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僕らに吹く風に揺れる花  作者: ヨハン
ツンとしてデレる少女
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朝香と夕

三話目になりましたが、話の主な流れがちゃんと伝わるか心配です

 驚いた。まさか姉さんに権利も心も支配されなかったなんて。

 俺は先ほど廊下で最愛の妹と歩いていた男子生徒のことを考えていた。

 どこか気弱そうにも見えたけど、彼はきっと強い心を持ってるように思えた。だから姉さんの脅しにも動じなかったのだろう。

 沙夜と関わる男子をこんなに気に入るなんて生まれて初めてだ。

 彼のためにも、沙夜のためにも何とかして姉さんを説得しなきゃな。

 放課後、俺は昇降口で姉さんを見つけ話しかける。


「あら、夕。どうしたのよ」


「姉さんと話したいことがあってさ」


 姉さんの後ろには男子生徒が数十人くらいの集団を作っている。

 この人も相変わらず女王様だなぁ。

 まぁ俺もあんまり人のこと言えないかもしれないけど。


「じゃ、さっさと帰るわよ。話は帰りながら聞いてあげるわ」


「そりゃどーも」


 姉さんはいつも上から目線だから、下手に反抗せず受け流すのが一番いい。


「で、話って何よ」


「沙夜のこと、かな」


「アンタも相変わらず気持ち悪いぐらいのシスコンね」


「別に、沙夜は可愛い妹ってだけだよ。そんで本題。どうして沙夜に自由な学園生活を送らせようとしないんだ?」


「あたしがあの学園の男子共を支配するのに、あの子が邪魔だからよ」


 姉さんらしい自分勝手な理由。 

 普段なら「あぁ、そう」で済むのかもしれない。でも、今日はそれじゃ駄目だ。


「まず、支配する必要性を聞きたいよ。姉さんが昔から目立ちたがり屋で理不尽な性格なのは知ってるけどさ」


「アンタ喧嘩売ってる? 別にあたしは支配して何かしようとしてるわけじゃないわ。ただ、権力の強大さってのがどんだけ大事か世の中に知らしめたいのよ」


「だからって沙夜を巻き込まなくても……」


「あの子も私と同じように権力を振りかざすような子だったら何もしなかったわよ。でも、あの子は欲が無さ過ぎる。せっかくの権力だって使おうとしない。正直バカね」


「あのなぁ」


「ま、支配すんのも楽しいっちゃ楽しいけど。ホント、アンタ以外の男子は全員崇拝させたいわね」


「難しいだろ?」


 そう尋ねた途端、姉さんは不機嫌そうな顔をする。


「あたしに逆らう男子が一人、いたからね」


 明らかに怒気を含んだ口調。


「どうやら沙夜のクラスメイトらしいね」


「えぇ……あの男子、絶対崇拝させてやるわ」


 姉さんは謎の目標を立てたらしい。

 まずその性格を何とかすればいいと思う、と言いたかったが下手なことを言うと何をされるか分からないので言わない。


「とにかく、あたしは沙夜を抑制することを辞めないわよ」


「そこを何とか。沙夜だってきっと楽しい学園生活を送りたいはずだよ」


「学園生活なんてあの子にはあと二年あるじゃない。あたしが卒業してからでいいんじゃないの」


 姉さんにはどうやら、時間の大切さが分からないらしい。

 沙夜の一年を姉さんの勝手な横暴のために潰すなんてことは、あっちゃいけないと俺も思う。

 

「姉さん、時間の大切さが分からないのか。沙夜の一年を何だと思ってるんだよ。そんな勝手な理由で……」


 少し強い口調で言う。

 

「何よ……アンタが怒るなんて珍しいわね」


 姉さんが学校でまで沙夜に対して権力を行使しようとするとは正直思ってなかった。

 でも、行使されているのは事実でありそんな沙夜のために頑張ろうとしている少年もいた。

 いつもは姉さんの言うことを聞いて、姉さんの味方をしてきた俺だった。

 だけど今回は沙夜と春斗君の味方になりたいと思う。

 姉さんが何を考えて、何が目的であんなことをしてるのかはまだ正直理解出来ない。でも、あんなに勝手な理由で実の妹を困らせる姉の姿に腹が立っているのは事実だった。


「沙夜を自由に生活させてやってくれよ」


「嫌よ。あの子が他人と関わるようになったら、きっとあの子へ惚れる男子だっているんでしょうよ。もしそうなったらあたしへの完全崇拝が完全じゃなくなるじゃない」


「それが勝手だって言ってるんだよ……!」


 今回の姉さんはいつものように単純な我侭という感じではなさそうな気がする。

 なんていうか、少しずつ意地になってきてるというか。

 きっと今姉さんを止めなければ、姉さんは次第に権力を酷使するようになるだろう。


「そんなの知らないわよ……」


「姉さん!」

 

 俺は叫ぶ。

 すると、姉さんの驚いた表情が次第に怒りの表情へと変わってくる。


「あぁ! もう! うるさいのよ! アンタもあの男子も何であたしに逆らうのよ! 男子なんか皆あたしを崇拝してりゃいいのよ! 権力でも何でも使ってそうさせてやるんだから!」

 

「そんな勝手な理由がまかり通ると思ってるのかよ……!」


「私に逆らう奴は皆退学にしてやるわ! 夕、アンタもこれ以上反抗するなら容赦しない!」


「父さんがそんな勝手な理由を認めると思うのか?」


「認めるわ、あたしはこの家系で一番優遇されるべき人間なんだから!」


 姉さんは自暴自棄になりかけていた。

 同感出来る要素が何一つ見当たらないこの人とこれ以上会話するのは難しい。

 

「もういい……」


「……最初からそうやって大人しくしてりゃいいのよ」


 今の俺にさえも姉さんを止めることは出来なかった。

 となると、きっと姉さんを止められる人はいない。

 どうすればいいのか、俺には皆目見当もつかなかった。

 

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