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僕らに吹く風に揺れる花  作者: ヨハン
兄を慕って想う少女
33/49

学園生活二年目の春

というわけで新ルート。舞台は一年後から始まります。

 季節は巡り、春風が桜の花びらを散らす季節になった。

 今年は天鳴学園の学園生活二年目。

 俺と風花、久代や清川、野上に氷室は相変わらずといった感じだ。変わったことを挙げるとすれば、六人がお互いに名前で呼び合うようになったことだろうか。

 まぁ、毎日楽しく過ごせている。

 琴姉はそんな俺達を恨めしそうに見て、自分の青春を思い出しては憂いに浸るようになった。……どんだけ灰色の学園生活を送ったんだあなたは。

 そして、去年受験生だったリンも今年から高校生。なんとなく予想はしていたけど、リンも天鳴学園に来るらしい。

 今日は始業式、朝食などを終えた俺は制服を着てカバンを持ち自分の部屋を出る。

 そして、隣にあるリンの部屋の前に立つ。


「リン、そろそろ行かないと」


「あー……えっと……」


 部屋の中からやけにしどろもどろな声が聞こえてくる。


「リン、入るぞー?」


「え!? あっ!!」


 部屋の隅に置かれた姿見の前に、制服姿のリンがいた。

 そういえばリンが天鳴の制服を着てる姿を見るのは初めてだな。


「どうしたんだ?」


「えっと……その……ブレザーって初めてだから似合ってるかどうか不安で……どうかな?」


 上目遣い気味に尋ねてくるリン。

 俺とリンが通っていた中学は男子が学ランで女子がセーラー服だったな、確か。

 まぁ、似合っているかどうかと聞かれると……正直凄く似合ってる。

 元々リンは幼さが残る端整な顔立ちと肩よりちょっと上くらいまでの可愛らしい髪型で、世間一般で言う美少女の部類に入るだろうし。(ちなみにそんな妹がいることを中学三年生の時の友達に妬まれたことがあった、妹くれと言われたが絶対あげないって返したら壁殴ってたなあいつ。)

 

「似合ってるぞ」


「ほ、本当に?」


 リンは露骨に嬉しそうな顔をする。

 まぁ似合ってることは事実だし。


「ハルー、リンー、風花ちゃんが待ってるわよー」


 下の階から聞こえた母さんの声に、俺とリンは急いで支度を終わらせ家を出た。





 

「リンちゃん、制服すっごい似合ってるねぇ」


「ふふっ、ありがと。ふー姉」


 登校中、風花にも制服姿を褒められ、上機嫌な様子のリンだった。


「あー、リンちゃん可愛いなぁもうぅぅ」


「んっ、ふー姉ー、苦しいよー」


 むぎゅっという擬音語が聞こえそうな抱擁を風花が繰り出す。

 リンもまんざらではなさそうだ。

 なんか……美少女二人の戯れって見てると癒される気がする。


「ねぇハル君。リンちゃんちょうだい!」


「やらん」


「えー、こんなに可愛い子がハル君の妹だったら色々と大変なことになっちゃうよー。ハル君のゲームみたいに」


「……お前は一体何を想像しているんだ」


「……言っていいの?」


「いや、ダメ。リンには刺激が強すぎる」


「…………」


「そしてリンはなんで頬を染める」


 俺は今年もツッコミ役に回るのか。

 三人でそんな会話をしながら登校し、学園の校門前に着く。

 新入生らしき生徒もちらほらと。

 そんな中、こちらへ向かって走ってくる少女が一人。


「三人ともおっはよー! うわ、リンちゃん制服可愛い!! ハルっち! リンちゃんくれ!!」


「やらん」


 風花と同じことをいっぺんに抜かす結。

 俺は即答する。


「結ちゃんおはよー、朝から元気で何より」


「えっと……結姉、久しぶり」


「おおぅ……こんな美少女二人と一緒に毎日登下校出来るハルっち。もしかしたらそのうち命が危ないんじゃないか?」


「かもなぁ……」


 結構冗談にならなさそうで怖い。

 それに、結も十分人気の高い女子だからなぁ……美少女三人を侍らせる男子生徒、完全に殺意と嫉妬と憎悪の対象じゃないか……。


「お前達は相変わらず騒がしいな。……ん?」


「皆久しぶりー! ……ん?」


 そこへ現れたのは沙夜と陽菜。二人とも、リンを見て黙り込む。


「……春斗は美少女をどれだけ侍らせる気なんだ?」


「春斗君。こんなに可愛い子をどこで引っ掛けてきたの?」


「引っ掛けてきたとか人聞きの悪いこと言うなよ! 妹だよ!」


「なっ……妹……!? 春斗とは似ても似つかないじゃないか……」


「またまたー、冗談が上手だねー」


 沙夜と陽菜は驚いたよう言うが、きっと全く信じていないと思う。


「あ、あの……」


 と、その時リンが遠慮がちに声を出す。


「正真正銘、私は日高春斗の妹です……」


「……遺伝子とは何か、一度調べてみたくなってきたな」


「……一体何が起きたのか私も気になるよ」


 そこまで言うかお前ら……そりゃ似てないのは当たり前なんだけどさ。


「とりあえず、皆。妹の凛子のこともよろしく」


「あ、あぁ。分かった……」


「よろしくねー、凛子ちゃん」


「よろしくお願いします。えっと……」


「氷室沙夜だ」


「清川陽菜だよー」


「沙夜先輩に、陽菜先輩ですね。よろしくお願いします!」


 リンは笑顔を見せてぺこりと頭を下げる。

 沙夜と陽菜はそれぞれ、少し戸惑うような反応を見せた。


「これが後輩か……うん……悪くないな」


「春斗君、この子ちょうだい」


「やらねーよ」


 お前まで言うか陽菜。

 でもまぁ、陽菜も沙夜もリンのことは気に入ったみたいだし、良しとしよう。


「美少女に囲まれてると、いずれ刺されちゃうよ。春斗」


「誠也、朝から物騒なこと言うなよ……」


 いつものメンバーの最後の一人、誠也も合流する。


「この子は?」


 誠也はリンを見て俺に尋ねる。


「妹だよ」


「へー、春斗の妹か」


「……」


 リンは無言で頭を下げる。


「よろしく、僕は野上誠也っていうんだ」


「日高凛子です。よろしくお願いします」


「凛子ちゃんか、よろしく」


 まぁこれで一通り顔合わせは済んだかな。


「ねぇ皆、いつまでもここにいると遅れちゃうよ、二年生組は早く教室に行った方がいいんじゃないかな。確か全員一緒だよね?」


「そうだったな」


 俺達は偶然か必然か、全員が同じクラスになっていた。

 多分何かしらあったのだろうけど、詳しくは知らない。


「あ、でも春斗は凛子ちゃんを教室まで送ってあげたらいいんじゃないかな。よく分からないだろうし」


「それもそうだな、じゃあまた後で。リン、行くぞ」


「え、あ、うん」


 俺はリンと一緒に皆とは別の方向へ歩き出す。

 歩いている途中、俺はリンに尋ねた。


「あいつらとは仲良くやれそうか?」


「うん。皆いい人そうだし……てか、お兄って凄く美人で可愛い人がいっぱい友達にいるんだね」


「どんな縁があるんだろうな」


 正直、時々自分でもよく分からない。


「……誰が本命なのかな……」


「ん? 何か言ったか?」


「いや、なんでもないよ」


 リンはそう言ってすたすたと歩く。

 

「やっぱ廊下、人でいっぱいだな」


 中央廊下は多くの生徒で埋め尽くされていて通りにくそうだった。


「お兄とはぐれちゃいそうだね」


 んー、それも困るな。

 リン達の教室はこの先にあるし。


「リン、ちゃんと手握ってろよ」


「あっ!? お、お兄~……」


 俺はリンの手を握り人混みの合間を歩く。

 まぁこれなら大丈夫だろ。

 

「……リン、どうしたんだ?」


 俺の少し後ろを歩くリンに尋ねる。

 

「ん……ちょっと懐かしいなーって」


「……そうだな」


 昔はこうやって手繋いで、色んな所連れ回したっけ。

 風花も含めた三人で遊んだ日々が懐かしく感じられる。

 あんなに小さかったリンも今では高校生、ちょっと感慨深くなる。


「お前も成長したよな」


「そうかな?」


「昔はあんなに俺にべったりくっついてくる子だったのに」


「あははっ」


 俺が笑いかけるとリンも昔を思い出させるように無邪気な笑顔を見せた。その笑顔は純粋に、可愛いと思えるもので、兄からしても魅力的だと思えた。

 

「でもね、お兄……」


 リンは呟くように言う。


「……今でもべったりだよ」


というわけでこれから新ルート、日高凛子をよろしくお願いします

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