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理由のない選択で

夕方。

ユウは科学部の扉をノックせず、ゆっくりと開けた。


そこには、机の前でじっと座っているナナミがいた。

白衣を着ていない。

手元には、あの観察ノートもなかった。


ユウはそれに、すぐ気づいた。


「……今日、観察は?」

ナナミは、ユウの方をまっすぐに見た。


「やめた」

「なんで」

「わからない。でも、もうそれでいいと思った」


ユウは、少しだけ笑った。

「わからない、って言えるようになったんだな」

「君が、それを教えてくれた」


しばらく、沈黙が流れる。

けれどその沈黙は、もう気まずさではなかった。


ユウは鞄からノートを取り出して、ナナミの前に差し出す。


「これ、前に置いてったやつ。中、見た?」

「見た。…読んだ。…理解は、まだ途中」


「じゃあさ」

ユウは椅子を引き、ナナミの隣に座った。


「これから、話そうよ。

言葉で、間違えながらでいいから」


ナナミはほんの少しだけ、頬をゆるめた。


「そのほうが、観察より難しい」

「でも、記録より残るだろ?」

「……そうかもしれない」


ふたりは、何も言わずにノートを開いた。

でもそのページには、

これから“ふたりで書いていく”空白があった。


夕焼けが部屋を満たしていく中、

ユウは思っていた。


「答えを求めること」と「誰かと生きること」は、

たぶん、別のことなんだ――と。



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