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僕らに吹く風に揺れる花  作者: ヨハン
引き寄せられる春
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従姉とか分岐点とか

今回の話で1章は終了です

「ただいま」


「お兄、おかえり~」

 

 ぱたぱたと足音を立てて出迎えてくれたのは私服姿のリンだった。

 リンは俺の体に腕を回してくる。いつものこととはいえそろそろ辞めさせたい、そう思い始めて早数年。未だに辞めてはくれないらしい。


「ただいま……だから抱きつくなっていつも言ってるだろ」


「むー……」


 リンは可愛く頬を膨らまし俺から離れた。普通にしてれば可愛い妹なんだがなぁ。


「ハル、おかえりなさい。相変わらずリンはハルが大好きなのねー」


 そう言って後から出迎えてくれたのは、優しそうに微笑む二十代半ばの女性。数日前から居候することになった従姉、美里琴音(みさとことね)だ。

 数日前。琴姉とは久しぶりに再会した。急にどうしたのかと思ったが、理由を聞けば容易にその理由が理解出来た。

 琴姉は教師をしている。そして人事異動により俺達の通う天鳴学園に来た。

 勤務先は近い方が良いとのことで、両親が彼女を我が家に居候するように薦めた。


「琴姉、あんまりリンをからかうなよ。そんなわけないだろ?」


「……」


 何故かリンはむすっとして睨んでくる。


「ハルも相変わらずよねぇ……」


「そうかな」


「そうよ。…………相変わらず--」


 琴姉は何かを言ったようだが言葉の最後の方は聞き取れなかった。




「おばさん、片付けは私がやっておくんで先にお風呂入ってくださいっ」


「あら、いいの? それじゃよろしくね、琴ちゃん」


 夕食後、琴姉は食器を片付けながら言った。

 父さんは帰りが遅くなるらしく、夕飯は四人で食べることになった。

 リンはソファの上でごろごろと食休みしている。

 俺は食器を重ねる琴姉を手伝っていた。


「ハルも休んでていいのよ?」


「琴姉に任せると不安だから」


「私だって片づけくらい出来るわよー!」


 と言った矢先のことだった。


「きゃっ!」


「おっと!」


 俺は何とか食器を受け止めつつ琴姉の体を支える。

 

「言わんこっちゃない」


「うぅ……ごめん」


 てか今自分で自分の足踏んでたし。


「琴姉は結構ドジだから放っておけないんだよな」


「返す言葉もございません……」


「まぁ、いいや。怪我は無いみたいだし」


「琴ちゃんも相変わらずねぇ」


「母さん!?」「おばさん!?」


 俺と琴姉はほぼ同時に声を上げた。リビングのドアの隙間から母さんがこちらをちょこんと覗いていた。


「風呂行ったんじゃ?」


「琴ちゃんはドジっ子だから見守ってたのよ、うふふ」


「おばさんまで……」


「まぁ、でも……ハル君と夫婦みたいで面白いわね」


 そう言われてようやく気づく。

 左手には食器があるが、右手……性格には右腕がしっかりと琴姉の体を抱きとめていることに。 


「ご、ごめん。琴姉」


「う、ううん、ありがとねハル」


「青春ねぇ……」


「いいから早く風呂行きなよ……」


 母さんはどうしてここまで人をからかうのが上手なんだろう。

 なんとなく目を逸らし、リンを見る。すると、リンは不機嫌そうにこちらを見ていた。


「琴姉が羨ましいなぁ……」


「り、リン? あたしは別にこうなりたくてなったわけじゃないのよ!?」


「あー、琴姉。放っておいていいよ。なんか時々不機嫌だから、リンは」


「それってハルが原因だとも思うわよ……」


「なんでだよ?」


「……普通に分かるでしょ」


「……?」


 思春期で反抗期なのかそれともアレなのか。

 

「とりあえずリン。機嫌直せよ……てかなんで怒ってんだ?」


「……もういいもん!」


 リンはそう言って自分の部屋へ戻ってしまった。







「それにしても、昔に比べて毎日楽しそうね」


「まぁ、楽しいからな」


 俺と琴姉はお茶を飲みながらのんびりしていた。

 ゆっくりと時間が流れるようなこの雰囲気は凄く平和だった。


「新しい友達は出来た?」


「まぁ、出来たっちゃ出来たのかな」


「そう、それは良かったわね……」


 そう言って琴姉は優しい笑みを浮かべた。

 

「アンタ、中学校の頃は無気力だったから」


「そうだっけ?」


「そうよ。私に何度叱咤激励されたことか」


「そんなことも……あったな」


 思わず苦笑いが零れる。

 確かに、あの頃は今のような平和な日常は送れてなかった気がする。いつも無気力で、周りに心配をかけてばかりだった。

 それでも、色々な人に支えられていた。


「まぁいいわ。それで……ハル、好きな子出来た?」


「……何言ってるんだよ。そんなわけ……」


「ないわけじゃないでしょ?」


 確かに俺の周りには個性的だけど素敵な子はたくさんいると思うけど。

 好きな人がいないのは確かだ。


「ま、ハルの人生はハルが決めることだしね」


 琴姉はニコッと笑って俺の手に肩を置いた。 

 

「とりあえず今は楽しければそれでいい気がするよ」


「そうそう、今は青春を謳歌しなさい。そうしないと私のように……」


「年遅れると」


「分かってる、分かってるわよ……ふふふ……ふふふ」


 あ、やばい。

 

「お、俺はとりあえず部屋に戻るよ!」


「ちっ……逃げるのか」


 なんだか琴姉が怖いので俺は逃げるように部屋へ戻った。

 部屋へ戻ってから、ベッドに横になる。

 なんとなくゲーム機の電源を入れる。

 今やってるゲームは『僕らへ吹く風』という美少女ゲームだ。ちなみに成人向けに近い。

 主人公が周りのヒロイン達と毎日を過ごし、変化していく関係とどう向き合うかを描いたゲームらしい。

 ちなみにヒロインは幼馴染、義妹、ボーイッシュやツンデレやロリなどのクラスメイト、従姉の六人。

 今はちょうど分岐点。つまりルートの選択だ。

 画面には選択肢が表示される。

 ここからそれぞれの物語が始まるらしい。誰から攻略してもいいらしいが、正直迷う。

 誰にしようか。

次回からは章ごとにヒロインのエピソードを書くというギャルゲ方式です。最初のエピソードが誰になるかは僕の気分次第ですねw

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