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農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


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第5話 跪く理由は、誰にも分からない

 ――膝を折った。


 それが何を意味するのか、

 その場にいた誰も、すぐには理解できなかった。


 白銀の巨体が、地に伏す。

 頭が下がり、角が石畳に触れる。


 ドラゴンが。

 人の前で。


「……は?」


 誰かの喉から、間の抜けた声が漏れた。


 冒険者の剣が、音を立てて落ちる。

 祈っていた老人が、言葉を失う。


 グラントは、口を開けたまま固まっていた。


 カイルは――動けなかった。


 恐怖が消えたわけじゃない。

 理解が、追いつかなかった。


「……え?」


 自分の前に、ドラゴンがいる。

 それは分かる。


 だが、そのドラゴンが、頭を下げている理由が、

 まったく分からない。


 竜は、低く息を吐いた。

 その呼気が、地面を撫でる。


「……久しいな」


 声が、直接、頭の内側に響いた。


 人の言葉ではない。

 だが、意味だけが、自然と理解できる。


「この香り……

 世界樹の、息吹」


 カイルは、反射的に籠を見た。

 そこには、今朝採った野菜があるだけだ。


「……野菜、だが」


 自分でも驚くほど、間の抜けた声だった。


 竜は、ゆっくりと顔を上げ、

 それでもなお、頭を低く保ったまま、続ける。


「この実を育てし者よ。

 我ら龍は、剣を向けぬ」


 その言葉が、落ちた瞬間。


 空気が、変わった。


 恐怖ではない。

 理解でもない。


 ただ、世界の前提が、静かに書き換えられた感覚。


 カイルは、言葉を探し、見つけられず、

 結局、いつもの調子で口を開いた。


「……余ってるが、持っていくか?」


 竜の眼が、わずかに見開かれた。


 そして――

 ほんの一瞬だけ、笑ったように見えた。

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