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第六話

次の日。

ユウは、いつものように教室の席についた。


「おはよー! また昨日もいなかったねー」

「サボってた?」

「まーた部活とかでしょ?」


クラスメイトたちの声が飛び交う。

ユウは曖昧に笑って、首をすくめた。


演じるのは、慣れている。

本音を出さなければ、波風も立たない。


でも今日は、違和感があった。

いつもと同じ言葉が、耳の奥に突き刺さる。


ナナミの問いが、頭の中に蘇る。

「“それだけ”で充分じゃない」


“ここでの俺は、誰とも問いを交わしてない”

そう気づいた瞬間、笑顔がぐらりと揺らぐ。


昼休み。

ユウはパンを持って屋上に向かう。

誰にもついて来られたくなかった。


扉を開けると、先に誰かがいた。

ナナミだった。


「え、なんでここに」

「人がいない場所が、私の優先事項」

「お互い様か」


ふたりは並んでベンチに座った。


「クラス、どう?」

ナナミが珍しく聞く。

ユウは、空を見ながら答える。


「全員、うまくやってる。誰ともケンカしてない」

「でも、何も起きてない」


「そう。何も起きてないのが、一番苦しい」


ナナミは頷いた。

「“正しい関係”だけでは、生きていけない」


「じゃあ、何がいると思う?」


ナナミは考えて、そして言った。


「ノイズ」


「ノイズ?」

「論理にも、言葉にも、感情にも。

雑音が混じるから、真ん中が見える」


ユウは黙ってパンをかじった。

その“よくわからない説明”が、

なぜか今日は、とても人間らしく思えた。


タイトル:それでも僕は、嫌われたくなかった

その週の金曜日。

ユウはいつものように教室で過ごしていた。

だが、些細なことで空気が変わる。


あるクラスメイトが、他の生徒に陰口を叩かれていた。

「○○って、ちょっと空気読めないよなー」

「うんうん、なんか無神経っぽいし」


ユウはその会話を聞いて、

いつも通り“流す”つもりだった。

でも、今日は違った。


「そういうの、直接言えば?」

思わず、声に出していた。


場が凍る。

誰かが苦笑して、

「え、ユウってそういうこと言うんだ」と軽く言う。


「…まあ、たしかにね。冗談だから」

「ユウって、いつも中立っぽいのに」


ユウは、そこでまた“笑顔”を作った。


「ごめん、なんかちょっと疲れてた」

「だよねー、びっくりしたー」


それで場は元に戻った。

でも、ユウの中では、何かが明確に壊れていた。


放課後。

ユウは部室に行かなかった。


自分が何をしたのか、何を壊したのか、

自分でもよくわからなかった。


その夜、ナナミからメッセージが届く。

──「来ない理由、観察対象として気になる」


それだけだった。

でもその文字列が、ユウには優しさに見えた。


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