壊れた時計
ダメ男に送るダメ男の話。こんな風になっちゃダメだよ☆
彼女に振られた。
アッサリと、キッパリと。もう
「ない」だってさ。
完全に終わっちゃったみたい。
「夢にさあ。出てくるんだよね、アイツ。」
俺は酒を飲みながら友達にグチる。
「ほんとに未練たらたらなんだよなぁ。だってさ、夢の中だとアイツ笑ってんだもん。別れる前みたいに。」
「てゆーか、まだ好きなんだろ。」
友達が言った。
「好きっつーか、未練なんだって。高校の時もそーだったし。前好きだったやつ。めっちゃ笑ってんの。あー!もう完全にとりつかれてるよ、これ。未練に。」
友達が少し笑ってから、何かを思い出したように言う。
「そーいや、達也にお前の夢のこと話したんだ。そしたら、あと半年は続く、だって。」
「マジでそれくらい出てきそう…。あー、もう俺を解放してくれよぉ。」
俺は机に突っ伏す。泣きたい。
「やっぱり、俺が駄目すぎたのが悪かったんかなぁ?」
俺はつぶやく。いつもの事。自暴自棄。
「そうだろ。お前キモイし。」
友達がズバリ言う。これもいつもの事。それでも、やっぱり傷つく。
「泣きてぇ…。」
言葉に出してそう言うと、友達は笑った。
「お前が連絡とらなすぎたのが悪いんだろ。」
友達が言った。あながち間違いでもない。
「だって、信用してたし。」
「完全にお前の落ち度だから。」
そう言われて、更にへこむ。
やっぱり、俺が全部悪いのかなぁ。
「他に好きな人ができた」ってさ。俺がかまってやんなかったのが悪かったんだな。うー、めっちゃ後悔だわ。
「まあ、これでお前も飢えた狼の仲間だな。飲もう!!」
俺は飲めない酒の入ったグラスを持ち上げ、ちょこんとぶつけた後に、一口だけ口に含む。
そんで気持ち良くなる。
「女なんか、もう信じねぇ!!奴らは悪魔だ!!」
もうハイテンション。口から出まかせばかり出る。
「女なんて死んでしまえばいい!」
友達が割り込むように、こう言う。
「いや、死ななくていいから、俺んとこ来ればいい。」
「そうだ!俺んとこ来ればいい!」
テキトー、テキトー。世の中テキトーだろ。くそっ。
「女は最悪のタイミングで最悪の振り方を無意識のうちに心得てるんだよ、絶対!!そんで、自分だけキッパリ忘れて、そんで俺だけ未練残るんだよ、死ね!!」
「いや、死ななくていいから、俺んとこ来ればいい。」
「そうだ!俺んとこ来ればいい!」
そんなこんなで、世はふけていくよ。ループ・ザ・ループ。頭ん中もぐるぐる回る。俺、ほんとに酒弱いよなぁ。これじゃ、振られるわけだ…。
「そんじゃ、また夢に元カノが出て来たら電話するわ。」
俺が言うと、友達が口元だけ笑う。
「じゃ、明日もか。」
ふらつく足で、家路を目指す。途中で気持ち悪くなって、草むらにもどす。いーね、ここは。辺り一面草と木だらけだ。栄養、栄養。
頭痛ぇ。あー、もう。またぶり返してきちゃったよ。アイツの笑顔。昔のままの、うれしそうな笑顔。
「忘れられねーよ。」
俺はつぶやく。酒は一時の気休め。思い出は一生の宝…いや、呪縛だよね、これじゃあ。
なんでかなぁ。なんで俺、こんな駄目なんだろ…?
ふと、アイツの夢を思い出す。なんか知らんけど、俺はアイツに貢いでる。最低限の金は俺が持ったりもしたけど、貢いだ覚えは全くねーなー。「まさかね。」
ひょんと頭の中に入ってくる台詞。
「俺がアイツに貢いだのは、金じゃねーな。」
声に出して独白。周り、誰もいねーし。
「金じゃ無くて、貢いだものは愛です。アイツは1番大事なもん持ってっちゃった。」
その時、冷たい風が一筋吹いた。
「さむっ!」
俺は駆け足で道を急いだ。
誰にも言えんよ。恥ずかしすぎだろ。
でもね、本当なんだ。なんかね、胸にぽっかり穴が空いちゃったんだ。代わり探そうとしても、中々見つかんない。埋まんないよ、空白。そんな苦い青春。
「振られたつもりで生きていくには、駄目になりそうなくらい、悲しみが消えない。」
本当だよね、桑田さん。悲しすぎだわ。男でもメソメソしちゃいます。
もう、春なんだけどな。まだまだ寒い日は続くみたいだよ。
多分、あと半年くらい。