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キキとあほうとにゃ  作者: そよかぜ
14/24

 食事を済ませた俺は、ミーニャとリーリエと街へとくり出した。

 今日は天気にもめぐまれ、オルベールの大通りには多くの市が立っていた。人でごった返すほど賑わってはいないが、それでも、街には活気があるように思える。

 オルタが領主に戻ったことで人々に活力が出たのかもしれないな。オルタ効果、恐るべし。

「キキさん、まずはどのお店にいきすかにゃ?」

「買い物はあと、さきにトビの居る医術院いじゅついんに行くって話しだったろ」

「そ、そうでしたにゃ」

 てへ、なんて自分の頭をこずくミーニャ。ぶち殺したくなったのはいうまでもない。


 医術院とやらは大通りの中央辺りに建っており、さして歩くこともなく着いた。

 今は医術院の前に居るのだが……

『オレを自由にしろぉぉ、改造する気かぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』

 あほうのわめき声が聞こえる、いったい、中では何が起こっているんだろうな。

「トビさん、ですよにゃ。この声?」

「トビが苦しんでおるぞ!」

 苦しんでるっていうか、楽しんでる気がする。

「あ、リーリエちゃん、待ってほしいにゃ!」

 リーリエを追いかて中へと入るミーニャ。あまり気は進まないが、俺も仕方なく二人を追うことにする。

 中では、それはそれは面白い光景が広がっていた。

「ああもう、こんな元気な怪我人は初めてだよ! そもそも、怪我人なのか!?」

「落ち着いてください先生っ! 間違いなく怪我人です!!」

「トビぃぃ!」

「リーリエ! 助けてくれ、このままだとオレはカッコイイ改造人間にされてしまう!!」

 かっこよくなるのならしてもらえよ。

「かいぞうにんげん?」

「ミーニャに聞かれても困るにゃ……」

「何をしてんだ、お前は。そういうプレイか?」

「ミーニャ、キキ! 助け」

「少し黙ってろ」

「はい」

 言われた通りにもくすトビ。おそらく、じっとしないからだと思うが、トビは何本ものくさりで診療台にしばりつけられていた。

「ああ良かった、君たちが来てくれて助かったよ。包帯を変えようとしたら、『改造する気か』ってわけの分からないことを言い出して暴れるから困っていたんだ」

 トビがわけの分からないことを言うのはいつものことなので、俺は驚きもしないし疑問にも思わない。むしろ、トビを押さえつけたおっさんに驚くよ。

「トビ、大人しく包帯を変えてもらえ」

「良かろう」

 何を偉そうに。最初からそうしとけよ。

「キキ、かいぞうにんげんってなんだ?」

 くいくいと服のすそを引っ張り、どうでもいいことを訊いてくるリーリエ。というか、そのまんまだから説明に困る。

「ああえと、あれだ、カッコイイ人間のことだ」

 説明が面倒なので適当に。

「なんと! カッコイイ人間のことか、ならばキキとトビはすでにかいぞう人間だなっ」

「トビはそうだな。俺は違うが」

 残念ながら、俺はトビのように整った顔はしておらず、ごくごく平凡へいぼんなルックスだ。生まれてこの方、彼女はおろか告白すらされたことがない。

 トビの場合はモテるのだが、いかんせん、性格を知ると女の子は霧散むさんするように離れていく。そのため、トビも年齢イコール彼女なしである。残念な男前だよ、本当に。

「キキさんはカッコイイですにゃ!」

 急に大声をあげたミーニャ。少し、驚いてしまった。

「……なんだ、いきなり」

「あ、いえ、あはは……冗談ですにゃ」

 顔を赤らめ、照れ笑いを浮かべながら、そんなことをいうミーニャ。

 というかだ、冗談ってひどくないか?

 カッコイイが冗談ということはだ、俺はカッコ良くないということになる。遠回りにけなされた気分だ、ちくしょうめ。

「よし、これで終わりだ」

「おう、ありがとな」

 包帯を変えるのが終わったらしい。

 トビは上着を着ている途中で、おっさんは包帯を箱になおしている。俺はそんなおっさんに話かける。

「トビの具合はどうなんだ?」

「傷は問題ないよ、完全にふさがっているからね。ただ、医術では失った血液までは再生できないから、自然に回復するまで激しい運動をひかえてほしい」

「前から疑問に思っていたんだが、医術ってのは魔法のことか?」

みょうなことを訊くだんね。ああいや、そういえば、君とトビ君は異世界から来たんだったね。もしかして、君たちの世界に魔術や魔法は存在しないのかい?」

「言葉は存在するが、実際に使える人はいない」

「それは不便ふべんな世の中だね。『医術』というのは、魔術や魔法でおこなう治療のことをいい、また、医術を行使できる術者のことを『医術師』と呼ぶんだ」

 医療の変わりに医術、医者の変わりに医術師、といったところか。

「世界が変われば色々と違ってくるものだな。説明、悪いな」

「礼にはおよばないさ。それよりもトビ君のことだが、後は自宅療養じたくりょうようで大丈夫だよ」

「わかった、このまま連れて帰る。治療代はいくらだ?」

「今回はタダでいいよ。僕は商人じゃないからね、街の英雄からお金を取るほど無粋ぶすいじゃあない」

 英雄うんぬんは横に置いておくとして。無駄にかっこいいな、このおっさん。医は仁術というが、まさしくこういうことだろう。

「それはありがたい」

「なに、気にしないでくれたまえ」

「キキ、これからどっか行くのか?」

 着替え終わったトビが、どこかへ行きたいと言わんばかりに口を開いた。縛られていた肌の部分が赤くなっている。

「ああ、買い物に行く。その後はきのう合った老人に会いにいく」

「おっけおっけ。買い物って何を買うんだ? エロゲか?」

「そんな物は買わん、そもそも売ってるとは思えん。おもに服だ」

「マジかよ、エロゲ買わないのか。どうかしてるぜ」

 どうかしてるのはお前の頭だ、桃色ブレインが。

「武器は?」

「武器か……」

「モンスター出るし、買っとこうぜ」

 そういえばそうだった、この世界は日本のように平和で安全という訳ではなかったな。使いこなせるかは別として、護身用ごしんように持っていたほうがいいかもしれない。

「そうだな、武器も買っておこう。そろそろ行くか、トビ」

「おう、オレはハンマーを買うぞ」

「ならなら、リーリエは弓がいいぞ」

「ミーニャは魔術補助の杖かにゃあ」

 いや、買うのは俺とトビの分なんだが……とは、盛り上がっているために言いずらい。

「じゃあおっさん、俺たちはそろそろ行く。世話になった、またな」

「ああ、またね」

 そうして、俺たちは医術院を後にした。

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