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誕生日

 衝撃の事実が発覚。ピュティは今日で13歳になるらしい。


「えっ、マジで?」

「マジです。私達エルフは人間さんに比べて成長速度が3倍くらい遅いんですけど、ご存知なかったですか?」

「いや、全く。でも13歳の割りにはなんていうか、性格まで幼すぎない?」

「精神年齢の成長速度も見た目と合わせて遅いと言いますか、見た目相応になってしまうんですよ」


 うう~む、まさかピュティの年齢が2桁あったとは。ずっと5歳ぐらいだと思っていたのに。でも頭がやたら良いので、少し納得できる気もした。


「エルフってやっぱり長生きなの?」

「そうですね、平均寿命は700歳ぐらいです。中には1000歳を超える人もいるらしいですけど」

「へ~。見た目はどうなるの?」

「人間さんで言うと大体20歳ぐらいで成長は止まります。その後は500歳を越えたあたりから少しずつ老いが始まる感じでしょうか」


 この世界でもエルフはかなり長寿のようだ。人間の10倍近い寿命があるのか。


「ん? でもその計算でいくと見た目が15歳ぐらいに見えるルーティの年齢って、よんじゅう――」

「レンさんは1週間ご飯抜きにします」

「待って、ごめんなさい! それ普通に死んじゃうから!」


 土下座して1週間毎日風呂を3回沸かすと約束して許してもらった。

 後で村長から聞いた話だが、長寿の種族にとってルーティぐらいの年代が一番歳のことが気になる時期なので、その話題に触れてはダメと言われた。

 そういうことは先に教えておいて欲しい。



「それで今日晩はピュティの誕生日祝いをするので、人魚さん達からカニを3匹買ってきてください」

「了解。ちなみにサプライズ的なことはするの?」

「いえ、ピュティはカンが良いのでそういうのは成功しないんです」

「あー、そんな気がする。じゃあ村長の許可を貰ってからアボガボ湖へ行って来るよ」

「準備があるので夕方までには帰ってきてくださいね。あ、出掛ける前にお風呂をお願いします」


 本当に1週間毎日3回入る気らしい。別にいいけど。



 村長邸に向かっている最中にピュティと遭遇した。

 妖精達と鬼ごっこをしているが、やはりどう見ても幼女にしか見えない。


「ピュティ、ちょっと良いかな」

「なーに、お兄ちゃん」

「今日が誕生日って聞いたんだけど、プレゼントは何が欲しい?」

「ん~……。弟か妹」


 しばらく考えてから俺がプレゼントできないモノを欲求された。


「それは俺じゃなくて両親に頼まないとダメなやつかな」

「じゃあ、甥か姪?」


 甥か姪なら確かに俺でも可能である。ルーティの協力が必要不可欠だが。

 だからといってルーティに「ピュティが欲しがっているから、甥か姪を作ってあげよう」と言った日には説教では済まされないだろう。

 一体ピュティはどこまでわかってて言っているのだろうか。


「人以外でお願い。オモチャとか食べ物とか何かない?」

「それならお兄ちゃんにお任せで。何か良さそうな物を見つけてきてね!」

「お、おう」


 それがわからないから聞いたのに。

 こういうときは田舎の村に住んでいると非常に不便だ。買い物ができる店といえば、グレンダさんの雑貨屋かポルドワ村の家具屋ぐらいしかないから。



 村長邸に着いた。玄関扉をノックして中に入る。

 掃除中だったのか、箒を手にした大妖精のリッテが出迎えてくれた。


「村長は起きてる?」

「うん。1階の客間でフィオーネと何か話してるの」

「ああ、どこにいるのかと思っていたら、ここに来ていたんだ」


 最初はいがみ合っていた2人だが、ここ最近はすっかり打ち解けたのかよく一緒にいる姿を見掛ける。

 何を話しているのかは教えてくれないが、剣呑どころか楽しそうな雰囲気なので心配することはないだろう。


 1階の客間の扉が開いていたので中を覗き込むと、リッテの言っていた通り村長とフィオーネが何かを話し合っていた。

 テーブルの上に置かれた紙を見ながら随分と真剣な表情をしているが、邪魔をしても大丈夫だろうか。


「私としてはプラン3が一番のオススメ。あこまで行ければ後は3人で楽しめる」

「そうね。はじめてが外になってしまう可能性が高いけど、もう気にしないことにしましょう」

「むしろその方が思い出になるから大丈夫」

「ええ、ではプラン3で準備を進めましょう。うふふふふ」

「わかった。ふふふふふ」


 どうやら丁度話が一段落したところのようだ。2人して楽しそうに笑っている。


「あのー、村長。ちょっといいですか?」

「ひゃわああああい! レ、レレレレ、レン様! どこから聞いてました!?」

「いや、いま来たところなんですけど、丁度フィオーネとの話が終わったみたいだったんで」

「そ、そうですか。嘘ではないようですね。ビックリしました」


 俺が話かけると村長は飛び上がる勢いで驚き、フィオーネは机の上に広げてあった紙を一瞬にして折り畳み口の中に入れた。

 よくわからないが人に聞かれるとマズイ話だったのだろうか。扉は開けっ放しだったのに。


「もがもごもが。もががもごもごご?」

「いや、何言ってるのかわからないから。というかアルラウネって紙を食べるの?」

「んべっ。紙は食べれない。それよりご主人様、何か用事?」


 フィオーネが口に入れていた紙を吐き出した。

 そんなことしなくても何が書いてあるのか見せろとか言わないのに。


「ルーティにアボガボ湖へ行ってカニを買ってくるように頼まれたからその報告に。ついでに帰りにポルドワ村でピュティの誕生日プレゼントを買ってきます」

「そういえば今日はピュティの誕生日でしたね。わかりました。気をつけて行って来てください」

「私も行く」


 フィオーネが仲間に加わった。フィオーネはウェンディ達にやたらと自分はペットだと主張するのであまり連れて行きたくはないが仕方ない。


「そうだ。エルフの女の子に対して贈ってはいけない物ってあったりします?」

「いえ、エルフに対してならそのような物はないですね」


 エルフに贈るとヘンな意味に取られる物はないようだ。

 先日はドワーフの頭を撫でてはいけないと知らずに大変な目に合ったから、こういうことはしっかり確認しておかないと。

 ちなみに、ミリアには翌日に事情を説明し、誤解を解いて謝罪した。ビンタ1発で許してあげると言うので頬を差し出したらグーで殴られた。

 本気で殴られたのでかなり痛かったが、乙女の純情を弄んだ罰と言われれば仕方ない。


 そういえば村長とフィオーネがよく一緒にいるようになったのって、ポルドワ村に行ってからの気がする。

 あの時、俺の知らない所で何かあったのだろうか。



 掃除を終えたリッテも加わって、3人でアボガボ湖に行くことになった。

 道すがらピュティに何を贈るか考える。


「う~ん、ピュティにプレゼントって何を贈れば良いんだろう?」

「何が欲しいか聞かなかったの?」

「さっき聞いたら弟か妹、もしくは甥か姪が欲しいって言われたんだけど……」

「ダメ、絶対」


 フィオーネ、そんなに力強く否定しなくてもわかってるから。


「リッテは何か贈るの?」

「村の習慣で、妖精全員で協力してケーキを作ってあげるの。あとは場合によっては個別に贈り物をしたりするけど、今回は特に思い付かなかったの」

「へぇー、ケーキなんて作れるんだ」

「舐めてもらっちゃ困るの。私達は普段から共同で家事をしているから料理も余裕なの」


 妖精達は平屋で共同生活をしているが、家事はちゃんと当番制で分担してやっているようだ。

 その当番の中に、今日のリッテのように村長の家の掃除なども含まれているのは良いのだろうか。


「村で料理が全く出来ないのは村長とピュティだけなの」

「ピュティはまだわかるけど、村長は昔から当番には参加してなかったの?」

「村長は親持ちだから両親に甘やかされて育ったの。料理どころか家事全般が壊滅的なの。そんなだから行き遅れてあの歳になっても結婚できないの」


 親持ちの妖精は結婚するのが当たり前で、親無しの妖精は結婚しなくても普通らしい。なので村長は行き遅れ扱いされているが、200歳を超えているリッテは行き遅れにはならないそうだ。

 俺にはその感覚の違いがよくわからない。


「話が逸れちゃってるけど、リッテ達がケーキを贈るのなら食べ物以外にした方が良いかな。でもオモチャも最近ミリアがいろいろと買ってあげてたからなぁ」

「じゃあ、普段から欲しがっている物がないか考えるの」

「ん~? そういえば最近何かを欲しがっていたような……」


 俺が持っているモノを見て自分も欲しいと言っていた記憶があるけど、何だったっけ?


「…………あっ、思い出した。フィオーネだ」

「私はご主人様の物だから、求められても困る」

「そうじゃなくて、フィオーネを見てペットが欲しいって言ってたんだ」


 両親が誕生日に犬や猫をプレゼントするのはよくある話だけど、隣人がプレゼントするのはどうなんだろう。面倒を見るのは姉のルーティの役目になるのに。

 そもそもこの世界にもペットショップなんてあるのだろうか?

 ポルドワ村でペット用品を売っているのは見かけたけど。


「ならアボガボ湖でペットになりそうな生き物を捕まえる」

「水棲生物は飼育が大変だから、林の中で鳥か小動物を捕まえる方が良いと思うの」

「それなら前にリスを見かけた。探せばこの辺りにもいるかもしれない」


 どうやらペットは買うのではなく、捕まえるのが当たり前のようだ。

 ペットを贈ることで話がまとまりつつあるが、犬や猫みたいに世話が大変な動物じゃなければルーティも許してくれるだろう。多分。


 いざとなったらウチで面倒をみることにして、ピュティへの贈り物が決まった。

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