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僕らに吹く風に揺れる花  作者: ヨハン
兄を慕って想う少女
40/49

幸せ兄妹

ハルとリンのいちゃらぶ回。正直、R―18っぽい感じもしないではないですが大丈夫なはずです。

「じゃ、また明日」


「ばいばい、ふー姉」


「ばいばい、二人とも」


 俺とリンは家の前で風花と別れ玄関のドアを開けようとする。

 しかし開かない。鍵が掛かっていた。


「あれ?」


 俺は不思議に思いつつもカバンから予備の鍵を取り出す。

 鍵を開け、家に入る。


「母さんいないのかな?」


「なんでだろうね?」


 リンとそんな会話を交わし、リビングに入る。

 テーブルの上にはメモが置かれていた。


「メモ? なんだろ……」


 俺はそれを手に取り読み上げる。


「えっと……ハルとリンへ。お母さんは今日、お祖母ちゃんの家へ行ってきます。ちょっと具合が悪いみたいなので看病してくるね。琴ちゃんもお父さんもお仕事で職場に泊まるみたいなので、夕飯は二人分でオッケーよ。二人で仲良くね。お母さんより……だってさ」


「なんか寂しい夕食になりそうだね」


「だよなぁ……風花でも呼んでみるか?」


「ん、そうしよっか!」


 というわけで風花を夕食に誘う。

 すると、即答で


「行く!」


 だそうだ。

 二人分だと作り甲斐があんまりないから俺は歓迎する。

 リンも賑やかな方が好きらしく、風花が来ることを喜んでいた。

 俺はキッチンから、リビングにいる二人に尋ねる。


「とりあえず何食べたい?」


「ハル君が作るものは何でも美味しいから何でもいいよ」


 と風花。


「んー……じゃあちょっと今日は凝ってみるか」


「ハル兄、私も手伝おうか?」


「じゃあ頼む」


「ハル君、私も手伝う」


「風花は客だから待っとけばいいよ」


「え、そう……?」


 というわけで、俺とリンがキッチンに立ち風花はリビングで待っててもらう。

 リンは調理部に入ってから料理が上達し、一緒に料理が出来るようになった。好きな人と一緒に料理が出来ることは俺にとっては大きな幸せだ。

 

「それにしても……」


「ん?」


「リンのエプロン姿、可愛いな」


「なっ……」


 もちろん冗談じゃない。

 母さんなどがいつも使うエプロンと違い、今のリンが着けているエプロンはちょっと可愛いデザインのものだ。

 それがリンにはよく似合っていると思った。


「やめてよ……ふー姉だっているのに……もー」


 顔を真っ赤にして俯いてしまうリンの頭をぽんぽんと撫でる。

 その様子を風花はジト目で見ていた。


「じー……」


「ん? どうした?」


「ハル君とリンちゃん、新婚さんみたいだね」


「は!?」


「何言ってんのふー姉!!」


 俺とリンがほぼ同時に言った。

 リンは顔が真っ赤なままだったし、きっと俺も顔を真っ赤にしてたと思う。

 風花は時々とんでもないことを言うって分かってたはずなのに……やっぱりこういうことは言われると物凄く恥ずかしい。

 その後、三人で夕食を食べたのだが俺はリンと目が合わせられなかった。……はぁ。







 時刻が十時を回ったところで風花が家に帰った。

 正直、家にいてもらった方が気まずくないからいいんだけど、これ以上長居するわけにもいかないらしい。

 俺は自分の部屋のベッドの上に寝転がっていた。

 リンと夫婦か。

 それが可能ならどれだけ楽しい未来になるんだろうか。

 きっとリンなら可愛い奥さんになるだろうし、子供が出来たとしてその子供も可愛いのだろう。

 俺はリンとずっと一緒にいると決めた、その思いに揺るぎはない。

 その決断はリンの未来をも巻き込むことであるということは分かっている。

 リンも俺と一緒にいることを望んだ。

 しかし、それが正しいことと言い切れるのだろうか。

 

「分かんねぇ……」


 ただ、リンの幸せが俺の幸せ。そう信じている限りは――リンと一緒にいるべきだよな。





 どれだけ時間が経ったのだろう。

 体を起こす。


「きゃっ」


 暗い部屋で重い瞼をこする。

 今のはリンの声だ。少しして目が慣れてきて、リンが俺のベッドの上に座っていることが分かる。


「リン、何してんだ?」


「ハル兄がお風呂に入らないままいつの間にか寝てたみたいだから……起こしに来たの」


「そっか。てか今何時だ?」


「一時くらいかな?」


「ん……じゃあ風呂行ってくる」


 俺がベッドから降りようとすると、リンが背中に抱きついてくる。


「リン……?」


「ハル兄の馬鹿……」


「え?」


「ふー姉が帰った後、二人きりで過ごせると思ったのに……」


 リンの言葉に少しドキッとする。

 ……そんなリンの気持ちを考えたら寝ちゃうのはまずかったかな、と反省する。


「ごめんな、リン」


 俺は後ろに向き直ってリンの華奢な体をそっと抱き寄せる。

 こうしてみると、線の細さがよく分かる。


「ん……明日はお休みだよね?」


「そうだな……」


「じゃあ、今日はちょっと夜更かししても大丈夫かな……?」


「……うん」


 リンが上目遣いで見つめてくる。

 彼女からはいい匂いがしてきて、それが心臓の鼓動を更に早める。もうリンは風呂に入ったようだ。


「……なぁ、リン。お前は将来、子供を育てたりしたいと思わなかったのか?」


「え?」


「……俺とずっと一緒にいるってことは、つまりそういうことなんだぞ……?」


「……」


 リンは黙り込み、俺の胸に顔を埋めてくる。


「リン……?」


「昔はね……お母さんみたいな母親になりたいって思ってた。今も正直……お母さんみたいに、子供をしっかり愛せる人には憧れるよ?」


「そっか……」


「でも……ハル兄以外の男の人を好きになることはないから……」


 リンの声はとても優しかった。

 その言葉を聞いた時、安心出来た気がした。


「それに、そんなハル兄と両思いなんだよ? こんな幸せは他にないよ……」


 リンは心底嬉しそうな声でそう言った後、俺の首に腕を回してきた。

 そんなリンを抱きしめる力を少し強める。


「……俺も……幸せだ」


「ハル兄……」


 暗闇の中、俺達は見つめ合う。顔の距離が近づき……どちらからともなく唇を重ねる。


「ん……ちゅ……んっ、ちゅ……ふぁ……」


 触れるだけのキスを何度も繰り返す。

 リンの唇は暖かくて柔らかい。

 

「んぅ……ハル兄……」


「俺はリンのことが好きだ……どうしようもないくらい」


「……私もハル兄のことが好き……ずっと前からずっと好き……」


「リン……」


 リンの艶っぽい声と瞳を見つめていたらこちらまでおかしくなりそうだった。

 

「んむっ……」


 俺はほとんどぶつけるようにして、リンに口づけた。

 柔らかなリンの唇の感触を感じた後、わずかに空いた唇の隙間に舌を差し入れる。


「んっ!?」


 リンの体がびくんと跳ねる。


「んんっ……はむっ……ハル……兄ぃ……っ」


 リンは恥ずかしそうに身をよじるが、拒もうとはしなかった。

 舌先をゆっくりと動かし、リンの口内を舌でなぞる。

 

「んむっ……はぁっ、ちゅっ……はん……ちゅ、んう……」


 リンも舌を動かし始め、俺の口内に舌が入ってくる。

 舌が絡み合い、お互いを貪り合う。こぼれる唾液をちゅっと音を立てて吸う。

 離れたくない、そう思った。

 リンとこうしてお互いを求め合っていたい、熱くてとろけてしまいそうなこの感覚をずっと味わっていたい。


「んんっ……お兄……ちゃん……ちゅっ……んむ」


 リンは懐かしい呼び方で俺を呼ぶ。

 唇を合わせ、舌を絡ませお互いに強く抱きしめ合う。こうしてみるとリンの体はとても柔らかく感じる。

 

「んっ……お兄ちゃん……」


 リンがとろんとした目で見つめてくる。

 とても綺麗で整った顔、リンが美少女であることを再確認する。


「私……知ってるよ……?」


「え?」


「恋人同士が……すること……」


「……」


「……前にお兄ちゃんがやってたゲームで……こんな場面あったよね……」


「リン……」


 ここまで言われれば、分からざるを得ない。

 でも……リンの体は震えている。きっと怖がっているのだろう。


「リン……無理しなくていいんだぞ……これからだって時間はいっぱいあるんだ……」


「私……ここまでだけなんて嫌……これで終わっちゃ嫌だから……」


 リンは胸に顔を埋めてそう言ってきた。

 

「本当に……大丈夫なのか……」

 

 俺はリンに確かめる。

 これが最後だ。ここでリンが拒まないならば、俺は止まれなくなる。


「うん、大丈夫……だから……お願い……お兄ちゃんで……私を満たして」


 リンはそう言って、俺を抱きしめる力を弱める。

 そんな彼女を優しくベッドに寝かせ、見つめ合う。

 少しでも彼女を安心させたい……俺はそっとリンの頬に手を触れる。


「んっ……ハル兄、もっと……触れていいんだよ」


 早くしてほしい、そんな目で見つめられた俺はおもむろにリンの服に手をかけた。


「好きだぞ……リン」






 二人並んで手をつなぎながらベッドに横になり、天井を見る。

 気分は最高だった。

 この手をつないだ先にはリンが、一番愛しい人がいるのだから。


「リン、大丈夫か?」


「ん……なんか変な感じ……」


 俺はリンの方を向いて尋ねる。

 リンはむずむずと体をくねらせる。

 

「ごめん、ちょっと無理させすぎたかな……」


「ううん、謝らないで。私も望んでたことだから……」


 リンがこちらを向く。

 その笑顔には心が洗われる気がした。彼女の瞳は綺麗で、しっかりとこちらを見つめている。その瞳の奥にあるのは……幸せだろうか。


「まぁ……まさかハル兄とこんなことをするなんて思ってなかったけどね……」


「俺も……あんなにちっちゃくて、いつも後ろを追いかけてきたリンと……こんな関係になるなんて思ってなかった」


「後悔してる?」


「まさか。そんなわけないだろ?」


 俺はリンに笑いかける。


「俺はリンのことが好きだから……今は幸せかな」


「ハル兄……ふふっ」


 リンが嬉しそうに体を寄せてくる。

 あぁ、もう可愛すぎるぞ。


「でも、ハル兄……ハル兄って意外とえっちだよね」


「え……そ、そうか?」


 うん、否定はしない。

 エロゲと呼ばれる類のゲームもいくつかやってるしこういうことに興味がなかったわけではない……俺だって男子だもん。


「ハル兄があんなことまでするからいっぱい声出しちゃったんだよ……二人きりだったから良かったけど……てか、もっかいお風呂入らなきゃ」


 その言葉で思い出す。俺はまだ風呂に入ってなかったんだ。


「一緒に入るか?」


「…………………………えっち」


 リンがジト目で見つめてくる。

 これはかなり警戒されてるんではないだろうか。


「……ハル兄とお風呂に入ったら体洗うどころじゃなさそうだもん」


「……」


「あ、目逸らした」


 正直かなり心を読まれていた。

 うーん……なんかリンが急に大人になった気がするぞ。


「まぁいいや……私が背中流してあげるよ、ハル兄」


「お、おう……」


 というわけで俺とリンは風呂に入る。


 それから数十分後、俺とリンは風呂を出る。


「…………えっち」


 風呂上りのリンは膨れっ面のままだった。

 

「……ごめん」


「私のかっこよくて優しいハル兄はどこに行ったんだろ……」


「それならここに」


「ここにいるのは若さに溢れたけだものなハル兄です」


 きっぱり断言されてしまった。

 俺はリビングへ戻ると冷蔵庫からコーヒー牛乳のパックを取り出し、二つのグラスに注ぐ。片方をリンに渡す。


「ほら」


「ありがと……んくっ、んくっ……ぷはぁ、美味しい!」


 リンはいい飲みっぷりを見せる。

 飲み干した後、彼女の顔から笑顔がはじけた。


「んぐ……ふぅ、そういえば……もうすぐ三時だな」


「え、もうそんな時間なの?」


「もう十分に遅い時間だけど、早く寝ないと成長しないぞ。リン」


「こらそこ胸を見て言わない」


 どうやらばれていたらしい。


「何のことかな?」


「うー……」


 俺がすっとぼけると、リンは小動物が威嚇するような視線を向けてくる。


「……」


「……」


 それから、少しの沈黙が流れて……。


「ぷっ……はははっ」


「っ……あははっ」


 俺とリンは笑い合う。ただ、何かがおかしくて笑ってしまう。

 そんな馬鹿な会話をしているだけでも十分に楽しくて幸せだった。


「じゃ、一緒に寝よっか。ハル兄」


「こんなにくそ暑いのにか?」


「むー……じゃあいいもんっ」


 リンはむくれてリビングを出る。 

 俺は苦笑しつつ、リビングの電気を消してから出る。

 階段下にいたリンの頭に手を置く。


「ま、久しぶりに一緒に寝るか。ほら、こい」


「えへへ、うんっ」


 俺達は部屋へ行き、二人でベッドに横になる。


「ふぅ……なんかすっげぇ眠い……」


「ハル兄は張り切りすぎたんだよ……もう……」


 リンは苦笑して俺の頭を撫でた。


「お、リンにこういうことされるのは新鮮かも」


「えぇ、そうかな? でも、やっぱ撫でられる方が好きかな」


「じゃあ撫でてやる」


 そう言ってリンの頭を撫でる。

 リンはくすぐったそうにしながらも笑顔を向けてきた。


「じゃ、そろそろ寝よ。おやすみ、ハル兄」


 ちょん、と俺の唇にキスをしてリンは目を閉じた。

 こうしてリンと一緒に寝るのは中学の時以来かな。

 あの時は今とはまた別の気持ちでいたと思う。

 それでも唯一変わらないこと……それは。

 やっぱり、リンは俺にとって可愛い妹だ。

 そんなリンの寝顔にぼそっと呟く。

 

「……おやすみ、リン」

誰か壁殴り代行を呼んで来い

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