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未来を決めるのは、誰でもない「自分」
数日後。
科学部の部室は静かだった。
ナナミは、これまでのような実験ノートではなく、
無地のスケッチブックに向かっていた。
ペンは進まない。けれど、ページを閉じることもない。
そこに、ユウが入ってきた。
「お。今日は何もしてないパターン?」
「そう。“考えてるふり”の時間」
ユウはナナミの隣に座り、スケッチブックをのぞき込んだ。
真っ白のページが、まるで“未決定の未来”みたいに広がっていた。
「なあナナミ。
“未来を決めるのは自分”って言うけどさ、
実際、誰かの一言で変わること、あると思う?」
ナナミは少しだけ考えて答える。
「ある。でも、それを“選んだ”のは結局、自分」
「なるほど。言い訳できないやつだな、それ」
「だから君も、選ぶべき」
ユウは、まっすぐに彼女を見る。
「俺さ、ずっと“誰かに必要とされたい”って思ってたけど、
最近、“自分から必要になりたい”って思い始めた」
「それって、進化?」
「いや、病気かも」
ふたりは、目を合わせて笑った。
その日の部室は、
これまでで一番、なにも起きなかった。
でもそれが、なにかの始まりのようにも感じられた。




