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ペット探し

 ピュティへの誕生日プレゼントはペットを贈ることに決まったが、まずはアボガボ湖へやって来た。

 砂浜で日光浴をしていた人魚にウェンディを呼んで来てもらい、カニを3匹注文する。


「今日はカニだけで良いんですか?」

「うん。ピュティの誕生日だから、カニづくしにするんじゃないかな」

「なるほど。では活きの良いのを見繕ってきますね」

「あっ、カニを受け取るのは帰り際で良いかな?」

「帰り際というと、他に何か用事が?」


 この近辺でペットになるような生き物がいないか探してみるつもりだと説明すると、人魚達が手伝ってくれることになった。

 ウェンディとメルディとついでに暇をしていた7人の人魚が俺達に加わり、12人の大所帯となった。


「ピュティちゃんの誕生日なら、メルも頑張ってお手伝いします!」


 メルディがやたらと張り切っているが、ウェンディもいるので大丈夫だろう。


「林に入るから魔物が近付いて来ていないか周囲に気を配るように。もし魔物を見つけても大声で騒がずに、速やかに周りに知らせること。あとは離れすぎないように注意するのよ」


 ウェンディの指示の元に全員で近くの林へ足を踏み入れた。

 林に入るということで人魚達は全員が足を魚から人形態に変え、服を着ている。効率や安全面を考慮すれば当たり前だが、露出が著しく減ったので少し残念だ。

 と思っていたら、俺の前を歩いていた1人の人魚が何かを見つけたのかその場に屈む。屈んだ拍子に短いスカートから形の良いお尻が見えた。


「ご主人様、急にしゃがみ込んだら危ない」

「あー、ごめん。何かいたような気がしたけど気のせいだったかなー?」


 後ろを歩いていたフィオーネには俺が急にしゃがんだ理由がわからなかったようだ。つい無意識で反応してしまったので危なかった。

 しかし人魚達の裸は見慣れたと思っていたけど、不意打ちのチラリズムの破壊力は絶大である。立ち上がるのにちょっとだけクールタイムが必要だ。


「なるほど。レンさんはああいうのが好みと」


 どうやらウェンディにはバレてしまったようだが、ウェンディになら問題ないだろう。


「こんなものを見つけたんだけど、どうかしら?」


 形の良いお尻の人魚が7センチほどの大きさのヤモリを俺に見せてきた。このヤモリは素材としてグレンダさんが買い取ってくれるので俺も何度か捕まえたことがあるやつだ。

 ヤモリは10年ぐらい寿命があるらしいのでペットとして飼えなくもないが、女の子に贈るモノとしてはどうなんだろう。

 でもピュティなら喜びそうな気はする。いや、それよりもグレンダさんに渡した方が喜ばれるか。


「え~っと、もう少し可愛らしい生き物がいいかな?」

「あらそう? これも十分可愛いと思うけど残念ね」


 形の良いお尻の人魚がヤモリを逃がした。確かにヤモリって愛嬌のある顔してるけど。

 あっ、それよりも素材として買い取れば良かったかも。


「レン君、レン君! ジーローパーがいたよ!」

「うおっ、でかっ!」

「うん、大きいよね!」


 別の人魚が入れ替わるようにしてイソギンチャクのような生き物を捕まえてきた。片手で持っているが15センチほどの大きさはある。

 俺がでかいと言ったのはジーローパーについてではない。だって初めて見る生き物だから大きさなんてわからないし。

 そのジーローパーを持ってきた人魚の戦闘力の高さに思わず声を出してしまったのだ。これは村長を上回る大きさではなかろうか。挟まれたい。

 などと邪念を抱いていたら、フィオーネとリッテに左右から脇腹を抉るように抓られた。今度はしっかりとバレてしまったようだ。


「というかそれ、ペットとして飼えるの?」

「ジーローパーは人魚の間では凄く人気があって、ペットとして飼っている人も多いよ」

「へー、そうなんだ」

「うん、すっごく気持ちがイイからね!」


 爆乳人魚が愛おしそうにジーローパーを撫でる。

 気持ちイイってなんぞ。もしかして犬の名前にバターって付けちゃう類の話なの。


「ジーローパーは男性でも大丈夫みたいですよ。もちろん、そんな勿体無いことしなくても、私達ならいつでもウェルカムですけど」

「ご主人様には私がいるから問題ない」


 ウェンディの余計な補足説明にフィオーネが反応して、2人が火花を散らす。

 やっぱりそういう用途なのか。


「それをピュティにプレゼントすると俺がルーティに殺されそうな気がするから、別のモノでお願い」

「う~ん、それならこのジーローパーは私が飼おうかな」


 どうやらジーローパーは爆乳人魚のペットになるようだ。うやらまけしからん。



 しばらく林で捜索を続けたが、ピュティのペットにできそうな生き物は見つからなかった。

 予定としてはリスや小鳥を探していたのに、毒は無いから平気と言いながらクモやヘビを持って来る人魚もいて非常に困った。

 今更だけど、人魚に手伝いを依頼したのがそもそもの間違いだったのかもしれない。


 収穫のないまま林の中にある川にやって来た。川幅と水深もそこそこある大きめの川で、アボガボ湖と繋がっている。

 メルディはこの川に沿ってキノコを探していて俺と出合ったそうだ。


「お兄さん、ザリガニがいました!」


 メルディが川で大きなザリガニを捕まえてきた。20センチ近いので最初は伊勢海老かと思ったが、ザリガニと言っているのでザリガニなのだろう。


「ザリガニはペットって感じがしないなぁ」

「言われてみれば確かにです。ではお姉ちゃん、これは今日晩のご飯にするです」

「あら良いわね。皆の分も欲しいからもう何匹か捕まえましょうか」


 食べるんだ、ザリガニ。

 俺は食べたことがないけど、もしかしたらいずれルーティの家の食卓にも並ぶのだろうか。


 人魚達は川に入ってザリガニを捕まえているので、俺も川べりで生き物を探してみる。

 カメとかならペットになりそうな気がしたが、カメは見当たらない。やはりそう簡単にはいかないか。


「おっ。そこにザリガニがいるよ」

「どこですか?」


 代わりにザリガニを見つけたので近くにいた人魚に教えた。

 俺の指差す先にいたザリガニを人魚が飛び掛るようにして捕まえる。足は人のままだが、それでも泳ぐのはかなり早い。

 ザリガニを捕まえた人魚が嬉しそうに獲物を見せてくる。


 そして俺はそこで重大な事実に気が付いた。

 人魚達は服を着たまま川に入っている。色物の服を着ている人魚は問題ないが、今ザリガニを捕まえた人魚は白いTシャツを着ていた。

 そう、濡れた服が肌に張り付いて透けているのだ。

 これはあの噂に名高い濡れ透けTシャツである。女の子の瑞々しい肌に滴る雫と張り付く布地。隠すために着た服から透けて見えてしまっている背徳感。

 全裸のエロスを否定する気はないが、大っぴらに見えているよりもよっぽどエロスを感じる。あえて言おう、濡れ透けは大好物であると!

 豊かな膨らみにも布地が張り付き、白色と肌色のコントラストが映える。先端の突起物も布越しに薄っすらと色が確認できる程度に主張をして――。


「ご主人様、見ちゃダメ」

「危なあっ!」


 突然放たれたフィオーネの目潰しをギリギリのところで体を捻って回避した。

 この娘、容赦無さすぎるんですけど!


「避けたら罰にならない」

「それ下手したら失明するから! ……って、なんだろう、アレ?」


 2撃目を繰り出そうとするフィオーネの手を押さえつけ、顔を背けた先に変なモノを見つけた。


「レン、何かあったの?」

「ほら、あそこの木の上になんか白い物体が」

「本当だ。動いてる。生き物?」


 フィオーネとリッテも揃って首を傾げていると、俺達の様子に気付いたウェンディ達が集まってきた。


「あれは……、もしかしてケセララピでしょうか?」

「魔物?」

「いえ、人に危害を加えない大人しい動物です。本来は山の上や洞窟に生息しているので、こんな所にいるのはかなり珍しいですね」


 リッテですら名前は聞いたことがあっても実物を見るのは初めてらしい。

 全員で驚かさないように慎重に近付いていく。


「近付いても逃げないです」

「木に登って降りられなくなってるのかしら?」

「あー、なるほど」


 ケセララピのいる枝まで6メートルほどの高さがありそうだ。幹も太いのでよじ登るのも大変そうである。

 梯子。いや、階段が必要か。


「皆、ちょっとこの木の周りから離れてて」


 一声掛けてから川へと戻ると、【水の領域】を発動させた。

 住宅にあるような一般的な階段だと長さや段差が大きくなってしまう。なので螺旋階段をイメージしながら木に沿って水で階段を作る。

 足を滑らしたときのために手摺りも作ってから、水を凍らせた。これで氷で出来た階段の完成である。


「これはレンさんのスキルですか? 凄いことが出来るんですね」


 一連の作業を見ていたウェンディ達が驚いたような顔で俺を見ている。そういえばメルディ以外の人魚の前で【水の領域】を使うのは初めてだった。

 階段を維持する魔力消費が激しいので、先にケセララピを救出に行こうとしたらピョンピョンと飛び跳ねるようにして階段を降りてきた。

 下まで降りて来たケセララピはそのまま逃げ出したりせず、俺の胸に目掛けて飛び付いてくる。


「うわっと」

「知能が高いのでレンさんが助けてくれたとわかっているみたいですね。本来なら人を恐れてすぐに隠れてしまう動物なんですけど」


 改めてケセララピを観察してみる。ウサギをベースにネコを足したような生き物だ。

 体長は25センチほどで顔は大きく身体は小さい。大きな垂れた耳と長い尻尾が特徴的で、真っ白でモフモフの毛に全体が覆われている。

 このモコモコ具合は超癒される。


「メルも抱っこしたいです!」

「うん、良いよ。はい」


 メルディにケセララピを渡すと、女の子達に順番に抱っこされて揉みくちゃにされている。羨ましい。ではなくて、ストレスで毛が抜けたりしないか心配だ。


「あれって飼っても大丈夫なの?」

「ええ、都の方ではペットとして人気が高いみたいですよ。確かポルドワ村の村長のお孫さんも飼っているはずなので、飼育方法は聞けば教えてくれると思います」


 ピュティのペットに良さそうだったので飼っても大丈夫なのかウェンディに確認してみたが、特に問題はないようだ。

 ポルドワ村の村長の孫ってミリアのことだし、帰る前にミリアの所に寄って話を聞いてみよう。


 氷で作った階段を水に戻し、川の上に移動させてからスキルを解除した。


「レンさんのスキルって、水中で呼吸はできるんですか?」

「水中で呼吸? 液体を操る能力だからさすがにそれは無理じゃないかな」

「そうなんですか。私たち人魚の種族スキルも本来は水を操る能力なんですよ。水を操って水中にある酸素を取り込んだり、水流を作って泳いだりするので人魚は水中でも活動ができるんです」

「へー、そうだったんだ。じゃあコツとか教えてもらえれば俺も出来るようになるかな?」

「すみません、人魚の種族スキルは基本的に無意識に使っているのでコツは特にないですね。レンさんも陸地での呼吸の仕方を教えて欲しいと言われても、教えるのは無理ではないですか?」

「確かに。じゃあ俺のスキルだと水中じゃ活動できないかな」

「そうですか。でもよく似たスキルみたいなので、レンさんがそのスキルを使いこなせれば可能になるかもしれませんね」


【水の領域】を使って水中で呼吸か。考えたこともなかった。

 確かに俺はまだスキルを使いこなしているとは言えないし、今度試してみよう。


「ところでレン。わざわざ階段なんて作らなくても、私が飛んでこの子を救出すれば早かったと思うの」


 ケセララピを抱いたリッテに冷静なツッコミをされた。

 そういえば妖精だから飛べるんだったね。飛んでるところを見たことがないからすっかり忘れてたよ!

今回で村に帰る予定だったのに、余計なネタをダラダラと書いていたら予想以上の文章量になっていました

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