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第6話イレギュラーな初任務2

 おれとスピネルがなぜサバイバル生活なんかを突然始めているのかといえば、それは不運な事故と言うしかあるまい。


 軍で支給される携行食などの必需品はどうに尽きていた。まして出発自体がほぼ手ぶらだったのだ。

 だから魚をとってこうして食しているわけだ。肉も脂も恋しいが、どういうわけかここら一帯には獣がいなかった。


 三日はこうして救援を待っている。

 その間の足の引っ張り合いといえば思い出すだけで腹の底が煮えたぎるようだ。


「なあ、こんな状況だ、SOSを書くぐらいいいだろ? どうせ誰がみるかもわからないんだし」とおれが提案すればスピネルはいう。

「それなら不要だな。だれもみなくていいならわざわざ書く必要性がない」と視線を合わせることも、意見をこすり合わせる様子もなく、却下だ。

「はぁ!? それは、おまえがじっとしてろっていうから!」

「当たり前だろ? ここはどこかもわからん場所だ。まして敵に発見されでもしたら命があるとは思えん」

「敵、つったってもう三日は人っ子一人みてないぞ?」

「そうだな」


 そうだな、じゃなくってよおおおお。


 ほんっっっとなんだよこいつ!!


 こういった有様ですぐダメ出しされるのだ。頭が少々キレるらしいこいつは想定される危機を先回りして回避しているようだ。だがしかし、それをおれにも強要してくるせいで満足な行動さえできない状況。そのわりに策があるのかとおもえば提案はおろか必要がないなら口もきかないのである。


 敵にみつかるのがオチだとやつはいうが、比喩だよな?


 沈黙がいい加減めんどくさいおれは、相手がこの膠着(こうちゃく)状態ごと敵の策だとでも信じているせいでろくに動けなかった。

 せいぜいが食料をとりに海に入るぐらいだ。

 そのわりにともに行動しているせいで、イライラとフラストレーションはたまる一方だった。


「探索にいきたい」と、らちがあかないおれは口から出た名案を力説しだす。

「なぜだ?」

「警戒するのはいい、でもこのままじゃ八方塞がりだろ!?」

「たしかに救援の気配もないな」

「それにここがどこかもわからないじゃないか」

「なるほどな」

(お? おお! 案外乗り気じゃん! これは)

「……わかった、索敵を許可する」


 まーだ敵の心配かよ。へえへえ、許可が下りただけましだと思いますかね。


   ◇◇◇


 わざわざ二人でいたのはまとまった方が連携もとれるというが……あしでまといがいてもしょうがないではないかとおれは思う。


「そうだ探索しよう!」という意見で固まったがやつはとくに動く気配がない。


 先を行くのはおればかりでスピネルのやつはその後ろを金魚のフンよろしく着いてくるだけだった。

 そんなスピネルに冷たい視線を送ってみるもあいつには効いているフシがない。なぜなら首をかしげるか、立ち止まったおれを足蹴にするかだからだ。ほんと~~に感謝の心ってのがねぇんだわ!

 おれだぞ、おれが、草をどけて歩きやすくしてるってのに、だれのおかげだと思ってんだ、くそ!



 浜辺にもどってくると外周を少しチェックし始めるスピネル。ようやくじぶんで動く気になったらしくあちこちを見て回っていた。

 なぜか磯の裏側までのぞいている。スピネルとの視点の違いに疑問を覚えるも、たいした収穫がないのはたしかだ。


 ここが島であるのは事実。しかし、離島というよりは孤島らしく、水平線以外ほかにめぼしいものはなかった。

 ああほんとなんもない島だな~~、平和だよ、ちくしょう。


 それでもおれが気を抜いていると注意が飛んでくる。砂浜に拾った枝で落書きしても、な。

 勝手には書かねえわとデカい声で反論すればその声に神経質な男は叱責する。偵察任務でもないのに隠密行動を強いられることに目くじらをたてんなよと舌打ちした。


 なにかを警戒しているようだが、しすぎではないとおれは思う。楽観的な性分ではあるがあいつのは異常だと思う。


 いちいちうるさいわ足手まといだわなスピネルをみて、注文の多いあいつはわがままなお嬢様だなと考えて、うっかり女装した気色悪い映像が思い浮かび慌てて振り払った。


「なにをしてる?」と目ざとく飛んでくるスピネルの声にべつにと返した。


 今度は浜に落ちている空き瓶を拾っては中を確かめているようだった。

 ほんと、なにがしたいのだ、あいつは。


「なあー! これが南国リゾートへのバカンスだったらどうするー?」

 くだらないとはじぶんでも思ったが適当な話題を振ってやるとスピネルは馬鹿らしいとばかりに鼻をひとつ鳴らして一蹴した。


「ほんとなんなんだよここー!」と、大絶叫してしまったおれは悪くないと思う。

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