう。

 コレクションでもしてるの?


「お兄ちゃーん、着替え置いとくねー!」


 脱衣所からピュティの声がする。

 ナイスタイミング。聞いてみよう。


「ピュティ! なんか石鹸がいっぱいあるんだけど、どれを使ったら良いのかな?」

「えっとねー」


 ピュティが浴室のドアを開けて中を覗き込んでくる。って、うおおおおおおい!


「青いのが身体を洗うやつで、赤いのが頭を洗うやつだよ。全部匂いが違うから好きな匂いのを使えばいいよ」

「そ、そうなんだ。ありがとう」

「どうしたしまして!」


 お礼を言うと、ピュティは何事もなかったかのように去って行く。

 見られてないよな?

 ルーティに変な報告とかしていませんように。



 風呂を堪能してからダイニングへと戻る。

 あまりの気持ち良さに30分ぐらい浸かっていたかもかもしれない。


「お願いルーティ、行かせて! 後生だから!」

「ダメに決まってるじゃないですか!」

「背中だけ! 背中を流すだけだから! わたくしからは手を出さないから!」

「子供達がいるんですよ! せめて寝てからにしてください!」


 ダイニングではなぜかルーティと村長が揉み合っていた。

 喧嘩ではないようだが、ルーティが村長を羽交い絞めにして言い争っている。


「えっと、何があったの?」

「んーとねー、村長さんがお風呂に入るって言ってて、それをお姉ちゃんがダメって言ってるの」


 ピュティに聞くと詳細を教えてくれた。

 なるほど。風呂の話を聞いた村長が俺が入っているのを知らずに入ろうとして、それをルーティが慌てて止めてくれたのか。


「ルーティ、上がったよ。すみません村長、風呂は俺が入っていたんですよ」

「レン様!? 間に合わなかった……じゃなくて。そうですか、レン様がお風呂に入っていらしたのですね。そうとは知らずにわたくしも入ってしまうところでしたわ。おほほほほ」

「あ、村長も入るなら水を足して沸かし直したほうが良いですか? と言ってもここはルーティの家ですけど」

「いえ、そのままでも大丈夫です。ルーティ、それではわたくしもお風呂に入らせてもらうわね」

「どうぞどうぞ。夕飯の支度にはもうしばらくかかりますし、ゆっくり入ってきて下さい」


 ルーティがタメ息混じりに台所に立ち、村長はいそいそと風呂場に向かった。


「お兄ちゃん、トランプやろー」


 ピュティが持ってきたトランプを見せてもらうと、絵柄が5種類あり枚数も違う。数字はこの世界の文字で書かれているが問題なく読めた。

 つまり自動翻訳さんが俺の認識と照らし合わせて、これはトランプだと判断したのだろう。


 夕飯が出来るまでピュティや小妖精達にルールを教えてもらいながらトランプで遊んだ。


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