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問いがある限り、ひとは一人になれない
季節は再び、春。
教室には新しい顔ぶれ。
部室には、誰もいない。
けれど、ユウはそこに戻ってきた。
手にノート、片手にコーヒー。
そして、スケッチブックの最後のページを開いた。
数日後。
研究所の片隅。
ナナミもまた、スケッチブックを開く。
それは、ユウが送ってくれたコピーだった。
最後のページに、一文だけ添えられていた。
『人はどうして一人では生きていけないのか?』
その問いの下に、こう綴られていた。
『たぶん、問いを抱えたままだと、
誰かと“考えたくなる”から。
それだけで、もう一人じゃない。』
ナナミは、スマホを開いて短く返した。
──「それ、あなたの仮説?」
──「うん」
──「じゃあ、私が検証を手伝う」
ユウは、スケッチブックの端にもうひとこと書き加える。
『終わらない問いが、終わらない関係をくれた』
ふたりは、遠く離れていても、
同じ問いに向かって、いまも歩いている。
“正しさ”ではなく、
“共に問い続けること”で、
それぞれが確かに「誰か」とつながっている。
だから、人はひとりでは生きていけない。
問いがある限り――誰かに会いたくなるから。




