険悪な2人のムード(ユウ)
「先生。なんなのだ、我に話とは。」
露季が口を開いた。そして続ける。
「我に話があるなら、我だけに話してくれ。ユウは別にいいだろう。」
タルトは……おとなしく僕の隣に座っている。
「まあ、そう言うな、柄闇。柄闇だけじゃ危ないかもだろ。」
「先生が我になにかする気か?そんなもの脅しにもならないぞ。」
なんというか険悪だ。それに仮に何かあっても、今の僕は能力もなにも持ってない。
「するのが先生ならまだよかったかもな……。」
先生は漏らす。しかし、露季の耳には届いていなかった。
そこからさらに、僕の耳元で、
「水森、実はな、精霊と契約した者は『精霊の加護』がついて肉体が少し……いや、だいぶ丈夫になるんだ。本来先生が生徒にこんなこと言うのはアレだが、最悪の時はお前が柄闇を守れ。」
と言った。最悪の時?守る?どういうことだろう。
「ま、その……なんだ……あの……。」
「なんだ。はっきり言ってもらわないと我は分からん。」
「……来たな。」
ドアが開く。入ってきたのは……校長の須崎先生だ。
「おや?松原先生。今は授業時間ですよね?なぜ、生徒を連れ出しているんですかね?」
すかさず僕は間に入って、
「いや、校長先生これは違うんです。分からないところを教えてもらおうとしてて、みんなの前だと恥ずかしいから……」
……痛い。お腹のあたりに燃えるような痛みを感じたのとほぼ同時に体が後ろに吹き飛ばされた。
「ユウくんっ!」
タルトがこちらに来ようとする。その進路を遮り校長は何発もタルトにパンチを打ち込む。次の瞬間タルトはその場に倒れこんだ。
「水森っ!!クソッ!」
松原先生が校長に向かって走っていく。校長の出すパンチを何発もステップでかわす。が、1発を左足にくらう。その衝撃で動きが止まるとほぼ同時に松原先生が床に叩きつけられる。
「がっ……、水森……柄闇……すま……な……」
僕が気を失う前にみた光景は両腕が炎で燃え上がる校長先生と、
床に叩きつけられて気を失った松原先生。ここからではタルトは
見えない……無事だといいんだけど。
そう思って倒れこむ瞬間目に入ってきたのは、いつも左目につけている眼帯を外し、ロングヘアーの髪を外した眼帯で止めポニーテールにした、左目が黄色く光った露季の姿だった。