表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民の俺が育てた作物、なぜかドラゴンに跪かれて管理社会が崩れ始めました  作者: 森乃こもれび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/40

第3話 価値は、書類で決まる

 低い唸り声は、すぐに消えた。

 市場の人々も、気のせいだと自分に言い聞かせるように視線を戻す。


 だが、空気の重さだけは残っていた。


「……今の、聞こえたか?」


「風じゃないの?」


「いや……」


 ざわめきが戻りきらない中、グラントが再び足を止めた。

 今度は、わざとらしく溜息をついて。


「集まって何をしている。仕事の邪魔だ」


 人々が散り始める。

 それを確認してから、グラントは書類筒を軽く叩いた。


「いいか。価値ってのはな、

 前例と規格と、承認で決まる」


 カイルを見ずに言う。


「どんなに出来が良くても、

 記録にないものは“ない”のと同じだ」


「そういうものか」


「そういうものだ」


 断言だった。

 疑う余地を与えない言い切り。


 カイルは野菜を籠に戻しながら、少しだけ考えた。

 だが、結論は変わらない。


「俺には、これしかできない」


「だから農民なんだ」


 吐き捨てるように言って、グラントは背を向けた。


 その瞬間。


 空が、鳴った。


 雷ではない。

 もっと低く、もっと重い音。


 地面が、わずかに震える。


 誰かが悲鳴を上げ、

 誰かが荷を放り出し、

 誰かが祈るように空を見上げた。


「……来るぞ」


 冒険者の声が震える。


 影が、広場を覆った。

 雲ではない。翼だ。


 圧倒的な存在感が、空気を押し潰す。

 息が詰まり、膝が笑う。


 カイルは、その場から動けなかった。


 籠の中の野菜が、かすかに揺れる。

 その匂いが、なぜか一層濃くなった気がした。


「なんだ……これ」


 恐怖で、頭が真っ白になる。

 それでも、彼の脳裏に浮かんだのは――


 朝の畑。

 温い土。

 静かな呼吸。


 次の瞬間、巨大な影が、市場の上空に降り立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ