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キキとあほうとにゃ  作者: そよかぜ
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「リーリエちゃんっ」

 っと、ほうけている場合じゃない。トビに足を掴まれ、ぷらんぷらんともがく妖精を見るなり、少女は妖精に駆け寄って行った。

「この虫、猫耳のか?」

「リーリエは虫じゃないやい、妖精族のリーリエなの! それより離すのだっ」

「トビ、離してやれ」

「ん、わかった」

 返事をするなり、パッと手を離すトビ。おかげで妖精は地面に激突だ。

「い、痛い……」

 小さすぎる手で鼻をこりつつ、妖精は少女に顔を向ける。そして、「ミーニャあ!」などと甘々な気持ち悪い声をだして彼女に抱き着いた。

「よしよし、大丈夫かにゃ?」

 しゃがみこみ、優しく頭をなでる少女。俺はなでられている妖精をまじまじと見てしまう。

 大きさは小学生の低学年ほどであり、一見いっけんすると人間のようではあるが、背にはき通った四枚の小さな羽が付いている。

 髪の色は黄緑色きみどりいろっぽく、髪型はボリュームのある髪をサイドでまとめた、サイドポニーテールだ。

 顔は良く整っており、リンゴほっぺが特徴的とくちょうてきだ。

 美幼女? って部類に入るんだろうか。

 いかんな、これでは俺がロリコンみたいではないか。

「ミーニャ、今までどこに行ってた? ミーニャが居なくなってから、凄い大変だったのだ」

 あっと、会話の流れから話しが長くなる予感がする。

「大変だったって、街で何かあったのかにゃ?」

「うん。あのな、」

 さて、悪いがさえぎらせらせてもらうか。このまま置き去りにされて話しを進められると非常に困る。

「ああっと。悪いんだがな、ひとまず中に入らないか?」

「え、あ、はい。そうですにゃ」


 中に入った俺たちは少女にうながされるまま、手作り感たっぷりのちゃぶ台の前に座った。

 いま、少女は飲み物を入れてくれている。

「すっげ、RPGの民家みたいだ」

 辺りを見回しつつ、トビがそんなことをつぶやいた。

 トビの言う通りで、家の中は中世ヨーロッパのような雰囲気がただよっており、ほとんどの物が木で出来ていた。プラスチック製の物は一切なく、鉄製の物は調理器具といったごく一部にしか使われていない。

「ねえ、」

 部屋を見渡していたら、俺の隣りでちょこんと座っている妖精に話しかけられた。大きくつぶらな瞳がジッと見ている。

「なんだよ」

「ミーニャの友達か?」

「そんなところだ」

 俺の適当な返事を聞いた妖精は、何やら考え事をし、「ふーん」と言って正面を向いた。

「あの乱暴者もミーニャの友達か?」

 しばらくして、タンスを漁るトビを指差し、またもや話しかけてきた。

「ああ」

 まとめて訊けよ、めんどくさいな。

 と、飲み物を運ぼうとしていた少女がトビに気がつく。トビは綿めんで出来た簡素かんそな下着を手に、「あれ、パンツちっせえ」などとつぶやいている。

「あのな、リーリエも……」

 隣りでもごもごと言いよどんでいる妖精を無視し、俺は、真っ赤になった少女対トビのパンツ綱引きを見ていた。「何をしてるんですかにゃ、返してくださいにゃ!」むーむーと、必死になってトビから下着を取り返そうとしている少女。対するトビは、「なあパンツくれよこのパンツくれよ」と余裕よゆうの表情で最低なことを言っている。

 見ていて面白いので、しばらくそのままにしておくことにする。

「――だからな、リーリエともな、友達になってほしい」

 ふと、隣りから遠慮えんりょがちな声が耳に入ってきた。

 見ると、うつむき加減で妖精がいじいじと、ゆかにのの字を書いている。ずっと俺に話してかけていたみたいだが、俺が聞き取ったのは友達うんぬんのくだりだけだった。

 何を言ってたのだろうかと思い、妖精を見ていると、妖精がちらりと俺を盗み見た。そして。

「リーリエいい子だから、友達になるといいこといっぱいあるのにな……」

 またもや、ちらりと俺を盗み見る。

 そんなアピールいらないって。

「わかったから、ちらちらと見るな」

「友達になってくれるのか……?」

「ああ、なってやる」

「おおっ、リーリエはリーリエって言う!」

「ああそう。喜衛きえい々だ、呼ぶときはキキな」

「うんっ」

 にぱー、っと満面の笑みを見せるリーリエ。子供が苦手な俺には、どうにもやりずらい。

「あ、千切れた」

 パンツ綱引きに動きがあったようだ。

 トビのつぶやきに視線をそちらに戻すと、下着は見事に引きちぎれて二つになっていた。引き千切れたときの勢いだろう、少女は家具に頭をぶつけていた。なんとも間抜けなことだ。

「ということはアレだな。片方はオレがもらっていいってことだな」

 なぜ、そうなる。どんだけ下着が欲しいんだ。

「痛いにゃ……うう、ミーニャの下着が」

「大丈夫か、ミーニャ!」

 慌てて駆け寄るリーリエ、そして少女をかばうように前に出ると、精一杯の怖い顔をつくってトビを睨みつける。

「乱暴者めっ、ミーニャにあやまれ!」

「なんだ、やる気か虫娘?」

 トビの一言に、はうっ、と小さく悲鳴をあげるリーリエ。最初の勢いはどこぞへと消失だ。

「リーリエ、すごい強いから、やめておいたほうがいいと思うなあー……」

 視線は明後日の方へ向けつつ、そんなことをのたまうビクビク妖精のリーリエ。

「強いってどれくらいだ?」

 あほうがくいつく。

「ド、ドラゴンくらい……」

 基準がわからんっての。

「マジか、すげえな!」

 なぜだ、なぜ架空の存在を比較対象ひかくたいしょうにされて、すげえなんて言葉が出てくるんだ。お前がドラゴンの何を知っている。

「待てよ? お前を倒せばオレはドラゴンを倒したことになるんだよな……」

 いやいやいや、ならないって。

「そ、そうなる」

 いや、ならないって。自分から死亡フラグを建ててどうするよ、あほうが次に言いそうなことなど予想がつきそうなものだが。

「決めた。お前を倒し、オレは勇者になるっ」

 リーリエ=ドラゴン=悪の親玉、討伐とうばつ=勇者、どうやらトビの頭の中ではそう結びついたらしい。人類の理解を超えてやがる、長い付き合いの俺以外には想像もつかないだろう。予想のはるか彼方だ。

「ままままま待て」

 焦りまくるリーリエ。もう少しだけあほあほコントを見ていたい気もするが、これ以上トビをほおっておくと、リーリエがフルボッコにされるのでまくを下ろしてもらうことにする。

「楽しんでるところ悪いんだが、そろそろ話し合いをしたい」

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