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トリニータス・ムンドゥス~聖騎士レイの物語~  作者: 愛山 雄町
第三章「冒険者の国・魔の山」

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第十五話「撤退」

 アシュレイたちが外に出ると、二百mほど先に殺人蜂(キラーホーネット)の群れが見えた。

 キラーホーネットたちはヘリコプターのようなブアンブアンという羽音をさせ、猛スピードで接近してくる。


「治癒師と弓術士は洞窟の中に退避! レイ! 魔法で迎撃してくれ! ステラ! レイの援護を! 剣術士と槍術士は洞窟の入口を守ってくれ!」


 レイはアシュレイに軽く頷き、すぐに刃の竜巻(トルネードスラッシュ)の呪文を唱え始める。


「数多の風を司りし風の神(ウェントゥス)よ。荒ぶる竜巻、乱舞する刃を我に与えたまえ。我が命の力を御身に捧げん」


 精霊の力を溜めたところでキラーホーネットが近づいてくるのを待ち受ける。

 三十mほどに近づいたところで、魔法を発動させた。


「我が敵を引き裂け! 刃の竜巻(トルネードスラッシュ)!」


 魔法を発動させた瞬間、キラーホーネットたちは上下左右に一斉に展開し始めた。

 レイはその動きに「何!」と驚く。それでも、放たれた竜巻を制御して半数のキラーホーネットを叩き落とした。


(前のキラーホーネットはこれほど賢くなかった。闇雲に襲い掛かるだけのただの昆虫のはずだ……なぜ、僕の魔法を避けられたんだ?)


 呆然とするレイにステラが「来ます!」と声を掛ける。

 レイは我に返り、更に光の連弩を組み上げていく。


「世のすべての光を司りし光の神(ルキドゥス)よ。御身の眷属、光の精霊の聖なる力を固めし、光輝なる矢を我に与えたまえ……」


 生き残ったキラーホーネットたちは、他の冒険者たちには目もくれず、呪文を唱えるレイに殺到していく。彼の前にはステラが陣取り、近づいてくる蜂たちを彼に寄せ付けまいと奮闘する。

 アシュレイもレイの防御に向かうが、機敏に動くキラーホーネットにはなかなか当たらない。

 アルドとボリスも駆けつけるが、二人の攻撃もなかなか当たらず十匹近くの殺人蜂が五人にたかっていた。

 アシュレイたちが駆けつけたことで時間が稼げ、ようやくレイの魔法が完成する。


「……御身に我が命の力を捧げん。我が敵を貫け! 光の連弩マルチプルシャイニングボルト


 彼の左手から光の矢が放たれる。アシュレイを攻撃していたキラーホーネットを撃ち落す。一向に怯むことのないキラーホーネットに対し、次々と光の矢を放ち、五匹のキラーホーネットを撃ち落した。

 周囲にはまだ数匹のキラーホーネットが飛んでいたが、数が減ったことからステラたちの攻撃が決まり始め、ステラが二匹、アシュレイ、アルド、ボリスも一匹ずつ叩き落すことでキラーホーネットを全滅させた。

 すべてのキラーホーネットに止めを刺していくが、レイは今回の殺人蜂(キラーホーネット)の動きが気になっていた。


(明らかに魔法を避けた。それに僕だけを狙ってきた。まるで天敵を狙うかのように……ただの昆虫の本能かもしれないけど、嫌な予感がする……)


 アシュレイも突然の襲撃に驚くと共に、今回見つけた魔法陣が関係しているのではないかと考えていた。


(偶然にしてはタイミングが良すぎる。調査を諦めて一旦ペリクリトルに戻るべきか……)


 アシュレイは主要なメンバーを集め、今後の方針を伝える。


「先ほど見つけた魔法陣の情報をペリクリトルに伝える。一旦、ティセク村に戻り、明日の朝一番にソーンブローに向けて出発する」


 アルドやボリスはその決定に首を傾げる。


「ランダルの親父の依頼はこの辺りの調査だ。キラーホーネットが出てきたが、それ以外の魔物には遭遇していねぇ。急いで戻る必要があるのか?」


 ボリスの疑問にレイが答える。


「闇の神殿らしき跡と謎の魔法陣。この情報は一刻も早く届けないと。それにさっきのキラーホーネットの動きがおかしかったんです。魔法を使う僕を狙ってくるなんて、今までなかったことですから」


 そして、アシュレイがもう一つの事実を付け加える。


「昨日、ステラが感じていた視線が気になる。もし、魔族なら……本来なら一気にソーンブローに戻りたいところだが……」


 既に太陽な中天近くまで昇っており、二十五km離れたソーンブローに向かうことは現実的ではないと彼女は判断した。


「確かにこの情報は重要かも知れねぇが……とりあえず、ティセク村に戻る案には賛成だ」


 アルドが賛成したことから、急いでティセク村に戻ることにした。


 アシュレイは魔物の待ち伏せの可能性を考え、昨日と同じように斥候を出すことにした。


「ステラ、ファン、前方の安全を確認してくれ。他も周囲の警戒を怠るな!」


 そう言ったあと、ステラだけに


「嫌な予感がする。もし、あの視線を感じたら敵がいなくても戻ってきてくれ」


 ステラは「はい」と頷いて、ファンと共に斥候に向かった。



 ステラとファンの二人は本隊の三百mほど前方を、身を低くして進んでいた。しばらくすると、小さな丘があり、その先に魔物の気配があることに気付く。

 慎重に進んでいくと、彼らの前方約二百mの位置に巨大な人影を複数見つけた。


「オーガです。ファンさん、アシュレイ様にオーガが三体いるとお伝えください」


 ファンは「了解」と頷き、「あんたはどうするんだい?」と確認する。

 彼女は前方を見つめたまま、「私はここで見張っています」と答える。


 ファンは小さく頷くと静かにその場を離れ、アシュレイに報告に向かった。

 残ったステラは、巨大な棍棒を持つオーガを見つめながら、この状況について考えていた。


(オーガが三体……半端な数ね。群れにしては少ないし、はぐれでもなさそう。操り手(テイマー)もいない。どういうことなのかしら?)


 彼女は待ち時間を利用し、更に周囲を偵察していった。


 ファンからの報告を受けたアシュレイは、アルドとボリスを呼び、オーガの情報を伝える。


「五百mほど先にオーガが三体いるそうだ」


 そして、迂回するか、攻撃するかを協議していく。


「迂回することも可能だが、私の班とボリス、アルドの班で攻撃を掛けようと思う。何か意見はあるか?」


 オーガ三体と戦うと聞き、アルドとボリスは驚く。

 ボリスが「オーガは三級の魔物だ。安全を考えるなら迂回すべきだろう」と言い、アルドもそれに頷いている。


「先ほどのキラーホーネットといい、今回のオーガといい、どうも待ち伏せされているような気がするのだ。それに奴らが我々を追ってくる可能性もある。はぐれにしては数が中途半端だから群れと合流されると厄介だ」


 ここで言葉を切り、にやりと笑いながら、


「我々で二体は倒す。八人で一体なら問題ないと思うが?」


 二人は先ほどのレイの魔法を思い出すが、それでも「三人で二体だと」と絶句してしまった。


「チュロックでは私とレイの二人で二体倒している。ステラも加われば特に問題はない」


 自信有り気に言うアシュレイにアルドが頷く。


「俺はアシュレイに乗る。どうする、ボリス?」


 ボリスは渋々といった感じだが、「判った。だが、やばくなったらすぐに引くぞ」と釘を刺していた。

 アシュレイは「了解した」と頷き、全員に向かって、


「前方にオーガが三体いる。私の班、アルドの班、ボリスの班で排除する。ヘーゼルの班は周囲の警戒を頼む」


 ヘーゼルが少しホッとした表情を見せるが、その後ろではライアンが不満を漏らしていた。


「俺たちは警戒だけかよ。攻撃力なら俺のハルバートとルナの弓は役に立つぞ」


「そうだな。ルナは弓術士として攻撃に加わってくれ。ライアン、お前はそのまま周囲の警戒を頼む。お前の力は理解しているつもりだが、経験が足りぬ。今回は後方の確保を頼む」


 アシュレイの言葉にライアンは尚も言い募ろうとしたが、ヘーゼルに止められ渋々引き下がる。


 アシュレイたちは徒歩でオーガたちのところに向かった。



 ステラはオーガの周辺を偵察したが、別の魔物がいるという兆候はなく、あの視線も感じていない。

 元の場所に戻りアシュレイからの指示を待つことにした。

 数分後、アシュレイたちが到着した。


「オーガを倒す。周囲に他の魔物の気配はないな? 昨日の視線は?」


「周囲に魔物はいません。視線も感じません」


 アシュレイは弓術士を丘の中腹に隠し、剣術士と槍術士を近くの草むらに伏せさせた。


「この場所で迎え撃つ。私の班が囮になって、ここに引き込むから、草むらに伏せていてくれ。弓術士は私の合図で一斉に攻撃を加える。体に矢は効かぬ、顔を狙ってくれ。剣術士、槍術士は私の合図があるまで飛び出すなよ」


 全員が頷くと、「奴らの攻撃は強力だ。当てることより当てられないことを考えてくれ」と付け加える。


 アシュレイ、レイ、ステラの三人は体を低くしてゆっくりと接近していく。

 オーガの一体がレイたちに気付く。そのオーガは怒りの咆哮を上げ、彼らに向かって走り出した。他の二体もすぐに気付き、後に続いていく。


 三人はオーガから逃げるように元の場所に走り始めた。そして、時折、後ろを確認しながらタイミングを計る。

 オーガは咆哮を上げながら、ドシンドシンと地響きを立てて彼らを追う。


 伏兵がいる場所を通り過ぎたところで迎え撃つため、三人は足を止め、武器を構える。

 オーガが伏兵のところを通り過ぎた瞬間、アシュレイが「撃て!」と射撃を命じた。

 ミレーヌ、ニール、ルナの三人の弓術士が一斉に立ち上がり、矢を射り始めた。

 オーガは突然、矢が飛んできたことに驚き、足を止める。そして、弓術士の方に向かおうとしたところで、アシュレイの次の命令が発せられた。


「伏兵! 攻撃開始!」


 そう叫んだ直後、自らもオーガに向かって突撃を開始する。

 レイとステラも彼女に続き、オーガは前後から挟まれる形で攻撃を受けることになった。


 ボリスはオーガの背後から攻撃を掛けながら、


(さすがにうまいもんだ。だが、今回の攻撃は無駄だな。俺たちなら逃げの一手でおしまいだな)


 アシュレイは先頭のオーガと相対していた。オーガが丸太のような巨大な棍棒を振り下ろすが、彼女は体を時計回りに回転させることで回避し、その動きのまま、オーガの右足に剣を叩きつける。彼女の剣はオーガの太ももを大きく切り裂き、辺りに血を撒き散らしていく。

 それでもオーガは戦意を失わず、振り下ろした棍棒をそのまま横薙ぎに叩きつけようとした。

 アシュレイはその大振りな一撃を軽く頭を下げることで難なく回避し、更に振りぬいて伸びきったオーガの手首に向け、剣を斬り上げる。

 その攻撃はオーガの左手首を断ち切った。断ち切られた手首は棍棒を掴んだまま残り、不気味な飾りと化していた。

 オーガは痛みのため苦しげな咆哮を上げる。


 レイはアシュレイの横から、左側にいるオーガに向けて槍を突き込んでいく。

 オーガはその槍を棍棒で叩き折ろうと大きく振るう。だが、レイの攻撃はフェイントだった。彼はすぐに槍を引き戻し、横に飛ぶように移動した。そして、がら空きの脇腹に渾身の力を込めて槍を突き入れていった。

 彼の槍はオーガの右脇腹――人間で言う肝臓辺り――を深く抉り、オーガは痛みに我を忘れ棍棒を振り回し始める。


「後ろ! 気を付けて! 闇雲に振っているだけだから、よく見れば避けられる!」


 彼の指示を受け、アルドとチェスターは、後ろからの攻撃を中止し、距離を取る。

 レイはそれを確認すると、無詠唱で槍に光の精霊の力を纏わせ、オーガの腕を狙っていた。闇雲に振るオーガの腕の動きは単調で、彼はタイミングを合わせて右肘を斬り付けた。

 ステラの腰ほどの太さがある腕だが、魔法を纏わせたレイの槍の穂先はバターを切るようにその腕を斬り裂き、半ば断ち切られた腕から丸太のような棍棒が落ちていく。

 そのタイミングをアルドとチェスターのコンビは見逃さなかった。二人は後ろから同時に膝の裏を攻撃し、オーガは膝を折りながら仰向けに倒れていった。


 残りの一体にはステラが立ち向かっていた。

 彼女はオーガの攻撃を避けながら、双剣で少しずつ傷を与えていく。

 オーガは当たらない攻撃と次第に増えていく傷に苛立ちが募っていく。更に彼の後ろからボリスとエリスが執拗に攻撃を加え、オーガの下半身は徐々に血塗れになっていった。

 そこに弓術士のルナの矢がオーガに向かって放たれる。彼女の矢はオーガの顔、頬の辺りを貫き、オーガは憎しみを込めた視線をルナに向けていた。


(さすがに三級の魔物ね。この距離でも足が竦むわ。ライアンを攻撃に加えなかったアシュレイさんの判断は間違っていないわ……それにしても、あの三人の戦闘力は異常ね)


 レイが相手にしていたオーガはアルドとチェスターが止めを刺した。

 レイは隣で戦うアシュレイの援護に回り、片手で棍棒を振り回すオーガに突きを放つ。

 レイの参戦でアシュレイへの圧力が減った。彼女はその時を待っていたかのように敵に背を向けるほど大きく振りかぶり、腰の捻りを加えた斬撃をオーガの右膝に叩き込む。

 レイに注意が向いていたオーガは、右膝に受けた衝撃でバランスを崩して転倒する。

 レイは倒れたオーガの喉に突きを入れ、止めを刺していた。


 ステラの戦っているオーガは、出血で徐々に動きが緩慢になっていった。ステラは双剣を振りながら、オーガの周りを舞うように攻撃を加えていく。

 さすがのオーガも足元に血溜まりができるほどの出血には勝てず、遂に膝を付いた。

 後ろからボリス、エリス、フランクの三人が渾身の突きを放ち、オーガはその勢いで前方に倒れて絶命した。

 すべてのオーガを倒したことを確認したアシュレイは、「みんな良くやってくれた!」と声を上げる。そして全員を見回し、「けが人はいないな」と負傷者の有無を確認する。

 けが人がいないことを確認したアシュレイは、すぐに出発の準備を始めた。

 ステラに「斥候に出れそうか?」と小さな声で聞くが、ステラは「大丈夫です」と大きく頷く。


「ステラとファンはもう一度斥候を頼む。他のメンバーは魔晶石の回収をしてくれ」


 ボリスは三級の魔物オーガ三体と戦い、無傷で勝利したことに驚いていた。


(オーガは三級だぜ。それを無傷で……俺たちだけなら一体でも重傷者を出したはずだ。五級の傭兵と聞いたが、実力は三級並だということか。それ以上に人の使い方がうまいな。俺なら馬鹿力のあるライアンは外さねぇ。逆に弓術士は役に立たねぇと外しただろう。ランダルの親父の言った“俺たちのためになる”っていう意味がようやく判ったぜ……)


 ステラたち斥候が先発したあと、アシュレイたち本隊もティセク村に向けて出発した。



 その様子を遠くから見つめている一人の女性の姿があった。

 昨日、ステラを見ていた黒い翼を持った女性、月魔族のヴァルマ・ニスカだった。

 ステラに勘付かれたため、昨日より更に距離を取り、ステラに視線を向けないように注意しながら、今の戦いを観察していた。


(まさか魔法陣を見られるとは思わなかったわ。折角得た拠点だけど、処分しなければ……)


 そして、アシュレイたちの戦いを思い出し、


(それにしてもあの冒険者たち、いいえ、あの三人は異常だわ。私が操る殺人蜂(キラーホーネット)で充分倒せると思ったのに……まさか、念のため用意したオーガまで倒されるなんて。やはり、バルタザル――チュロックに攻撃を掛けた大鬼族の操り手(テイマー)――の言っていた魔術師のようね……それにしても、なぜその魔術師がここに? まさか計画が漏れている?)


 そう考えた瞬間、ヴァルマの白く涼やかな美しい顔に翳りがさす。そして強く腰に差した剣の柄を握り締め、


(あの街に帰してはいけないわ。ここで倒しておかないと……私と翼魔だけではあの三人に勝てそうにない。そうなると本格的な夜襲は無理ね。もちろん嫌がらせ程度はするけど。やっぱり帰り道で罠に掛けるしかない……)


 彼女は大きく翼を広げ、東に向けて羽ばたいていく。



 オーガを倒したあと、ハーピーの群れに襲われたが、レイとジニーの魔法と弓術士たちの弓で何とか追い払う。

 そして、正午過ぎ、ティセク村に戻ってきた。

 アシュレイはすぐに全員に指示を出していく。


「魔物の襲撃に備えろ! アルドの班は罠の設置を頼む。ボリスとヘーゼルの班は拠点の強化をやってくれ。ステラ! 周囲の警戒を頼む! レイ! お前は休憩して魔力を回復させてくれ!」


 アシュレイの指示に全員何も言わずに従っていく。

 レイは拠点の民家に入り、どっかと腰を下ろす。


(さすがに魔力の使いすぎだな。夜襲の可能性もあるし、あの魔法陣、どこかで見たことがあるような気がするんだよな……魔法陣なんてアニメで出てきたものか左手のものくらいしか知らないのに……)



 罠の設置や建物の強化も終わり、夕食を取ったあと、アシュレイはその場で今夜の警備体制を発表した。


「夜襲の危険がある。悪いが二班ずつの二交替制で警戒に当たるぞ。私の班とヘーゼルの班、ボリスとアルドの班だ。ボリス、そっちはお前が仕切ってくれ」


 ボリスが頷くと、アシュレイは明日の予定を伝えていく。


「明日の朝は夜明けと共に出発する。野営道具などは放棄する。出来るだけ軽装でソーンブローまで突っ切りたい」


 野営道具を放棄することに数人から反対の声が上がったが、


「補償はランダル殿に掛け合う。もし、補償されなくとも私の報酬から補填する。それなら問題ないだろう」


 その言葉に皆、黙って頷くが、ヘーゼルは急ぐ理由が判らず、


「そこまで急ぐ必要があるの? 確かに数は多かったけど、あなたたちがいればあの程度の敵は問題ないんじゃなくて?」


 アシュレイはその問いに首を横に振る。


「もし、魔族が絡んでいるとすれば、今この瞬間も危険なのだ。確かにレイの魔法は強力だが、万能ではない。魔力の限界もある。今日のキラーホーネットもレイの魔法を見越して攻撃してきた節がある。そうだな、レイ?」


「うん。キラーホーネットは攻撃を受ければ、素早く避けるんだけど、魔法が発動した直後に回避行動に入っていたんだ。あれは魔法を知っているものが、動かしているとしか思えないんだ」


 ヘーゼルはうーんと唸り、


「偶然っていう可能性は? それにこれで帰っても依頼達成にならないんじゃないの?」


 それに対し、アシュレイは、


「その点はランダル殿に掛け合う。闇の神殿と魔法陣の情報を受取れば、十中八九依頼達成を認められると私は確信しているがな」


 あまり納得していないようだが、ヘーゼルもそれ以上は追及してこなかった。

 アシュレイは何事もなく戻れるなら、報酬を返上してもいいとさえ思っていた。


(これ以上、魔族絡みの話には首を突っ込みたくないというのが正直なところだ。レイはこの情報でペリクリトルが危険だと何かしようとするだろう)


 そして、ライアンと楽しそうに話をしているルナと、彼女をチラチラ見ているレイの姿を見ながら、


(唯でさえあいつは無鉄砲なのだ。それにあの女がいると悪い方に向かう気がして仕方がない。早くペリクリトルを離れたほうがいい。そのためには無事にこの場所を離れなければならない……)


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