問いは、届いていた
春。
ユウは新学期を迎えた。
変わらぬ教室。変わらぬ風景。
でもそこに、ナナミの姿はない。
昼休み、ユウは屋上で一人、風を浴びていた。
手に持つのは、一冊のノート。
あの日、最後にふたりで綴ったスケッチブックのコピー。
そこには空白のページが一枚あった。
ユウはゆっくりと、そこに書き足す。
『あなたがいない時間の中でも、僕は考えてる。』
一方そのころ。
ナナミは研究機関のラボの片隅で、静かに端末に向かっていた。
研究仲間は多く、環境は整っている。
でも、あの部室の空気はどこにもない。
ふと、ノートパソコンの脇に置いていた手帳を開く。
中には、ユウとの最後の展示で集めた問いが数枚挟まれていた。
そのひとつに、こう書かれていた。
「大切な人がいなくなっても、生きていけますか?」
ナナミは少しだけ目を細める。
そして、手帳の余白に書き込む。
『問い続ける限り、その人は“いない”とは言えない』
その夜。
ナナミは自室で、スマホを開く。
ユウからの新着メッセージがひとつ。
──「そっちは、どう? なんか面白い問いあった?」
ナナミは、静かに返信を打ち込む。
──「あった。“また話したいと思うのは、なぜ?”ってやつ」
──「それ、俺が今考えてたやつだ」
──「偶然だね」
──「いや、必然だろ」
画面越しでも、ふたりの会話は
“正解じゃなく、ただつながっていた”。




