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ここから、また問い直せばいい
それからの日々。
ナナミはできるだけ“いつも通り”を保とうとした。
スケッチブックに言葉を書き、
ユウの問いに返し、
ふたりで展示の反響をまとめながら笑う。
けれど、会話の端々に“終わり”の匂いがしみついていた。
ある放課後。
ユウは突然、机を叩くように立ち上がった。
「なあナナミ。
俺、ずっとお前に“選ばれたい”と思ってたけど――
今はちょっとだけ違うんだ」
ナナミは、驚いたように顔を上げた。
「今は、“一緒に決めたい”って思ってる」
「行くなら、行っていい」
「でも、その“決め方”だけは、お前一人にさせたくない」
ナナミは黙って、目を閉じた。
「選ばれ続けることに慣れすぎて、
“誰かと決める”ってことが、
こんなに難しいなんて、思ってなかった」
「でも…」
彼女は少しだけ笑った。
「たぶん、“難しい”って思えてる今の私のほうが、
前よりずっと人間らしい」
その日、ふたりは
スケッチブックの最後のページにこう書いた。
『まだ決めなくていい。
だから、問い続けよう。』
それは、別れを否定する言葉ではない。
未来を強制する言葉でもない。
ただ、“続きがあると信じている”という選択だった。




