第十五話「告発」
ヒドラと戦っている途中から意識を失っていたアシュレイは、見知らぬベッドで眼を覚ましたことに驚いていた。
「ここは? レイは? レイはどこだ!」
パニックになりそうになりながら、起き上がろうとした彼女に、治癒師であるエルフのエステルが声を掛ける。
「大丈夫? 急に起き上がっちゃ駄目だよ。彼はあなたをここに連れてきてから、一度、宿に帰らせたわ。看病していたそうだったけど、彼も疲れていたから……」
目を覚ましたばかりの彼女は、まだ状況を把握できておらず、頭を振りながら、
「ヒ、ヒドラはどうした……助かったのか……ここは? 今は何時だ?」
「ああ、何とか倒したそうよ。あなたはヒドラに噛まれて、毒が回って意識を失ったの。今は朝の六時くらいかしら」
まだ、頭がはっきりとしない彼女は、治癒師であるエステルの姿を認識し、ようやく自分たちが助かったことを悟る。
「エステル? どうやってここまで……」
「彼、レイ君だったかしら? 彼があなたに毒消しを飲ませて、それから解毒の魔法も使ったそうよ。それでも危なそうだからって、あなたを背負って、ターバイド湖から運んできたの」
「一人で背負って、あの距離を……どうやらまたレイに助けられたようだ……」
ようやく事情を呑み込めたアシュレイは、エステルに次々と質問をしていく。
エステルは判る範囲で答えるものの、
「詳しいことは判らないわ。もうすぐレイ君が来ると思うから、あとは彼に聞いて」
といって、自分の仕事に戻っていった。
翌朝、いつもより遅い時間――午前七時――にレイは目覚めるが、昨夜、宿に戻ってきてからの記憶がなかった。
レスターとビアンカに部屋に連れてきてもらったところまでは覚えているが、ベッドに倒れ込むとすぐに意識を失ったからだ。
(うっ、酷い筋肉痛だ。それにまだ頭が重い。さすがに体力も魔力も限界だったみたいだ……この体の持ち主が鍛えてくれていたおかげだけど、昨日は本当に大変だった……それにしても腹が減った……)
レイは朝食を食べに食堂に向かった。
食堂ではビアンカが、「もう起きても大丈夫? 朝食なら取っておくわよ」と心配そうに声を掛け、レスターは、心配そうに黙って見ていた。
彼は昨日のことに礼をいい、朝食を食べ始める。
(アシュレイは大丈夫なんだろうか。昨日の治癒師のエルフ、エステルさんだっけ? エステルさんは大丈夫と言っていたけど、朝飯を食べたらすぐに診療所に行こう)
食事を取った後、すぐにエステルの診療所に向かう。
その途中、彼は昨日のことを考えていた。
(なぜヒドラが出てきたんだろう? もし、危険があるなら、アシュレイが知っているはずだ。蛙たちの動きもおかしかった。そう、セロンたちが現れる前後から……それにあの島へ火の魔法を打ち込んだ奴がいる。これも何か関係しているんじゃないか……)
ある仮説が頭に浮かぶが、証拠がないことと、アシュレイに確認しなければならないことがあるため、今は考えないことにした。
診療所に着くと、エステルが迎えてくれ、
「彼女はもう起きているわ。まだ、本調子ではないけれど、歩いても大丈夫よ」
彼は頭を下げ、アシュレイの下に急いで向かった。
彼女は窓の方を向いて、ベッドに腰を掛けていた。横から見る彼女の姿はいつものような自信に満ち溢れたものではなく、どことなく儚げな感じもする。
彼は「お早う。起きても大丈夫?」と努めて明るく声を掛ける。
彼女は彼の方に向きを変えると、「済まなかった」と頭を下げてきた。
「昨日は私に油断があった。たかが巨大蛙を狩るだけだと……ヒドラについては情報収集という基本中の基本を怠った。それなのに、お前は私を……」
彼女には珍しく、最後は消え入るような声になっていた。
レイは彼女を励ますように、
「でも、良かったよ。一時はどうしようかと途方に暮れたんだ。あと、荷物は全部持ってきているから、安心して……」
彼女はその言葉に被せるように、
「ありがとう。これで二度目だな、命を助けられたのは。この恩は……」
彼はその言葉を遮り、
「なあ、アシュレイ。助かったんだし、貸し借りっていうのは止めようよ。あんまり、そういう仲になりたくないんだ。僕もリザードマンの時に失敗した。それを助けてくれたのは君だし……それより、もしかしたら昨日は死ぬ気だったんじゃないのか。いつものアシュレイの動きなら、ヒドラに捕まるはずはないと思うんだ」
彼女は眼を伏せて、静かに告白していく。
「ああ、あの時、自分は無力だ、だが、何としてもレイだけは逃がさないといけないと思っていた。それが、逆に迷惑を掛けることになるとは……」
「一緒にやっていこうって言ったのに、それは無いんじゃないか。確かにまだ信頼されるほどの腕じゃないけど。少しは信用してくれても……いや、これからは、アシュレイがそんなことを思わなくなるように強くなるよ。それと、これからもよろしく……」
何となく照れくさそうにそう言うと、彼女に背を向ける。
そして、再び振り向くと、
「体調が戻るまでゆっくりしよう。急いで何かを成し遂げなきゃいけないわけでもないし、この間みたいにのんびり街を散策するのもいいんじゃないか。今日は駄目だけどね」
彼の言葉に彼女は、
(それもいいかもしれない。傭兵、冒険者、私はずっと戦い続けていた。レイに逢えたのは何かの啓示なのかもしれない。だが、……)
「そうだな。だが、今回のことはしっかりと落とし前を着けておくべきだ。どう考えてもセロンたちが一枚噛んでいるはずだ」
「そうだね。でも、証拠は? 僕が見た小船も、セロンたちが乗っているという証拠はないし、たまたま、帰る時に蛙たちが騒ぎ出したという可能性もあるよ」
「うっ、そう言われると辛いが……だが、ヒドラがターバイド湖に出るなどという情報は少なくとも冒険者ギルドは掴んでいなかったはずだ。それをどこかで手に入れ、私たちが蛙退治を受けたときを見計らって使えば……」
「セロンが僕たちを殺そうとする動機がない。有ったとしても、下手な方法だとオーブでばれるから、そんな直接的な方法は取らないんじゃないか?」
彼はそう言いながらも、セロンたちを疑っていた。
だが、物証がないことと、動機が見えないことから、告発まで出来ないと考えていた。
(これで奴が手控えてくれれば、特にどうこうするつもりはない。でも、ああいう性格の人間は絶対何かやってくるはずだ。できれば先手を打って、ボロを出させたいんだけど……)
アシュレイもその言葉に納得するものの、何とかする方法が無いか考えていた。
「ギルドには報告する必要がある。ソロウ支部長は信頼できる人だ。レイのことをある程度話しておいた方がいいと思うんだが、どうだろうか」
彼は自分のことを知られることが得策なのか、考えるが、彼女が信頼できると言う話に賭けてみようと思った。
「判った。ヒドラを倒した話をする必要があるし、支部長の胸だけに留めて置いてもらえるならその方がいい。それにアシュレイが信頼できると言うなら僕も信じる」
彼はそういった後、話題を変えるように、
「何にせよ。歩けるなら、ギルドに報告に行こう。ヒドラの魔晶石がいくらに成るかも知りたいしね」
そこまで言った時にアシュレイは、
「ところでレベルは上がったのか? ヒドラを倒せばかなり上がるはずだが……」
そう言いながら、自分のレベルも確認してみる。
(レベル四十二か。二つ上がっているな。もうそろそろ四十一に上がると思っていたが、一気に二つも上がった……子供の頃にレベル六から八に上がった時以来だ。本当にヒドラを倒したんだな……)
一方、レイも自分のレベルを確認していた。
(レベル二十? 七つも上がっている……確かに魔法も槍も使ったけど、こんなに上がるものなのか? これで一般兵並か。この異常に早いレベルアップはこの世界に飛ばされてきたことと関係あるのかな? もしかしたら、成長力アップという”チート”かも……)
「レベルは二十に上がっていたよ。一気に七つも」と彼が恥ずかしそうに言うと、
彼女は自分のレベルが二つ上がっていることから、有りうるとは思っていたので、笑いながら、「二十か……つくづく非常識だな」と呆れた表情を作っていた。
「なあ、普通、このくらいのレベルの時って、一つ上がるのにどのくらい掛かるんだ?」
彼が少し真剣な表情で聞くと、
「そうだな。冒険者のことは正直判らないが、傭兵なら一回の戦闘で二つ上がることもある。だが、一気に三つ以上上がるという話は聞いたことがない。普通は三つレベルが上がるのに実戦、かなりの激戦をこなしても三ヶ月は掛かるはずだ」
「ということは、実戦を含めて半年分のレベルアップを一気にやってしまったということか……あんまり人に言えないな」
「そうだな。あんまり無茶なことをすると、エセル嬢辺りから人外認定をされるぞ。ふっふっ、冗談だがな」
彼女は少し気が楽になったのか、珍しく冗談を交え、笑い声も出てきた。
エステルがその笑い声を聞き付け、病室に入ってきた。
「もうすっかり元気ね。やっぱり、レイ君が一番の薬かしら? そうそう、治療費は半金貨一枚、五十Cよ。いつでもいいから忘れないでね」
この世界の治療は治癒魔法を使ったものと、薬を使ったものに分けられる。治癒魔法を使えるものは少なく、薬草は冒険者が採取してくるため、いずれの方法も費用が高くなる。
エステルが請求した五十C=五万円という金額も、ヒドラの毒という非常に強力な毒の解毒の割にはかなり安く、普通であればその十倍金貨五枚と言われても、文句は言えない。
当然、この世界には健康保険制度がないため、全額負担であり、一般市民は滅多に治療を受けることはない。
治療費を支払った後、すぐ近くということで、ギルドに向かうことにした。
午前九時ということもあり、ギルド内は比較的閑散としている。
特に今日は天気が崩れるという予報も出されていることから、いつもより更に少ないようだ。
二人はまず巨大蛙の討伐依頼の完了を報告する。
一匹当たり十五Cの報酬であり、三個の魔晶石と合わせて、六十Cの報酬を受ける。
そして、ヒドラに関する報告を行うため、支部長に面会を申し込んだ。
「昨日、ターバイド湖でヒドラに遭遇しました。その件で支部長に報告したいのですが……」
しばらくすると、支部長室に通される。
中には鋭い目付きの五十がらみの男性が、椅子に座って待っていた。
彼はユアン・ソロウという元三級の冒険者で、数年前にケガのため引退し、ここモルトンの支部長に就任していた。
「ヒドラが出ただと。それもターバイド湖でか……その報告はギルドには来ていないな。ターバイド湖は危険地域に指定するか……」
ソロウ支部長は薄く目を開けて、彼らを睨みつけるように見ながら、そう呟く。
レイはその表情に、
(何か“その筋”の人みたいで怖いな。勝手にしゃべると怒鳴られそうだし……)
レイが支部長の姿に萎縮していると、アシュレイが堂々と話を始める。
「危険地域の指定は不要です。ここにいるレイが倒しましたから」
その言葉に支部長は目をカッと開き、
「ほう、証拠はあるのか。魔晶石を見せてみろ」
彼はビビリながら、腰の皮袋から大きな水色の魔晶石を取り出す。
「これがヒドラの魔晶石です。どうぞ……」
机の上に魔晶石を置くと、素早く手を引く。まるで、動物に噛まれないように手を引くような感じで。
その姿に支部長は更に睨みつけ、横ではアシュレイが面白そうに微笑んでいる。
支部長はその魔晶石を手に取り、繁々と眺めながら、
「確かに三級の魔晶石だな。水色か。水属性の三級、この辺りなら、ヒドラで間違いない。後で鑑定するが、お前たちの報告に間違いはないようだ。お前たち二人で倒したのか」
その問いにレイが、「二人で倒しました……」と答えたところに、アシュレイが、
「ほとんどレイが一人で倒しました。私は足手纏いでしたから」
支部長はニヤリと笑いながら、
「ほう、ついこの間、登録した新人だったはずだが、ヒドラを倒したのか。何を隠している?」
彼女は他言無用に願うと断った上で、レイが男爵を助けた話と、彼の持つ武器、アルブムコルヌ、ニクスウェスティスの話をする。そして、彼が魔法を自由に扱える話をすると、支部長の表情は次第に硬くなっていった。
そして、セロンの話になると、更に表情が硬くなる。
「その話はここだけの話として聞いておく。確かにセロンたちが、何かしたという証拠はない。オーブを調べるにしても、確かな証拠が必要だ」
二人はやはりという顔をするが、悔しいものは悔しいと苦い表情になる。
「ヒドラの魔晶石はとりあえず預からせてもらう。引き取り価格は追って連絡するが、問題ないか」
二人は顔を見合わせてから、頷く。
支部長との面談も終わり、二人はギルドを後にしようとしたが、待合スペースでセロンたちが待ち受けていた。
「何か大変だったみたいだな」
セロンが笑いながらそう言うと、アシュレイが怒りに打ち震えながら、何か言い出そうとしていた。レイはそれを手で押しとどめ、
「いや、稼がせていただきましたよ。あなたたちのおかげでいい目を見させてもらいましたよ」
レイが笑いながらそう言うと、セロンは憎憎しげに、
「ほう、満身創痍で閉門間際に、駆け込んできたって聞いたがな。大して稼いでいないんだろう?」
「間違いじゃないですか? 巨大蛙如きを相手に、満身創痍になるはずないじゃないですか。ターバイド湖は、今は蛙で溢れていますから、陸上の魔物も減っていますしね。ところで、誰に聞いたんですか、そんなデマ?」
「……守衛の奴らだ。酒場で話題になっていたから、偶然聞いた。何でもヒドラと戦ったとか何とか言っていたぞ。どうやって逃げてきたんだ?」
(よし、掛かったぞ! もう少し嵌めてやる……言葉遊びは僕の方が得意なはずだ……)
「ヒドラですか……そんなデマを? 守衛がですか? ところで、昨日は帰るのが早かったですね。相当稼いだんでしょうね」
「ふん、確かにヒドラと言っていたぞ。俺たちのことはどうでもいいだろう。狩りたいだけ狩る。飽きたから帰った。それだけだ」
「確か、昨日の昼過ぎ、”俺たちは十分稼いだから帰るわ”と言っていた気がするんですが。ちょっと、支部長を呼んで来てもらえますか?」
彼はセロンが何気なく言った「ヒドラ」という言葉を聞き、セロンが今回仕組んだことだと確信した。
そして、ギルドの中で告発するため、支部長を呼びにやらせたのだった。
すぐに、支部長は現れ、「何事か」と聞いてきた。
レイは、
「セロンさんが変なことを言うんですよ。私たちがヒドラと戦ったと。それを守衛から聞いた、それも酒場で聞いたと言うんですよ」
「それがどうした。警備隊の奴らが出入する酒場にはしょっちゅう行くんだ。あいつらは声がでかいから、いろんな話が聞こえて来るんだよ」
まだ、余裕の表情のセロンだったが、レイの次の言葉でその余裕を失う。
「確かに昨日守衛の方に助けていただきました。ですが、その方は私に宿まで付き添ってくれたので、酒場に行っている時間はなかったはずです。それにヒドラと戦ったと知っているのは、支部長を含めて三人しかいません。その全員に話さないよう口止めしているんですよ。どうして知っているんですか。もう一つ、昨日の昼過ぎに”蛙は十分仕留めた”と言っていましたが、何匹仕留めたんですか。四級のセロンさんなら、十や二十は仕留めているんでしょうね。教えてください」
セロンは自分が失言したことにようやく気付く。
そして、どうやって切り抜けようかと考えながら、
「守衛に言っていないっていうのは勘違いじゃないのか? 確かに俺は聞いた。それに俺たちが何匹魔物を倒そうが、お前の知ったことじゃないだろう」
「そうですか。支部長、守衛の方に確認してもらってもいいですか。理由は……」
彼はここで言葉を切り、セロンを睨みつけながら、声を大きくして告発した。
「四級冒険者のセロンを冒険者ギルドの義務違反、仲間である冒険者の謀殺、必要な情報の隠蔽で告発します! 彼らについての懸念は先ほどお伝えしたとおりです。支部長」
ギルド内は一瞬、シーンと静まり返る。
そして、ソロウ支部長が、
「判った。セロン、お前の言い分を聞こう。エセル、昨日のセロンたちのパーティの完了報告を調べてくれ」
エセルは一瞬、呆けるが、すぐにオーブから転送された情報を検索する。
「昨日のセロン様たち五名の討伐結果は、巨大蛙……二匹です……」
エセルは彼女の常識に照らし合わせてみても、四級と五級で構成された五人のパーティがたった二匹の蛙しか討伐していないことは異常以外の何物でもないと思った。
そして、ギルドにいる者全員が同じ認識だった。
支部長は、セロンに向かって、
「セロン、昨日の討伐結果が異常に少ないが、なぜだ? ああ、調子が悪かったのなら、それでもいいし、答えたくなければ、それでも構わん。だが、まともな答えを返さなければ、オーブを確認する」
セロンは心の中で、自らの失敗をどう挽回するか考えていた。
(くそ、口が滑ったわ。どういい逃れるかだ……思いつかねぇ……そうか、この手がある)
「昨日は何かやばい感じがしたんだ。虫の知らせって奴だ。そうしたら、偶然ヒドラが俺たちの方に向かってくるのが見えた。報告についちゃ、昨日するのを忘れていたから、今日報告するつもりだった。だから、こいつらがヒドラと戦ったんだろうと思ったんだ。酒場の話は勘違いだ」
レイはその言葉を聞き、自分が焦りすぎていたと悔やむ。
(まさか、こんな言い訳が通用するとは思わないけど、物証がないことに違いは無いんだ。オーブを確認することができなければ、言い逃れできてしまう……)
彼はまだ食い下がろうと、
「昨日、ターバイド湖ですれ違った時に、そのことを教えてくれなかったのはなぜですか。少なくとも仲間を危機に陥らせた責任はあるはず」
「俺たちと出会った時に言ったはずだ。お前が忘れているんだ。口だけなら何とでも言える。無実の罪で俺たちを告発した落とし前は付けて貰うぞ」
セロンは勝ち誇った顔でそう宣言すると、支部長に向かい、
「ギルドはどうするんだ? 確かに報告を忘れた俺たちに非はある。だが、それが義務違反であるっていうのは言いすぎじゃないのか。こいつらの言い分が正しいって証拠はどこにあるんだ?」
「だが、お前の言い分が正しいっていう証拠もない。自分が正しいと言うなら、オーブを見せれば済むはずだが、それができんのはなぜだ?」
「プライドだ。俺たち冒険者はプライドで生きている。仲間を見捨てたって言われて”はいそうですか”ってオーブを見せられるか! 支部長も判るだろう!」
ギルド内の雰囲気は、オーブを見せるべきだというものだったが、セロンの言い分にも同意できる部分があるという流れになりつつある。
更にセロンは、
「ここまで言われたら、オーブを見せてやる。但し、俺に決闘で勝てたらだ。どうだ、この勝負、受けるか!」
ここで、今まで黙っていたアシュレイが声を上げる。
「貴様、そこまで腐っているのか! その勝負、私が……」
そこまで口にしたところで、レイが彼女の腕を掴んで黙らせ、
「その勝負、私が受ける! 決闘のルールを知らないから、後で支部長に聞く。詳細は後で連絡するのでどうだ?」
セロンはしてやったりという顔で、
「良いだろう。但し、決闘は十日以内。武器は自分の武器を使用。これ以外の条件は全部決めさせてやる。好きにしろ!」
そして、セロンはギルドを出て行った。
残されたレイは、
(勢いで言ってしまった……でも、アシュレイが戦うより、僕の方が勝てるチャンスがあるはずだ。魔法を使うことは禁止されていない……でも、対人戦ができるのか、僕に……)
そんなことを考えていると、横にいるアシュレイが乱暴に自分の方を向かせ、
「なぜ、私にやらせない! お前では勝てない……私でも勝率は低いのに……」
「ごめん。でも、アシュレイの体調が回復するか判らないし、僕がやった方がチャンスはある……と思う。それにもしアシュレイが勝負をして負けたら、何をされるかと思うと……」
彼女は少し顔を赤くするが、すぐにそんな状況ではないと思い直す。
その時、ソロウ支部長が、「レイ、アシュレイ。二人とも支部長室に来てくれ」と言って、二人を引き連れ、ギルドの奥に入っていった。




