友人とか新学期とか
幼馴染の親友という名の友人
新学期になり、俺達はめでたく高校生となった。
高校生活最初のクラス発表、俺は昇降口近くの掲示板の前にいた。隣には風花もいる。
俺達が通うことにしたのは私立天鳴学園。自由な校風と自身の学力に合ったレベル、まぁその他にも色々と理由はあるがそんな感じでこの学校を選んだ。
他の生徒達は同じクラスになった者同士で喜んでいたり、離れて残念そうにしていたりしているようだた。まぁよくある新学期の風景が目に映る。
「あ、あった。えっと、1-Aか」
「私も1-Aだったよ。また一緒だねー」
俺は自分の名前を探し、自分のクラスを確かめる。そして声に出すと風花も後に続いた。
長年一緒の幼馴染とは、高校でも縁が途切れることは無いようだ。
「よっ、二人とも」
後ろから声を掛けられる。元気そうな女子の声だった。なんとなく、思い当たる奴が一人いる。
俺と風花は振り返った。そこには見慣れた顔がいた。
「二人はまた一緒なのなー、ははっ」
陽気に笑ってみせたのは中学時代からの友人であり、風花の親友である久代結だ。
裏表の無い性格で誰とでも仲良く出来るらしい(風花談)。
中学の頃は毎日のように彼女から話しかけてきて、いつの間にか風花を含めた三人で行動するようになっていた。
ちなみに彼女は全国でも有名な陸上の選手で、陸上の強豪高校からの引く手は数多だった。それらを蹴ってこの学校に来た理由は俺も風花もまだ知らない。今度聞いてみるか。
「おはよー、結ちゃん」
風花は屈託のない笑顔で久代に挨拶をする。
「おー、風花ー。相変わらず可愛い奴めー、うりうり」
「ちょっと、くすぐったいよー」
出会って早々無邪気にじゃれ合う二人。俺は周りの目が少し気になる。
顔だけで判断するなら、風花は可憐で清楚な美少女系で久代はボーイッシュで爽やかな美人系だ。それ故に視線の大半は男子によるものだった。
「じゃれ合うのはいいけどせめて場所考えろよな」
「なんだよー、新学期なんだからいいだろー? ハルっちは相変わらず乾いてるぞー、ぶーぶー」
唇を尖らせ文句を言う久代。
顔に似合わず子供っぽいというかなんというか。
「つか、お前は何組なんだよ?」
ブーイングが少し面倒なので話の流れを変える。
「ふっふっふ……私も1-Aなのだよっ!」
マジか。
高らかに宣言してみせる久代に対し俺はため息を吐く。
こりゃ疲れる一年になるな。
「なんだその嫌そうな顔はっ!?」
お、気づいた。
「だって……嫌だし」
「あっはっは、そうかそうか……ハルっちぃぃぃ!」
最後の方は小声だったがしっかりと聞こえてしまったようだ。久代は素早く俺の首に腕を回しヘッドロックをかけてくる。
腕に力が込められ容赦なく俺を締め上げる。
「ちょっ、ギブギブ……」
「だったら私と一緒で嬉しいって言え!」
「クシロトイッショデウレシイデス」
「棒読みじゃねぇかぁぁぁ!」
腕の力が更に強くなる。正直かなり苦しい。
「まぁまぁ、結ちゃんハル君。そこら辺で……ね?」
「うっ……まぁ仕方ないな、風花と私に感謝するんだなハルっち」
風花が助け舟を出してくれて、俺は解放される。
久代はビシッと人差し指を俺に差して言った。
「風花には感謝するけどお前にはしないって」
「なんだとっ!?」
また絡まれそうなので俺は軽く手を振って後退する。
「はいはい、嘘嘘。感謝してますよーっと」
「うぅ……なんか納得いかないけどこれ以上は迷惑だからな、このくらいで許してやる。じゃ、私は先に行くな」
軽く手を振って久代は先に教室へ向かった。
その後風花が声を掛けてきた。
「新学期早々楽しくなるね」
「……そうか?」
「中学の時も思ってたけどハル君って結ちゃんをよくからかうよね、マゾヒスト?」
「違う、断じて」
何を言ってるんだこいつは。まぁからかえば何かしらの反撃は受けるが。
「じゃあ……何?」
首を傾げる風花。
「んー……からかいやすいだけだよ、表情がころころ変わって面白いし」
「ふーん……」
「ま、悪く言えばバカってことだけど」
そう言った瞬間、背筋に冷たいものを感じる。まさかな。
「だーれーがー……バカだぁぁぁぁ!」
「わっ!? お前先に行ったんじゃ!?」
「うるさぁぁぁぁい!」
久代がこちらへ向かって走ってくる。さすが陸上の全国経験者。めちゃくちゃ速い。俺はその場から走って逃げ出す。捕まったら色々と大変そうだし。いや、逃げ切れるとも限らないけど。
騒がしい友人と一緒のクラスになった高校生活一年目。
俺は逃げながら楽しい一年が始まることを予感する。
「待ってよー、二人ともー」
そう言って追いかけてくる風花も心成しか楽しそうな顔をしていた。
「ハルっち! 今日こそは成敗してやる!」