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第4話憂鬱な指名2

「というわけでこちらは特別参謀部参謀長のスピネル。本日をもってお前の上官となった。なにもしなくていいから面倒事だけは起こしてくれるなよ」、それだけいうと男は書類を読み始めた。


 淡々と品の良い置き時計の針が時間を刻んでいるのを眺めることおよそ三分弱。


(え、おれの挨拶は? そーゆーのどうでもいい感じ? っていうかなにもするなって……)


「あの、おれはここでどうしたら……」と当然の疑問を口にした。


 スピネル参謀長は心底うっとうしいといった表情で答えてくださった。


「班の連中と馴れ合いでもしてたらいいんじゃないか」

(言うに事欠いて軍人が馴れ合いとか!! 仕事なめてんのか、こいつ!!)


 求められていないのはわかった。だがこのままではおれの腹の虫がおさまらない。


 だから――、こいつにおれの有用性ってやつを証明してやる。


「ダルクだ」、今度はおれが指を突きつけて宣言する。

「は?」

 相手は気の抜けた表情をさらした。

「おれの名前。将来、あんたをひざまずかせる男の名だよ」

「……そうか、ばかなのか」

「はああああ!?」


 よりにもよってこの軍人、おれをばかにしやがった!


「お前こそ私が何者なのか分かっているのか」


 妙なトーンで聞き返してくるからおれは多少考えてから答えた。


「ハッ! どこぞのお偉い士官様だろ? さんぼーだかなんだかしらんけどおれには関係ないね!」


 考えたがとくになにもでてこない。そりゃそうだ、ただすごい魔法が使える軍師様って以外、知らねぇんだから。

 とはいえ若干声が震えていたのは相手の地位に臆しただけだ。こいつ自身は怖くもなんとも……――なくねーな! あんな魔法使われた日にゃひとたまりもないわ!!


 おれの返答を聞いた男は静かに目を見開いた。窓から入る春風を感じる、異動初日の出来事だった。


「お前はへんなやつだな」





「そういえば、ここって全部で何人いるんだ?」

「五名だ」

「そんなに少ねぇの!? もしかして別の訓練場にいるとか?」

「いや、お前と私を含めて六名だ。戦場ではアルビオン班で通っている」

「それって軍隊のお偉いさんが戦場に連れていく編成じゃない……よな?」

「行くが?」


 いちいちこいつはおかしいと思う。

 この部署も、さすが特別(・・)なんて前置きが付くだけはある。じつは厄介払いするためのお飾り部署なのではないか。


「っていうかお前そもそも作戦とか立案できんの?」

「べつに。魔法を行使すれば片付くだろ」

 まあな! あんな威力のおかしいのをバカスカ撃たれちゃ敵兵もたまったもんじゃねーよ。

「ってそういうことじゃ……あー、もういいや」


 付き合うだけバカを見るのはこっちだと思って投げやりに会話を切った。

 どうもこの上司はあてにならん。

 不服だが、この男、スピネルの言ったことにも一理あるし。

 新しい部署に異動したのは事実、ということで他の面子を把握しておくことにした。


「元施設科だった者と軍医は共に記録室にいるはずだ。うちの通信係はこの時間なら談話室か、電話室か。あとは適当にサボっているものが一名だな」

「そういうのは知ってんだな」


 サボりが通用する部署なのにはがっかりだが、ほぼ全員の行動範囲が明らかになっているのはありがたかった。

 把握していることが意外だと、言外に伝えるとやつは行ってのけた。


「私は上につく者だからな」

「ふ~~ん。じゃ、行ってきます」


 軽い気持ちで挨拶したが、まさかスピネルが首をひねっていたとはおれは知る由もなかった。


「いってきます……?」

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