合宿!
リンルートは際どい描写が多くなりましたね、反省はしてない
夏休み。期末テストをなんとか乗り越え、終業式を終えた俺達に与えられた至福の時間。そんな夏休みは早くも一週間が過ぎた。
俺は家の家事をしたり、たまに誠也と遊びにいったりするくらいで基本毎日そんなに変わらなかった。
リンとは特にどこかに出かけたりしていないので、いずれどこかに行きたいとは思う。
ただ、リンは夏休みに入って以来少し起きるのが遅くなり、起こしに行けばおはようのキスってことでキスさせられたり……正直以前よりもかなり甘えてくるようになった。
可愛いからいいのだが、流石に恥ずかしかったりするのでたまに拒否る(としょぼーんって顔になるのでこれはこれで面白い)。
さぁ、今日もリンを起こしに行かなければ。
俺はリンの部屋のドアの前に立つ。
「リンー」
返事なし、よし入ろう。
部屋に入ると、ベッドでタオルケットをかけたリンがもぞもぞと動いていた。
「なんだ起きてるのかよ。もうすぐ九時だぞ、そろそろ一階に降りてこい」
「あっ……」
タオルケットを剥ぐとリンが声を上げる。
「……朝からお元気なことで」
最近のリンは寝る時に上だけパジャマの服で、下は短パンのジャージという格好だ。
そんな彼女の左手はパジャマの服の中、右手は短パンのジャージの中へ入っていた。まぁ、明らかに不自然な格好だしなんとなく服装が乱れてる気もする……つまりそういうことだ。
「ハル兄……これは……その……」
「言い訳無用。ちゃんと手を洗ってから朝飯食えよ」
母さんは用事があって出かけてて夕方まで帰ってこず、父さんと琴姉はいつも通り仕事に行っている。
一人で朝飯を食べるリンは気まずそうだった。
まぁ、それもそのはずだった……あんな姿を見られたのだから。
俺のあの対応も逆に精神的なダメージにはなってると思う。
ソファに寝転がりながらリンを見てそんなことを考える俺だった。
「そういえば、今日から調理部で合宿だっけか」
「うん……」
「昼頃に学校集合、そこから皆で合宿する場所まで移動だよな?」
「うん……」
うわ、やっぱりすげー落ち込んでる。
「り、リン? 落ち込むなよ、別に俺に見られたって恥ずかしくないだろ? もっと恥ずかしいことだってしたんだから」
明らかに暗い妹に対して少し焦った俺はそんなことを口走ってしまう。
リンはおもむろに食べた朝飯の食器をキッチンまで運び、冷蔵庫から麦茶を取り出して飲む。この間ずっと無言。
そして俺の寝転がっているソファまで近づいてきて、俺を涙目で睨む。
思わず寝転がっている体制から起き上がり、普通に座っている体制になってしまう。
「考えてた相手に現場を見られて恥ずかしいに決まってるじゃん! そしてそんな生々しいこと言わないでよ馬鹿!!」
怒られた。
うーん……女心は難しいな。
「うぅ……お嫁に行けないよ……」
「リンは俺の嫁だろ何言ってんだ」
「あ……そ、それもそうだよね」
納得してしまうリン。
実際に嫁にもらえないのが辛いよな……。
「あー……でも……恥ずかしい……」
リンは俺の隣に座って両手で顔を抑える。
「ハル兄は……私がああいうことしてるって知って……幻滅した?」
「その理論だと俺も幻滅されてしまうんだが……」
「そ、そうなの? なら……良かったのかな……」
肩に頭を乗せてくるリン。
これは……朝からいい雰囲気な気がする。
「ハル兄……」
「リン……」
リンがとろんとした目で見つめてくる。
そして、俺とリンの顔の距離が近づく。
「あのー」
「「!!?」」
突如後ろから聞こえた声に振り向く。
「朝からいちゃいちゃするのもいいけどほどほどにー」
そこには琴姉がいて、不機嫌そうな目で俺達を見ていた。
「あ、あの。琴姉さん、いつからそこに?」
「えー? ハルが合宿の話をした辺りかなー」
「げ」
それってつまり……。
「痴話喧嘩もしっかり聞いちゃった」
琴姉がにっこりと楽しそうに笑った。
「ふーん、あんた達ってもうそこまで進んでたんだー……ほー、ほー……」
悪戯っぽい笑みを浮かべて琴姉が近づいてくる。
「リンは俺の嫁……リンは俺の嫁……リンは俺の嫁!」
「三回も言うな!!」
「おっと失礼。いくらお姉ちゃんといえども弟と妹の関係に口を出しちゃいけないわよね」
そう言いつつも琴姉はにやにや笑っている。
「まぁ、あんた達の関係なんて以前から知ってるけどさ」
「もういいよ……最後まで言わないでくれ」
「私の6.0の視力にかかれば楽勝なんだからねっ」
「分かったから広大なサバンナに帰れ」
「ひどっ!!」
琴姉は露骨にショックを受けた顔をする。
「てか、仕事に行ったんじゃないの?」
「忘れ物したから戻ってきたのよ。だけど、弟と妹がいちゃいちゃしてて気まずくて……」
「……ごめん」
「もういいから私も混ぜなさい」
「だめっ! ハル兄は私のものだもん!」
おそらく、というか絶対冗談で言った琴姉に対してリンが横から凄い勢いで否定する。
「あらら、リンが妬いちゃってる。可愛いわね……ハル、リンをよこしなさい」
「やだよ、俺のだし」
「……この二人は息ぴったりなのかちくしょう……」
「琴姉、そんなこと言ってるとますます年――」
「あ゛?」
「ごめんなさい」
年遅れる、と言おうとしたが命の危機を感じたので素直に謝った。
「ま、私はそろそろ行くわね。二人も出発時間には遅れないように」
まるで先生のような口調で(というか先生だけど)琴姉はそう言い残し家を出る。
「ふぅ……なんだか嵐のような数分間だった気がする」
「急に帰って来てるんだもん……びっくりだよね……」
俺とリンは安堵の息を吐きつつソファに座る。
「……続きから再現しますか?」
「お風呂に入らなきゃならなくなりそうなので遠慮します」
リンにやんわりと断られる。
しかし、そう言いつつも腕にくっついてくる彼女に少し戸惑ってしまう。
「お、おい」
「それに……まだ明るいし……」
「っ――!」
頬を染めてそんなことを言うリンが可愛すぎて内心悶絶してしまう。
どんどんべったりになっていくなぁ……俺達。
「だから、今はこれだけね」
頬に柔らかい感触。
そんな状況に、思わず顔が緩んでしまうのであった。
その後昼頃まで二人でまったりと過ごし、時間になったら家を出る。
「忘れ物はないか?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ行くか」
「うんっ」
一度学校へ向かい、そこから全員でバス停まで歩くらしい。
風花も一緒に行こうとしたが、少し遅れそうだから先に行ってて良いとのこと。
そんなわけで二人で学校まで歩く途中、隣のリンに尋ねる。
「荷物重くないのか? 俺が持つぞ?」
「もう、大丈夫だってば」
苦笑混じりにリンが言った。
「それに、ハル兄の両手埋まっちゃったら……」
少し俯き、頬を赤らめつつリンが俺の手を握ってくる。
あぁ、そうか。
「こっちの方がいい……」
「うん、俺もだ」
俺は笑いかけて手を握り返す。
リンの手はとても柔らかくて暖かい。
そういえば……。
「昔もよく手つないよな」
「ん、そうだね……あの時は私とふー姉がハル兄の両手を引くことも多かったけど。今考えれば……あれはハーレム?」
「かもな」
肩をすくめて同意する。
昔から二人とも可愛い子だったし、他の男子に羨ましがられたりもしたもんな。
「でも、今は幼馴染とかじゃなくて……恋人同士なんだね」
「……あぁ」
「私、毎朝起きる度に夢なんじゃないかって思っててさ……本当に、夢じゃないんだ」
そうか、そういうことなら毎朝キスをねだってくるのも分かる気がする。
「夢なんかじゃないよ。俺がリンのことを好きなのは事実だ」
「ありがと……私は夢でも現実でもハル兄のこと大好きだけど」
リンはそういうと、手のつなぎ方を変えてくる。
指同士を絡ませ合い、ぎゅっと握る。恋人つなぎって言うんだっけ。
「さ、行こう。ハル兄」
リンの顔に笑顔が咲く。
きっと俺達はこの時――本当の恋人同士になったんだと思う。
学校に着くと、もうすでに何人か集まっていた。
「リン、手つないだままでいいのか?」
「え、あ、うーん……どうしよ」
と言いつつも全く離す素振りを見せないリンに苦笑してしまう。
その時、後ろからポンと肩を叩かれる。
「よ、二人とも」
「優希先輩!?」
「そんなに驚かなくてもいいじゃん。なんか、私も同行したくなってさ」
優希先輩は爽やかに笑う。
そして、俺達のつながれた手に気づきじっと凝視する。
「お……おう? もしかして二人って……」
「こんにちはー、優希先輩。ハル君とリンちゃんも」
「あ、風花。なぁなぁ、この二人って」
「恋・人・同・士、なんですってよ奥さん」
「あらやっだ~……若いっていいわねぇ……」
風花と優希先輩はわざとらしく世間話に花を咲かせるおばさんの真似をする。うわぁ……なんかちょいちょいイラッとするような。
と、ここで俺は一つ疑問に思う。
「そういえば風花に付き合ってること言ったっけ?」
「見れば分かるよ?」
「え……」
「前にハル君家にお呼ばれした時、二人の様子がなんか違うなあって思ったから……視力7.0の目で観察してたんだ」
「……お前も琴姉と一緒に広大なサバンナへ帰れ」
「え、琴音先生と? なんでなんで?」
「いいからそこに食いつくな」
まぁ視力は風花の方が高いみたいだけど……ってそんなことはどうでもいい。
この二人に知られたってことは、つまり……調理部全員に知られたって思っていいんだよな……。
案の定すぐに広まり、皆がにやにやしつつ俺達を見てくる。
バスでもわざわざ隣の席に座らせられるという謎の気を遣われたりもした。
ただ、全員俺達の関係を笑顔で祝福してくれているらしい。
「なぁ、リン……なんでだろうか」
「え?」
「兄妹で付き合ってるのに皆祝福してるんだぞ?」
「それは多分……私が先輩達に相談してたからかな……?」
そんなことしてたのかお前。
「ホント、いい先輩達で良かったよ……親身になって相談に乗ってくれたし」
「へぇ……」
まぁ、リンは調理部全員に可愛がられている。
そんな彼女の恋の相談となれば力になりたいと思うのもおかしくはないが……やっぱり皆いい人達であることに変わりはない。
バスの中でわいわいと楽しんでいる先輩達を見て、そんなことを思うのであった。
バスが到着したのは山道のバス停。
そのバス停を目の前にして建っている建物は、俗に言う自然の家だ。
人柄の良さそうなおじさんとおばさんに、少し古いような建物の中に案内される。
部屋は二人一組、俺とペアなのはもちろんというかやっぱりというかリンであった。
そもそも他の部員と同室なんてまずありえないのだが。
「ハルハルー」
「誰がハルハルですか」
部屋の前にて、優希先輩がちょこちょこと寄ってきて俺に耳打ちをする。
「夜が勝負だね」
「ぶっ!!」
「あははっ、やっぱりハルってこういうとこ可愛いわ」
「そういうことを女性が言うのはどうかと思います……」
かなりおっさんっぽい一面を見せる優希先輩に、俺は呆れ混じりに苦言を呈した。
「ごめんごめん。じゃあ私は同室の風花を美味しくいただこうかな」
「先輩、山の自然に帰った方がいいです」
「なぬっ!? 私が猿だとでもいうのか!」
「今の先輩と風花を同室にしたら風花の貞操が危なすぎて」
割と冗談っぽくないので性質が悪い。
「風花風花ー」
「何ー?」
俺は手招きして風花を呼ぶ。
風花はとことこと寄ってくる。
「もし危なくなったら他の人の部屋に逃げるように」
「じゃあハル君達の部屋にでも行くよ」
「なんでだよ」
一番最初に消える選択肢だと思うのだが。
「だって他の先輩達に襲われないとも限らないし……」
「お前は先輩をなんだと思っているんだ……」
「それに、リンちゃんもいるんだしハル君の部屋が一番安心でしょ?」
「それはそうかもしれないけどさ」
「風花、ダメダメ。二人は夜が本番なんだから」
「え、本番って何がですか?」
「純粋な風花に何を吹き込んでるんですか先輩」
「そうか、じゃあやっぱり先輩が一肌脱いで教えるしかないか」
「あんたの場合本当に一肌脱ぐだろ!」
あまりにも暴走が酷い先輩に思わず大声でツッコんでしまう。
「なんだ、じゃあハル達に混ざらせるとか……」
「もっとダメだろ!」
マジでどこのエロゲだそれは。
優希先輩に振り回されながら、合宿一日目が始まった。
たまには自然の多い場所で料理をするのもいいかな、という考えの下この場所での合宿だとか。
ちなみに合宿の内容は、色々な料理をそれぞれ作って試食をし合うことらしい。もちろん朝昼夜の飯は自炊。午後や夜からは皆で遊んだりもするから楽しみにしてて(優希先輩の怪しい笑み)と言われたが不安で仕方がない。
俺とリン、風花の運命はどうなるのか……三日間も持つのかな。




