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仕事を探す 後編


もう1つの連載中の小説と共通の設定がありますが、特に繋がりはありません。


 ウェンディ達の集落で食中毒騒ぎがあった翌日、俺はグレンダさんに呼ばれて店に顔を出していた。


「すまんのう、わざわざ来てもらって」

「いえ、暇してたので大丈夫です。何かありましたか?」

「うむ、昨日の素材代を渡しておらんかったからな。ほれ、確認しておくれ」

「え?」


 グレンダさんにお金を渡された。1万バルシもだ。

 1バルシは日本円にして1円相当の価値があるので、約1万円である。


「あの、素材代ってなんですか?」

「何って、昨日ドランペルカズラを採取してきたじゃろ? アレの買い取り代金じゃよ」

「……え?」


 つまり、昨日俺が採取したドランペルカズラは、グレンダさんが薬の素材として買い取ったことになるらしい。


「いや、俺は別に売るつもりで採取したんじゃないんですけど……」

「ウェンディ達も解毒剤の代金は払うと言っておったじゃろ? これは労働に対するきちんとした対価じゃ。受け取っておきな」

「えっと……。そういうことなら、まぁ」


 突然大金を手に入れてしまった。ここはやはり普段からご飯代を出してくれている村長に返すべきだろうか。

 その前に荷車で送迎してくれたホールドさんと山分けにするべきだろうか。


「でじゃ。レンタロウをわざわざ呼んだのはもう1つ用件があったからなんじゃ。むしろこっちが本題と言ってもええ」

「あ、そうなんですね。それで、その用件とは?」

「うむ。レンタロウに村の周辺で素材の採取を頼みたい」

「素材の採取?」


 グレンダさんの話を要約するとこうだ。

 あのドランペルカズラは元々は東の森が主な生息域で村の西側にはあまり生えていなかったらしい。

 というのも昔はこの村で素材の採取を専門に行っていた人物が居て、その人が村周辺でカズラなどを採っていたからだそうだ。

 しかしその人は寿命で亡くなってしまい長いこと村の周辺で採取が行われなかった結果、村の西側にまで生息域が伸びてしまっているようだ。

 そこで防護服がなくても平気な俺に、駆除も兼ねてカズラを採ってきて欲しいそうだ。


 採取したカズラは調合の材料として重宝するのでグレンダさんが買い取ってくれるし、行商人に売ってもグレンダさんと同じ価格で買い取ってくれるようだ。

 さらに村周辺の森にはカズラと同じように調合の材料となる植物が沢山生えているので、それらもついでに採取すればかなりの金額が稼げるようになるらしい。

 村の外は魔物が出るのでそこにだけは注意する必要があるそうだが、これはかなり良い話ではなかろうか。

 捜し求めていた定職の予感である。


「確かに村の中ならシェルルーナの結界があるから安全じゃ。しかしピュティナや妖精達はときどきルーティの言い付けを破って結界範囲ギリギリのところで遊んでおっての、万が一ということもありえる。そうならぬためにも村の周辺は安全に気を配りたいんじゃ。西の道もの」

「う~ん、そうですね……。そういうことでしたら」


「ちょっと待ったあーーーーーーっ!」

「おおっと、ここで出ました! ちょっと待ったコールだあああああっ!」


 突然店のドアが開け放たれ、村長が乱入してきた。

 思わずね○とんのノリで返したが、この世界の住人には絶対にネタが通じないだろう。


「なんじゃシェルルーナ、藪から棒に」

「なんだもかんだもないわ。レン様に村周辺の採取をさせるのは反対よ。数が少ないとはいえ、魔物が出るんだから危険でしょ」

「ふうむ。レンタロウ本人の意見はどうなんじゃ?」

「え? 俺としては、俺にできるならやってみようかなって思いますけど。仕事も欲しかったとこですし」

「ダメです、レン様! わたくしに任せてくだされば、お金の心配なんてしなくても大丈夫です。ですから危ないことはしないでください」


 村長が俺のことを心配してくれるのはありがたいが、ここでわかりましたとヒモ宣言するのも憚られる。どうしたものか。

 俺が困っていると、見かねたグレンダさんが村長に近くに来るように呼んだ。


「レンタロウや、シェルルーナを説得するから、ちとそっちで商品でも見ながら待っといておくれ」

「はい。わかりました」


 グレンダさんに言われて店の隅に移動する。2人は小声で何かを話出した。


 ※ ※ ※


「いくらグレンダの頼みでもこればかりは譲れないわよ。レン様に危ない事させるのは断固として反対するから」

「まぁ聞きな、シェルルーナ。さっきも言ったがピュティナや妖精達は村の結界ギリギリのところで遊んでおって非常に危なっかしいんじゃ」

「ええ、それはわかっているわ。でも結界の中にさえいれば安全よ」

「今はまだ安全じゃ。じゃが、もしかすると将来的にその結界が効かなくなるかもしれん。例えば……、()()()()()()()()()()()()()外で遊ぶようになったときとかにじゃ」

「なん……ですって!?」

「ピュティナのように結界周辺で遊んでおって、もし結界をすり抜ける特殊固体でもおったらどうなる? 2人の愛の結晶が喰われてしまうぞ。そうならぬ為にもレンタロウ1人で対処できる今の内に村の周辺だけでもカズラを駆除してもらうんじゃ」


 ※ ※ ※


 グレンダさんと話をしていた村長が突然その場に崩れ落ちた。

 どうしよう。何を話していてそうなったのかわからないけど、様子を見に戻った方がいいのだろうか?


「レン様! わたくしが間違っていました!」

「え? あの……、はい?」


 突然起き上がった村長が抱きつかんばかりの勢いで俺に迫ってきた。

 なんなの一体。ちょっと当たってるんですけど、村長の大きなアレが。


「レン様がそこまで将来のことを真剣に考えて下さっていたなんて! 知らなかったとはいえ、話も聞かずに一方的に反対して申し訳ございませんでした!」

「あっはい。将来のことは確かに真剣に考えていますけど」


 このまま村長のヒモになるのは外聞が悪すぎるからな。仕事のことはちゃんと考えているつもりだ。


「わかりました。そういうことでしたら反対はしません。ですが、絶対に無理だけはしないと約束してください。子供も大事ですが、それと同じようにわたくしはレン様のことも大事に思っているんですよ」

「はい、それはもちろんです。絶対に無理はしません」


 村長はピュティや妖精達のことを大事に思っているんだな。それと同じぐらい俺も大事だと言われるのはちょっと照れくさいが、素直に嬉しい。



 なんだかんだで村長の許可も得たので俺の仕事が決まった。

 とはいえ、まだ実際にやったわけではないのでとりあえず1回やってみることにした。これで問題がないようなら今後はこれで食べていけるだろう。


 どういった植物が素材として売れるのかまだよくわからないので最初はドランペルカズラを中心に集めてみることにした。

 グレンダさんから採取に必要な物を購入する。ナイフ、袋、方位磁石、防護服は必要ないが念のために手袋、万が一に備えて解毒剤、魔物に襲われたときに使う目くらましの魔道具などなど。


 ここでも村長がお金を出すと言ってくれたが、さすがに仕事道具は自分のお金で買いたいからと遠慮した。

 とはいえ手持ちのお金は1万バルシしかなく、全然足りなかったのでツケで購入させてもらった。

 もしこれで採取が上手くいかなかったらいきなり借金生活である。頑張ろう。



「レン様。採取に出掛けるときは、必ずコレを持って行ってください」


 村長から翼の形をしたペンダントを渡された。

 つい先ほど、グレンダさんの店で村長が購入するのを見ていたが自分用のアクセサリーかと思っていた。


「これは魔除けのペンダントです。この辺りの魔物は凶悪なので気休め程度にしかならない物ですが、グレンダの工房を借りてわたくしが魔力を込めておきました。持っているだけでもだいぶ違うと思います」

「すみません。わざわざありがとうございます」

「いえ、どういたしまして。ちなみにそのペンダントトップの翼ですが、それは天使様の翼をモチーフにしていると言われています。なので身に付けていると天使様の加護も得られるそうですよ」

「それはまぁ……、ありがたいモノですね」


 せっかく村長がくれた物なので身に付けようとは思うけど、天使の加護と聞いてちょっと微妙な気持ちになった。

 だってほら、天使と言えばアレだし……。ねぇ?


「ところでレン様。わたくしは子供は3人欲しいなと思うのですが、レン様はどう思われますか?」


 村長がいきなり子供の数を聞いてきた。子供が好きみたいだし、3人欲しがっても普通なのではなかろうか。


「3人ですか。良いと思いますよ。俺も3人ぐらいは欲しいですし」

「そうですか! わかりました。わたくし、頑張りますね!」

「あっはい。頑張ってください?」


 村長は踊りながら店を出て行った。

 その姿を見てグレンダさんが「ふぇっふぇっふぇ」と魔女っぽく笑っていた。




 一度自宅に戻り、準備を整えると西門から村の外に出た。

 1人で西門から外に出るのは初めてだが、アボガボ湖に行くのではないので怒られはしないだろう。

 グレンダさんの話によるとドランペルカズラは東の森が主な生息域らしいが、いきなり東の森に入るのは無謀すぎる。

 なのでまずは西の林で様子をみて、大丈夫そうなら北の森へ。北もいけるようになれば最終的に東の森だ。

 と、考えていたのだがいきなりターゲットを発見した。サイズは昨日のよりも少し小さいが、気にせず同じ手順でささっと採取する。

 植物なので見た目ほど重くはないが、1つだけでも袋がかさ張るのが問題だ。袋いっぱいに入れた場合は、5つか6つが限界だろうか。


【天使コール】を使って天使に魔物がいないか見てもらおうかと考えたが、さすがに天使に頼りっぱなしもダメだと思い、止めておいた。少しずつ慣れていけば良いだろう。


 2時間ほど林の中を探索して、カズラはさらに2つ採取できた。

 魔物に出くわさないように慎重に動いていたので思っていたよりも狭い範囲しか移動していなかったが、それでも合計で3つである。グレンダさんが駆除を頼んできた理由がわかった気がした。

 しかし、これを時給に換算すると約1万5千円だ。ちょっと笑ってしまいそうになるが、魔物に襲われたら元も子もないので油断しないように村まで戻ってきた。



 初仕事は無事に終わったが、反省点はいっぱいあった。

 1番重要な問題として、俺は村周辺の動植物を知らなさ過ぎる。

 林の中で一本角の生えたタヌキを見かけたが、ただの動物なのか危険な魔物なのか判断できなかった。

 他にもトカゲやバッタ、蝶に似た生き物もいたが、これらの危険性の有無もわからなかった。

 見たことのない花や草も生えていたが、触ってはダメなのか素材として採取できるのかこれもわからなかった。

 まずは周辺の魔物について誰かに聞き、動植物については図鑑のようなモノでもないか聞いてみよう。


 その他の細々とした反省点を洗い出しながらグレンダさんの店を目指す。

 反省点はいっぱいあるが、今後もなんとかこれでやっていけそうだ。



 余談。

 その日の夕食時、普段は酒など飲まない村長が、今日は特別な日だからと言いながら酒を飲んでいた。

 俺が無事に仕事を見つけたのでお祝いしてくれたのだろうか。

 でも酔った村長にベタベタと引っ付かれ、柔らかいモノが思いっきり当たっていたので非常に困った。


 ついでに村長に感化されたピュティや小妖精達にまで引っ付かれて、身動きが取れなくなった。

 そんな俺達の様子を見て、ルーティは心底呆れたようにタメ息を吐きながらも、楽しそうに笑っていた。


グレンダさんは、村長とレンの『間にデキた』子供、とは言ってなかったりします。策士です

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